【観劇ログ】劇団壱劇屋「心踏音-Shintouon-」
どうも。イマイです。
1.はじめに
劇団壱劇屋さんの5ヶ月連続公演「五彩の神楽」もいよいよ3ヶ月目に突入しました。10月なのに台風が週末に2つも直撃するという恐ろしい天気の中,無事本日10月30日は晴天となりまして,大阪はHEPホールまでまた今月もノコノコとやって参りました。本日は勤務先が奇跡的に月曜日休みだったので,楽日の2ステージにあわせて突撃しに参りました。
HEPホールの公演案内も5ヶ月連続公演だから当たり前なのですが,他の劇団さんの名前が全て入れ替わる中,毎月劇団壱劇屋の文字が躍っています。
考えてみれば凄いことなのだと,一観客ながらチャレンジングな企画であることを今さら実感している次第です。さて,新大阪から新横浜までの2時間14分で書き上げないといけないので,どんどん書き進めていきたいと思います。
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本公演ではたまたまHEP FIVEに遊びに来ていた外国人観光客*1のご夫妻が観に来たという逸話も残っております。個人的にはふらっときた外国人の方が楽しめるパフォーマンスって凄いことなのではないかと,一観客ながら(←しつこい),思わずガッツポーズしていました。
今日、たまたまHEP FIVEに遊びに来られていた外国人観光客のご夫婦が、#心踏音 を観劇してくださった。どうだったんだろう、ちゃんと伝わったんやろかと不安やったんですが、ロビーに出てくるなりニコニコ笑顔で投げキッスしてくれて、あー良かったー!ってなりました。ホッコリ。
— にしぶん (@bubububun) 2017年10月29日
ふと外国人のご夫妻は「遠征割」で入場されたのかなあ,その時の証拠書類はパスポートだったのかなとくだらないことを考えながら,開場を待っていました。
物販コーナーで先月予約したDVDを引き替え,缶バッチと台本を買い求めて,客席へ。開演前のPVは先月の賊義賊がもうスライドショーと動画の2つで登場していて,作業の素早さとクオリティの高さに唸っておりました。
こちらも恒例になりつつある開演前の座長大熊さんの前説。脚本も演出も出演もしていないというお約束のネタの後で,今月は「来月出演があるから,特茶で体脂肪を落としている」というネタを披露されていました。オチとしては,13時の回が特茶のイントネーションが違っていた,千穐楽は特茶の1日あたりのオススメ摂取量を遙かに超えていたと,微妙にオチを変えてきていてリピーターに優しい設定となっています。
千穐楽は避難の「おはし」で暴走しまくったせいか,開演前の挨拶が終わっていないのに冒頭PVがスタートするという事件も起きながらも,無事挨拶は終了。
「五彩の神楽」第3弾となる「心踏音」のPV映像がスタートし,いよいよ開演時間です。
2.あらすじ
物語のあらすじは下記の通りです。
これは“男”の物語
生まれたときから
男の世界に光はなかった耳は目になり
少し世界が明るくなった生まれたときから
女の世界に音はなかった足音は声になり
少し世界が輝いていった二人は出会う
世界は眩しく色付いていく闇は音もなく近づいてくる
これは“男女”の物語
光を奪われた男は復讐の修羅となる
( http://stage.corich.jp/stage/84081 からの引用 )
雑踏の喧噪の中,男が二人突然斬り合うところから始まります。なぜ二人は突然斬り合うのか,分からないまま斬り合いは続きます。切りつけた側の男は「盲人」。生まれたときから目が見えず,杖をつきながら生活しています。
「盲人」のそばにはいつも笑っている「笑人」がいます。「盲人」の周りにつきまとってくる「笑人」ですが,「盲人」の危機にはいつも手助けをしてくれます。ある日,「笑人」は外の世界を「盲人」に見せてやろうといつも座っていた土手から連れ出します。
街道を歩く二人。やがて「盲人」はある女にぶつかってしまい,二人とも倒れ込んでしまいます。女の名前は「フミ」。喉に刀傷を負い話すことができない女性です。目の見えないはずの男は「フミ」の方を見つめます。まるで昔から知っていたかのように,まるで目が見えて顔が分かっているかのように。
「フミ」にもう一度会おうと町の外れまでやってきた「盲人」と「笑人」。そこで「フミ」を襲う男達,そしてその男達を蹴散らす「岳人」率いる一団。「フミ」は「岳人」の娘でした。「岳人」に弟子入りを懇願し屋敷へと入れてもらった二人。「盲人」と「フミ」が仲よさそうにしているのを影から恨めしそうに見ている鈴を付けた「鈴人」。
幸せそうに見えるボーイミーツガールのストーリーは,この時から徐々に破綻の道を転がっているのでした…。
これ以降の詳細は観劇三昧での配信*2,もしくは後日販売予定のDVDでご覧下さいませ。
3.本作品の魅力
- 重低音と暗闇が心と体を抉ってくる作品でした。特に重低音はシャドウトラフィックで感じた強さを思い起こさせるほどの迫力。座席もビリビリ震える勢いです。
- 暗いからこそ,光で明るくなるシーンとのコントラストが出てきます。実際はストロボでも何でも無いのに,フラッシュの効果の中でキャストさんがコマ送りに見えるところもまた魅力です。おそらくは全てのキャストさんの殺陣のスピードが半端なく素早いこともそう錯覚させる材料だと思います。
- 悲しい哀れさに涙するとともに,それとともに迫り来る復讐の凄まじさや狂いの凄まじさに圧倒されていました。「盲人」が目を見開き,髪を震わせる恐ろしさは舞台だからこその迫力でした。
- クライマックスを「盲人」の男性の観点で観た一回目と違って,女性の観点で観た二回目。涙で前が見えなくなりました。エンディングは男性の願望なのか,いや全部受け止めた女性の包容なのかと考えています。
- 自分自身の初見と台本での解釈の違いは,前2作と比べて一番少なかったです。自分がこういう解釈になれてきたのかも知れませんが,おそらくストーリーラインは前2作に比べて一番追いやすいのではと感じました。
- 吉田青弘さんの後半部での目での演技は,心ここにあらずの「盲人」を強く印象づける迫力で,狂気めいたものさえ感じました。そして殺陣も的確にかつスピードが速く,こんなにカッコ良く哀愁漂う役は流石だと思います。ミジンコターボの時に何度か拝見している吉田さんの凄さを堪能させて頂きました。
- 坂口修一さんといえば,関西小劇場でのトップスターな方で(と私は勝手に思っています)立ち居振る舞いが洗練されていて,コメディも悪役も難なく演じてくださるスゴい方です。今回も顔の表情一つ一つが的確に感情を表現していて,スッと立っている感じだけで「岳人」の強さが分かるほどの存在感でした。
- 今中美里さんのクライマックスでの悲壮感は,2回目の観劇で涙腺を直撃して前が見えなくなる悲しさがありました。中盤のタップダンスも中盤のアクセントでありながら,きちんと終盤への布石となっていて,こちらもスゴい方だなあと見とれていた次第です。
- カーテンコールでご自身が仰っていましたが,丸山真輝さんの悪役は冷酷さが徹底していて,おどけた人間くささが出る役どころを多く拝見していた身としては,思わず憎たらしいと思うほどの悪がありました。こういう印象はUNKNOWN HOSPITALの医師役(あれは複数の役の1つですが)以来な気がしました。
さて,いよいよ次回11月は座長,大熊さんの登場です。そして関西小劇場ファンならば待望の赤星マサノリさんが登場です。個人的には赤星さんのチャンバラはピースピットのSMITHや悪辣の映像で何度も拝見していたので,目の前で見られるのが楽しみでなりません。
そうしている間に,心踏音終演のTweetが流れてきました。
劇団壱劇屋 五ヶ月連続企画
— 壱劇屋 (@ichigekiya) 2017年10月30日
『五彩の神楽』第三弾
「心踏音-Shintouon-」
4日間全8ステージが終了しました。
ご来場、並びに拡散へのご協力、本当にありがとうございました!
男女の物語。同時に、親子の物語で友情の物語でした。
何か心に残るものがあったなら嬉しいです! pic.twitter.com/9x4hF4V1xx
終演後の集合写真から伝わってくる一体感。このチームワークは来月どんな世界を見せてくれるのでしょうか。今から楽しみです。