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リブラリウスと趣味の記録

観劇とかパフォーマンスとかの鑑賞記録を淡々と。本務の仕事とか研究にご興味ある方は本家ブログまで( http://librarius.hatenablog.com/ )

【観劇ログ】劇団ショウダウン「ドラゴンカルト」大阪公演

どうも。イマイです。

私は大好きなものだと何度も見たくなる欲張りです。

さて本日は,劇団ショウダウンさんの「ドラゴンカルト」を目撃しようと大阪までやって参りました。今回の演目については,既に1月の東京公演を拝見しています。ならばそれで十分なのではという指摘もあるかと思います。

librarius-theater.hatenablog.com

でも私のイチオシの劇団さんですし,「ドラゴンカルト」はとても面白い作品です。1月の東京公演を見ているときから,大阪まで行けたら良いなあと思っていました。上演地の異なる同じ演目を追っかけるというのは,なかなかないことなのですが,たまたま公演期間と本務先の春休みがピッタリ当てはまったので,実現することが叶いました*1

会場は大阪市立芸術創造館。関西小劇場ではお馴染みの劇場ですが,未踏の地でした。劇場は3階部分にあります。1階部分がロビーで座れるようになっていて,開場前の時間を潰せるようになっている良い劇場さんです。

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(トップページからご覧頂いている方は「続きを読む」リンクをクリックしてください。)

既に東京公演を拝見しているので,あらすじなどはそちらをご参照ください。以下,大阪公演での差分をご紹介できればと思います。(もし東京公演でも同様であったならば,私がボッーとみていたのが悪いので,ご容赦頂ければ幸いです)なお,ネタバレを気にせずに書きたいので,ネタバレ防止のおまじないとして改行キーを連打します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

関西の劇団さんが関東へ作品を持ってきた際には,笑いの部分を削ることが多いように思います。今回の作品は関東から関西へ戻るので,笑いを盛り込んでくるのではと言う勝手な想像をしておりました。

勝手な想像は良い意味で裏切られました。もちろん笑いのポイントは少し増えてはいるのですが,それよりもシリアスなエピソードが増えていて,よりハードボイルドに,より重厚な物語になっていました。私は東京公演のキャストさんや演技も大好きなので,この用語はあまり使いたくないのですが,わかりやすく言うならば大阪公演はさながら重厚な刑事ドラマのディレクターズカット版を見ているような感覚に近かったです。

私が見た限り,ストーリー上の目立つ追加は2つありました。

  1. ブレインがドラゴンカルトの集団が殺人を犯す方法について解説しているシーンで,毒殺だけは行われていないのが何故なのかがわかりやすくなっていた。
    *毒殺することでかみ傷を付けた際に一緒に毒に侵される危険性が高まるという理由でした。セリフが追加されていてわかりやすくなっていたように思います。
  2. 鬼塚の登場シーンが後半追加された。
    香川県警の鬼塚は,東京公演では容疑者である西畑守の自殺を幇助しただけで後のシーンでは登場しませんでしたが,「汚名をそそぐ」という名目で大阪公演では後半,太秦署のメンバーに合流します。その上で,財前に対してゆさぶりをかけたり,報道ヘリを太秦署へ突入させる際の手助けやアジテーション演説を行ったりしていました。

ドラゴンカルトという集団の詳細が描かれる追加によって,物語の解像度が上がったように思います。

あと,照明もいくつかのシーンで変更されているように思いました。ここかな?と思うところとしては,2つあります。

  1. 開演前の雪が降っているように見える照明
  2. 志賀が太秦署で証言する際の照明

1は小さい点が舞台上に降り注ぐように見える照明で,開演前だけでなく本編でもあちこちに登場していました。勅使河原が「雪はもう降っています」という旨のセリフを言っていますが,東京ではこの照明はなかったのではないかと思いました。

2は勘違いだったら恥ずかしいだけなのですが,滋賀が太秦署に出頭して刑事達の前で証言するシーンです。確か東京公演では四角いスポットライトで限られた範囲が照らされていたように記憶していますが,大阪公演ではこの証言のシーンの最後だけに四角いスポットライトが登場し,後は全体が明るくなっていました。大阪公演の方が,志賀の証言の強調点がわかりやすくなっていたように思います。

それから個々の役者さんの演技プランもおそらくは多く変更されているように思いました。私が変わったかな?と思うポイントは次の通りです。

  1. 暁のラストシーン。大阪公演ではセリフは全く変わっていないはずですが,より仁科に寄り添って,銃で殺そうとしない仁科から離れる際にも離れがたいような印象の演技になっていました。おそらく東京公演はもっと仁科を上から見下ろす感じ*2だったと思いますし,もっとドライな感じだったかと思います。東京公演はもしかしたら仁科の見た幻影だったのではとも取れましたが,大阪公演ではあれは本当に仁科が目撃した実体としての暁だったとわかるものでした。
  2. 財前の人間像。東京公演では狂気が前面に出て向こうの世界に行ってしまった人間で,壊れた操り人形のような顔や首の動きが見られた財前でした。大阪公演では話し手の目を真っ直ぐにらみつけ,首の上下動も落ち着いた感じで,こちらは平静さを装う中に狂気が隠れている人間として描かれているように感じました。東京公演のクライマックスで正気に戻った財前が暁を守ろうとするところに悲哀を感じるのですが,大阪公演のクライマックスでは保たれようとしていた平静さが最後に破綻し,人間の弱さがむき出しになることでより悲哀さがましたように感じました。
  3. 縣のテンション。東京公演ではサイコパスとしての天真爛漫さが全体的に強調されていた感じでしたが,大阪公演では天真爛漫な明るいシーンと何か隠し事をしているかのような影が見えるシーンが両方用意されていてコントラストとなっていたように思います。
  4. 古都刑事のシャツ。細かくて申し訳ないのですが,古都刑事は東京では最初からコートを羽織って登場していたように思います。雪がちらついている気候で「寒い寒い」といっているのに,首回りのボタンを外したシャツ一枚では登場してこなかったと思います。客席ではあまり声が上がらなかったので,心の中で笑っていました。あと後半のシリアスなシーンで,マスクをアイマスクのように使って遊んでいるシーンもあったような…。反応はあまりなかったので寂しかったですが,しかと目撃させて頂きました。
  5. ショー・パウアーの水晶使い。本編は上手側の財前と勅使河原のやりとりなのですが,何故か目が離せないショー・パウアーの水晶使い。東京公演にはなかった飴の包み紙をひねるような動作や車のハンドルに見える動作が追加されていて,本編は音声だけで追っかけて目は水晶に釘付けでした(駄。

それからキャストさんの変更によって,印象が大きく変わったシーンが出てきます。ここは,東京公演で書いたブログを踏襲して大阪公演からのキャストさんの紹介を交えながら,変わったところを紹介していきたいと思います。

  1. 比良坂役の白石幸雄さん。私の中では「撃鉄の子守唄」のコナンドイルのイメージが強かったのですが,全く違う印象を持ちました。東京公演は泥臭く機器を駆使する比良坂だったのに対して,大阪公演はインテリで有能でスマートだけれど,どこかすっ飛んでいる比良坂に会うことができました。
  2. 千葉役の中川律さん。「パイドパイパー」「撃鉄の子守歌」と誠実な男性として脇を固めていた中川さんの今回の役は,東京公演では登場しなかった別所刑事らの補佐をする千葉という刑事役でした。補佐役なので,ストーリー上のセリフはそれほど多くはないのですが,縣と暁の捜索時に救急車を呼ぶあたりなどは誠実そうだからこその魅力があります。ただ個人的には本役ではない居酒屋の店長の魚裁きの方がお気に入りだったりしています(何
  3. 鬼塚役の浦田克昭さん。東京公演は冷酷さや冷徹さというキーワードが思い浮かぶ鬼塚でしたが,大阪公演は人情味に溢れていそうな人の良さそうな鬼塚でした。しかし,実際には報道ヘリコプターを落とす算段をがっちり建てて,財前を揺さぶっていた訳ですから,東京よりもかえって始末が悪そうな怖さが強調されていた気がします。
  4. 西畑守役の内田竜成さん。東京では伊藤匡太さんが本役とともに演じていた役です。セリフは一言も変わっていないのですが,東京公演の西畑がふてぶてしさが印象に残る感じだったのに対して,大阪では気の弱そうな一般市民が実は殺人犯という感じで,話し方一つで大きく印象が変わるのだなと思いました。
  5. ブレイン役の坂本彩純さん。東京では竹内敦子さんが本役と共に演じていた役です。東京では超一流のインテリが戯れでコメディエンヌを演じているような印象を持ったのに対して,大阪公演ではとことん突き詰める性格が故に誰も突っ込めなくて,正解も間違いもホームラン級で出てしまう科学者という印象を持ちました。登場シーンは少ないのですが爪痕はしっかり残していく役です。
  6. レポーター役の池辺光完さん。東京では星璃さんが演じていた役です。冒頭からまくし立てなければいけない役で,ハードルの高い難しい役だと思うのですが,冒頭そしてクライマックスの物語の勢いをつける所をキチッと繋げていらっしゃったように思います。
  7. 殺人依頼のメールを受け取る女役の中原こころさん。東京では林遊眠さんが演じていた役柄です。冒頭のあのシーンは善良そうな市民が実は殺人鬼という落差が必要な箇所だと思うのですが,バッチリとそのあたりを表現されていらっしゃいました。他にも居酒屋の店員役とか様々な場所で登場されておりますが,レポーター役のハキハキとした質問の様子が良いなーと思ってみていました。
  8. 刑事/市民/店員役の谷朋子さん。いわゆるモブ役なのですが,ちゃんと「トモちゃん」という役名もついていて,比良坂が脱線話を披露できなくて残念がっているときに声を合わせて残念がるところなどの見せ所があり,太秦署の一員として印象に残る演技をされています。個人的には居酒屋のシーンでショー・パウアーにサインをもらって喜んでいる所とかも印象に残っています*3

とまあ,こんな感じで世界を楽しんでおりました。どのシーンも目に見えた映像をそのままの鮮度で保存して,何度も見返したくなるくらい美しいです。1回始まったら引き込まれてしまう世界は流石だと思います。中の人でも何でもないのですが,終演後に客席の方が「面白かったー」「すごかったー」と口々に仰っているのを聞いて,なんだかとても嬉しくなってしまいました。

ますます劇団ショウダウンさんが好きになっている大阪遠征なのでありました。

stage.corich.jp

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*1:あとせっかく東京まで来てくださった劇団さんのチャレンジに少しでもお応えしたいなあと言う邪な考えもちょっとあったりします…。

*2:大阪公演の方が位置関係としては上から見ているのですが。

*3:インチキっぽく見えるけれどそこまであの世界では人気なのか…と驚いた次第です。