リブラリウスと趣味の記録

観劇とかパフォーマンスとかの鑑賞記録を淡々と。本務の仕事とか研究にご興味ある方は本家ブログまで( http://librarius.hatenablog.com/ )

【観劇ログ】エビスSTARバープロデュース公演Manager.06『蝶導夜、惜別離、嗜美酒』

どうも。イマイです。

年度末の目が回るような繁忙期なのですが,舞台は後からみようと思ってもその時にしかやっていないので,キッチリ時間を取って見ている次第です。

さて,本日は劇団フェリーちゃんのなにわえわみさんにお誘いいただきまして,東京恵比寿のエビスSTARバーまでやってきました。先日,劇団フェリーちゃんのイベントで一度来訪しているのですが,演劇作品をこの会場で拝見するのは初めてです。昼間っからバーでどんな演劇が行われるのか,その点も興味深いです。

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1.開演前

某筋から今回の作品は,昨年11月の疾駆猿さんの作品と関わりがあるとの話を伺っていたので,下記のTweetを眺めながら*1作品の世界を思い返していました。ハードボイルドな重い世界を頭に思い浮かべつつ,バーの入り口でジンジャエール(辛口)を頼んでいました。

会場のセッティングはバーカウンターとその前の中心部が,舞台エリアとして確保されていて,その両脇に平台で段を作ってイスが並べられているという設定です。まさにBARなので,お酒やサッポロビールのビールサーバーもそのまま置かれています。

舞台エリアには小さな机が一つあって,その周りに椅子が二つ置かれています。ただ特別に置かれていると言うよりは,BARのセッティングでそのまま置かれているという感じの自然な置き方でありました。

BARカウンターにはオーナーの星野さんが立ち,飲み物のやりとりなどを進めています。

では,ネタバレ防止のための改行連打です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.あらすじ&序盤

物語のあらすじは下記の通りです。

 恵比寿にある小さなバー。
そこは、店長が曜日ごと月ごとに変わっていくお店。
今回の店長は、自分の血縁関係から拘りをもって働く女性...。
不思議な因果に手繰り寄せられ、多くの縁が繋がっていく。
年度が替わる弥生の終わりに、黒き蝶が訪れしは、何かが起きる前兆の夜。

https://twitter.com/ebisustarbar_p/status/1089827341553983489 より引用)

開演のアナウンスが終わると,入り口のドアから広瀬星乃(池永里穂子さん)が登場,オーナー(星野良明さん)に時間だと告げます*2

すると,BARの照明が全て消え,カウンターには日曜日の一日店長である高良幸恵(桜井ゆるのさん)が登場します。幸恵と星乃とオーナー以外には客のいないBAR。誰か来ないかなとぼやいていると,某有名深夜ラジオ番組のテーマの鼻歌と共に,BARの常連である黒川陽二郎(黒坂カズシさん)が登場,カッコをさんざんつけつつ,カウンター席へ座ります。

しばらくの間,黒川の職業や副業のパチスロについて,幸恵との会話が交わされつつ,星乃が茶々を入れ,オーナーが寡黙に座っているというシーンが続きます。

物語が動いていくのがそこにかかってきた一本の電話。諏訪譲(古崎彩夏さん)からの電話を幸恵が取ります。オーナーへの電話だという話に,オーナーは一瞬,星乃に視線を移し,事務所で電話を取ると言ってその場を出て行きます。

その後も一日店長のシャッフル出勤の話などが黒川と幸恵の間で交わされ(これがまた実際の常連と店長の会話のようで,とても自然なのです),しばらくするとそこへ天議院見世子(工藤沙緒梨さん)が来訪します。月曜と水曜の常連である自称霊能力者の天議院と,黒川の間で会話が再び始まり,黒川が初対面の時に,天議院を一方的に怒鳴ったことをわびたりしつつ,BARの時間がゆっくりと流れていきます。

この後,天議院の助手の諏訪譲,一見の客である菱見凌一(佐藤信也さん)が続けて来訪し,日曜日の夜は更けていきます。そして場面は変わり水曜日のBARでは,水曜日の店長である石原聡美(塩原奈緒さん),水曜日の常連であるテレビ局のAD佐々元純子(大山カリブさん),そして一見の客広瀬牽輔(森勇介さん)が来訪し,演奏パフォーマンスを行いながら,ある夜の会話が続いていきます。

そして物語は再び日曜日へ・・・。ここまでに登場していない魂の循環を管理するシステムである虚亡(なにわえわみさん)はどう物語に絡んでくるのか・・・。その結末はぜひエビスSTARバーでご覧下さいませ。

3.感想

  • 物語の設定としては,確かに昨年11月の疾駆猿の公演と繋がっていて,見ていた人はラッキーと思うくらい,密接な関係にある物語でした。もちろん見ていなくても十分楽しめるのですが,観劇していた私としては結末を見てからガッツポーズしたくなるくらい,色々な伏線がガッチリハマって心地よかったです。
  • 観劇ブログを書くために台本をもう一度読み返していたのですが,BARの日常会話のシーンがこんなに長かったっけ?と思うほど,きちんと世界を構築するためのセリフが丁寧に紡ぎ上げられています。余りに丁寧に紡ぎ上げられているからか,途中からこの話は虚構なのか,それともリアルな話をなぞっているのか分からなくなりました。役者さんたちも,リアルに物語を歩んでいる人たちがそのままの役柄で舞台に出てきていますと言われてもおかしくないほど,世界に凄く溶け込んでいたのが印象的でした。
  • 特に幸恵がエビスSTARバーの設立経緯を語る下りは,その後に虚亡という明らかにファンタジーな存在が登場することが予期されているからかもしれないのですが,ファンタジーなのに,まるでリアルな歴史をそのままに語っているのではないかと錯覚するほどでした。そこまでのBARでの他愛もない会話のおかげで,遠い世界の物語ではなく,今目の前のBARで起きているある日の話であると,最後まで確信して見ることができました。
  • 劇場だと,もう目の前の舞台は非日常であることが決まっているからこそ,自分の中でも虚構と現実のラインを引いてしまいがちなのですが,手を伸ばせば役者さんに触れられるような距離で演じられているからなのか,たまたま訪れたBARで起きた現実であるかのような錯覚を覚えました。カフェ公演やBAR公演とかは余り見たことがないのですが,こういう魅力があるのだと初めて知った次第です。
  • だからこそ,終演後のバー営業時間帯に役者さんたちがホッとして素顔を見せているときに,あの全てがお話の世界のことだったと認識するまでに多少の時間が必要なくらいでした。いやあ,役者さんたちって凄いですよね・・・。
  • さて,お誘いいただいた,なにわえわみさんは相も変わらず人間離れしたキャラクターでして,終盤の美味しいところをかっさらう役どころなのですが,物語上セリフを噛むことが許されない,かつことごとく長台詞という,難しい役どころを見事に演じきられていました。終演後の即席コンサートは,いつもより心なしか演じきった安心感に包まれていたような気がしました。

 

丁寧に構築されたある日のBARの物語に,演劇を欲していた年度末の私は大変満たされて,帰り道を歩いていました。

とても見やすい時間かつ価格帯なので,年度末のお忙しい時期ですが,ご興味のある方はぜひ恵比寿へいかがでしょうか。

stage.corich.jp

*1:多忙中につき,観劇ログを省略してました。ゴメンナサイ・・・。

*2:ちなみに公演後に購入した台本では,オーナーの名前は煙木蒸となっていて,あくまでも別人であることが強調されています