リブラリウスと趣味の記録

観劇とかパフォーマンスとかの鑑賞記録を淡々と。本務の仕事とか研究にご興味ある方は本家ブログまで( http://librarius.hatenablog.com/ )

【観劇ログ】劇団壱劇屋「独鬼〜hitorioni〜」(東京公演)

どうも。イマイです。

本日は,私が劇団名だけでオススメする劇団壱劇屋さんの三都市ツアー,東京公演を見届けに池袋はシアターグリーンBOX in BOX THEATERまでやってきました。

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壱劇屋さんといえば,TwitterのRT速度や親和性は業界随一という定評に加えて,昨年は5ヶ月連続Wordless×殺陣芝居を5作品上演,Corich舞台芸術アワードで2年連続1位を受賞と,年々通り名が増える劇団さんです。そして何よりも,今年10周年ということもあり,今乗りに乗っている関西の劇団さんです。

イチオシ劇団なので,1年前から分かっていた日程の間で何度も観に行こうと企画していたのですが,本日の初日と日曜日の2ステージしか行けず悲しみにくれています*1

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 さて,今回は2016年に【勝手に】秋の演劇まつりとして壱劇屋さんが上演した「独鬼~hitorioni~」の再演です。楽しみすぎて,仕事の休みをかいくぐって大阪のシアトリカル應典院まで観に行ったのも既に2年前です。

librarius-theater.hatenablog.com

浮かれているのが当時の記録からも伺えますが,もちろん今回の再演も,もちろん楽しみにしておりました。特に應典院では二面舞台になっていたところが今回は一面になっているところで,どう演出が変わってくるかも楽しみなポイントです。

1.開演前

BOX in BOX THEATERはロビーがちょっと小さめなこともあり,今回の受付時にはチケットを持っていないお客さんだけが最初に5階に上がり,チケットを引き換えて(もしくは当日券を購入したら),もう一度1階に降りて開場を待つという方式が採られていました。今回は指定席なので,慌てて早めに来なくても大丈夫なのはとても安心です。開場時間とともにエレベーターで5階へ。操作パネルの所にも「独鬼」のフライヤーが掲示されていました。

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5階に上がると,ロビーの左右に壱劇屋さんの幟が隙間なく掲示されています。

物販のラインナップはこちら。今回のツアー費用を補助するためのクラウドファンディングもまだまだ実施中です。

劇中に台詞の無い(=wordless)×殺陣芝居!劇団壱劇屋「独鬼」東名阪ツアー製作支援プロジェクト - クラウドファンディングのMotionGallery

f:id:librarius_I:20180712190341j:plainアイテムを色々買いそろえた後に,客席へ。

まず目を引くのは,舞台中央の大きな木。太い木の幹が舞台中央を占め,天井には枝に見立てた布が巻き付けられています。そして,開演前からスポットライトの模様が、木漏れ日のように舞台上を照らしています。想像をかき立てられる仕掛けがあちらこちらに用意されています。

前説では,劇団員の西分さんが登場。一通りの説明が終わった後,初日特有の緊張感に包まれながら,開演時間を待ちます。

では,ネタバレ防止の改行連打を致します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.あらすじ

物語のあらすじをCorichから引用します。

死なない鬼はずっと独りで生きていた。
何千年、何万年、途方もなく続く年月。

普通に生きることに憧れる鬼は、ある女の一生を隣で過ごすことになる。
途方もなく続くうちのたったの五十年。
五十年が終わるとき、鬼は何を想うのか。

そんな死なない鬼の終わらない一生のお話。

( http://stage.corich.jp/stage/90772 からの引用)

(物語の序盤あらすじを,初演時のブログから転載します)

物語の中心キャラクターは死なない鬼。何千年も何万年もただひとり,生き続ける孤独な存在です。表情は顔から失われてしまっていて,感情を表現することさえ忘れてしまうような長い時間をひとりで過ごしています。

人間達からはその不死ゆえに疎まれ,祠の中に閉じ込められるような扱いを受け,ただただ孤立しています。そんな中,祠にひとりの女性が訪れ,祠に手を合わせます。鬼は祠の中からただただ眺めるばかり。女と共に男がやがて訪れるようになり,ふたりは子どもを授かります。

しかし,野盗の集団が集落をおそい,赤ん坊を抱えながら女は祠の前まで逃げてきます。女は祠の扉を開け,赤ん坊を隠そうとします。女は祠の中で長い年月たたずんでいた鬼と出会うことになりますが,驚きもせず覚悟の表情で女は鬼に赤ん坊を託します。

結局,野盗の集団に夫婦は殺されてしまいます。鬼も野盗の集団に切りつけられますが,感情無く野盗の首をはね飛ばします。野盗が死ぬ間際に紐飾りを持って這いずり回ります。

この赤ん坊と鬼の出会いが物語の大きな柱を形作り,感情を表現することを鬼は少しずつ思い出して行くのです。たとえ心から笑えるようになるのが,赤ん坊が天寿を全うしてしまう時であっても。

3.感想

  • 静と動の切り替えが見事でした。あくまで私の印象ですが,序盤では結構贅沢な感じでたっぷり間が取られ,静かなシーンが続いている印象がありました。この静があるからこそ、殺陣のシーンの勢いが際だつと感じました。
  • 悲しいから涙を流すという表現では足りないと思うほど,終盤にかけて感情が強く揺さぶられて涙が溢れ出てくる作品です。時は無情なのです…。
  • 竹村さんは無双すぎるし,柏木さんは男装が吸い込まれそうな綺麗さで,こばーんさんの背中落ちは格好良いとか,思い出すだけでそれぞれのキャストさんの魅力が溢れ出てきます。個別コメントをつけないと,良かったように見えないかもですが,キャストさん全員がもう格好良いです。誰に転んでもおかしくないです。箱推しできる壱劇屋さんです。
  • あ、劇団員の特攻隊長こと山本貴大さんの舞台上でのお姿が久しぶりに拝見できて,しかも佇まいがどっしりしていて,私は涙がでそうです(錯乱中)。
  • シーンは初演に比べて再構成されているところがあり、女性を装ってだまして切りかかるシーンがカットされていました。ただその分初演に比べてシリアス度が上がっている感じもあり、より世界に入り込めた気がします。
  • 白く長い布を組み合わせて殺陣が行われるところ,布を振り回すあたりで、風が客席までやってきます。これだけでも舞台を見に行って良かったと思えるライブの良さがあります。どれだけ卓越した映像技術でもあの空気感の全てまでは表現できないかもしれないので,ぜひ現場で目撃してください。
  • 尊い」という表現は,気恥ずかしいこともあって,毎回使うのに躊躇する表現ですが,今回は遠慮なく使います。尊い、しんどい、無理の3点セットが惜しげもなく使える作品です。

私は観劇ブログを,記憶を記録に残したいと思って書いているところがあります。でも,壱劇屋さんの場合は,TwitterのRTを一つ一つ見ていくだけでどんな作品かハッキリ思い出すことができます。公式ではなく,お客さん同士のTweetで記録を繋いでいく,リツイートで流れてきた感想Tweetを見て,一緒にニヤニヤする。こんな観劇後の盛り上がり方ができる壱劇屋さんはやはり凄いと思います。

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もっともっと有名になって欲しいですし,まあとにかくつべこべ言わずに一回見てみてくださいお願いしますコノトオリ…とキャラが崩壊してまで,何か観劇後の熱を伝えたくてしょうがない公演です。ブログの文字数コンパクトですが,間違いなく観劇初心者にも超オススメできる演目です。

stage.corich.jp

*1:二回でもすでに多いというツッコミはお断りです。