【観劇ログ】HANA'S MELANCHOLY vol. 1『人魚の瞳、海の青』
どうも。イマイです。
観劇以外のライフイベントが多く押し寄せていて観劇がすっかりご無沙汰でしたが,このあと月末にかけて4作品観ることになっているらしく,我ながら飽きないなと改めて思います。
さて,本日はご出演の長井美紀子さんからお誘いを頂きまして,新宿眼科画廊までやって参りました。新宿駅のゴールデン街からもそう遠くない位置にあるこちらの劇場,今回は開演時間が20時と言うこともあって,遅い時間に伺ったのですが,既にたくさんの人で賑わっていました。
今回の作品は退館時間の都合もあるかと思うのですが,作品の雰囲気を大切にするために,終演後の役者さんとの面会もないという作品。どんな作品なのか楽しみです。
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1.開演前
受付開始時間になり,地下へ向かう階段を降り受付を済ませます。チケットとは別に当日パンフ(500円)を受付で販売して頂けたので,私のようにブログをあれこれ書く人にとってはありがたい受付システムでした。
新宿眼科画廊地下スペースの入り口ドアを入ってすぐのところで,靴を脱ぐようになっています。ビニール袋に入れて中に持ち込みます。
ゲネプロ時の写真が公開されていますが,本当にどこを観ても白の風景が広がっています。砂が敷き詰められた床に白い布。段違いの台が敷物の下から盛り上がっています。
《7/23(火)当日券情報》人魚の瞳、海の青
— HANA'S MELANCHOLY (@HanasMelancholy) July 23, 2019
本日は16:00と20:00の二回公演です。
マチネ(16:00)は残5席、ソワレ(20:00)は完売(キャンセル待ちのみ受け付け) です。
16:00の回の当日券ご希望の方は、開演45分前に劇場までお越しください。ご来場順にチケットを販売致します。 pic.twitter.com/KSTzMIs3v8
私が座った席はスペース奥から入り口を見渡せる席。右後ろの席は砂の上に丸椅子が置かれている状態になっていて,舞台と客席が一体となった状態になっていました。
それでは,ネタバレ防止の改行連打を致します。
2.物語の概要
当日販売されていたパンフレットには以下のようにあらすじが記載されています。
チズは幼少期の想い出が詰まった海へ幼い娘と共に帰ってくる。
波が浜辺を打った瞬間,子供時代の親友アサが現れ,2人は時を超え再会する。アサはチズの手を引き,《白い教室》へと誘う。それは2人が幼少期を過ごした忘れる事のできない場所。
《白い教室》には5人の少女が暮らしている。
外を想起させる空,光,時間など全てが遮断された清潔感のあるその空間では,毎朝規則正しく健康診断が行われている。少女達は白いスカートを身につける事が強要され,外へ出ることは許されていない。アンデルセン童話の『人魚姫』を読みながら,お姫様と同じように外の世界に想いを馳せる毎日を送っていた。
ある日,アサの白いスカートが真っ赤に染まり,先生の手によって教室の外へと強制連行される。初潮を迎えた少女達は《外》で過酷な運命と向き合わなくてはいけないのだった。
冒頭に現れる一組の親子,子どもが海岸のそばで遊んでいます。子どもが海へかけていこうとする中で,母は何かを思い出し,子どもに海へ行ってはいけないと制止します。母親の記憶はどんどんと混乱していき,昔の出来事がフラッシュバックしていきます。
白い壁に囲われた教室,閉鎖空間の生活がよみがえってきます。
アサ,ゾミ,キサキ,ユウヒの4人がいる教室の朝,大人の先生が現れ,点呼と報告と称されたイベントを行います。体温や,体調,眼底や喉の腫れなどを報告していき,そこへチズが遅れてきます。しかし大人の先生は感情的に対応するわけではなく,淡々と遅れてきた理由を尋ねるだけ。どこか奇妙なやりとりが続きます。
閉鎖された空間の中での楽しみは,絵本の読み聞かせ。人魚姫をお互いに読んで聞かせる中で,子ども達は外の世界へと思いを馳せていきます。子どもが持つ,言葉のやりとりが青く白い照明に照らされて,美しく存在しています。
チズはキズの思い出,アサはやがて来る初潮,ゾミは読字障害,キサキは足の障害への不安を抱え,ユウヒは一見すると不安を抱えていないようで将来への漠然とした不安を抱えています。
子どもたちの見た世界のみから物語が展開し,チズとキズが行ったかつての脱出劇,最後のページが切り取られた人魚姫の物語などが挿入される中で,物語はクライマックスへと向かっていきます。
脚本の一川華は,童話『人形劇』の世界観を交えながら,ナイジェリアで実際に起きた少女達の監禁事件に着想を得て,今作を書き上げました。
このようにパンフレットに示されている小さな閉鎖空間の物語が実際どうなったかは,実際の劇場で目撃して頂ければと思います。
3.感想
- ピュアで無垢な子ども達のやりとりから醸し出される透明感と,背景にあるだろう暗い,そして先の希望が見いだせない閉鎖空間の物語でした。Twitterのハッシュタグを辿っていくと「鬱くしい」という表現が目に止まりましたが,確かにそのような言葉がしっくりくる世界でした。久しぶりに重い作品に出会えたなと思っています。
- あくまでも子ども達の目で見えた範囲,聞こえた範囲でのやりとりだけが描かれることで,その残忍さが薄れるところもあれば,かえって強調されるところもあったように感じました。雰囲気とか空気がすごく大切にされていたように思います。
- 子ども役のキャストの皆さんがどれも純粋無垢でその透明感を強調していて、だからこそ終盤での叫びが一つ一つ刺さってきます。子どもの視点から見た世界が故に、教師は注意はすれども暴力は働かず、不気味さが際だっていました。
- お誘いいただいた長井さんは、台詞明瞭かつ、立ち居振る舞いも筋が通っていて、パンフレットの経歴を拝見してなるほどと合点が行った次第です。
いつも見ているエンタメ的な作品とはまた変わった作品で,いろいろ考えるきっかけのある作品を拝見させて頂きました。お誘い頂いた長井さんには感謝感謝です。