リブラリウスと趣味の記録

観劇とかパフォーマンスとかの鑑賞記録を淡々と。本務の仕事とか研究にご興味ある方は本家ブログまで( http://librarius.hatenablog.com/ )

【観劇ログ】劇団ショウダウン「ドラゴンカルト」

ども。イマイです。

心がざわついて眠れない夜は「黒船」や「パイドパイパー」のクライマックスシーンを子守唄にしたりして乗りきっています。色々なことがあっても,お芝居の予定があれば,何とかがんばれる日々です。今週末もお芝居三昧で幸せです。

1.はじめに

今日は私のイチオシの劇団さんである劇団ショウダウンさんの新作「ドラゴンカルト」を拝見しに,池袋はシアターグリーンにやって参りました。今回の劇場はシアターグリーンBox in Box Theater。シアターグリーンの3つの劇場の中でBOX in BOX Theaterだけは未踏だったのですが,何と劇団ショウダウンさんだけで3つの劇場を全て訪れることができました。劇団ショウダウンの関東公演の拠点といっても差し支えないのではと思います。

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(ということで,トップページからご覧の方は「続きを読む」をクリックしてください)

2.あらすじと注意点

なお,大阪公演がこれからありますので,大阪公演で見る予定の方はここから先は読まない方が良いです。激しくネタバレの予定です。ネタバレをみない方が絶対に良いです。初見の楽しみは取っておいた方が良いです。でも一言,2ステージ以上観に行く予定を立てて置いた方が絶対に良い舞台であることだけは,猛烈に主張させていただきます。

 今回の舞台は京都の太秦署。昨年SP水曜劇場で放映された「雪月花」の舞台も京都の太秦署。マナナン・マクリルの羅針盤から劇団ショウダウンさんを拝見していた観客としては,初めての現代劇です。

www.youtube.com

雪月花はUstream経由で見ても,何度も見たくなる痛快かつ軽妙なエンターテイメントで,この続編?と最初は考えていました。でも下記のあらすじをみると,どうも様子が違います。

というわけで,あらすじについて,Corichから一部引用します。

その日、日本はパニックに包まれた。

全国47都道府県で、
深夜の12時から未明にかけて、
47件の殺人事件が発生したのだ。

事件は全国に、

そして全世界に報道され、

警視庁の指揮の元、
全国の警察署に捜査本部が置かれる。

初動捜査の最中、
驚くべき検死結果が報告される。

47人の被害者、
立場も年齢も性別もバラバラ、
全く接点のない彼らは全て、
生きながら食い殺されたのだと。

初動捜査の遅れを嘲笑うかのように、
二日目、第二の殺人が起こる。

再び47人の被害者が加算され、
指揮を執る太秦書、別所拓実警視は対応に追われる。

警視庁は、
遅々として進まぬ捜査の助けとして、
FBIの現役プロファイラーを招聘することを決意した。

心理的、地理的プロファイルを駆使し、
事件の解決に当たるが、三度事件は起こる。

進まぬ捜査、増え続ける被害者に、
日本全土がパニックに陥る中、容疑者の一人が拘束される。

平凡に見えたその男は、
予め用意していた薬を飲み、自害する。

「ドラゴンカルト」という謎の言葉を残して。
http://stage.corich.jp/stage/78242 より一部引用 )

軽妙なアクション劇というよりもミステリー,サスペンスのカテゴリーに含まれるような内容です。劇団ショウダウンさんでミステリー?これだけでも興味が湧いてきます。

さて東京公演の千秋楽はもう明日なのですが,3月下旬に大阪公演が控えています。

多分そんな方は皆無だと思うのですが,大阪公演に向けてちょっと情報収集しようと思って,このブログをご覧になっている方,

この劇はネタバレ厳禁です。初見はネタを入れないでご覧になることを強く強ーく推奨します。

古きテキストサイトを彷彿される赤の巨大文字を使いたくなるほどの,注意事項を書いた上で,ネタバレ防止の改行を打ち込みます。何度も言います。2ステージ以上見る予定を空けておくべきです。そしてチケットを確保して当日を心待ちにいたしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.筋書に沿った感想

開場して客席に入ると,BGMはこれまでの劇団ショウダウンさんで良く聞いたバグパイプやファンタジー系の音色ではなく,洋楽のエレクトリックロックが流れています。この段階で,お,今回は何か毛色が違うぞと予感させる内容です。

開演時間きっかりにキンソンが音量を上げ,舞台が暗転し,明るくなったとき,舞台上は慌ただしく一つのクライマックスを迎えています。警察の包囲網,署に襲い来るであろう謎の敵,市民を避難させようとメガホンを持つ警官,それを取材しようとするテレビレポーター,刻一刻と何かの時が近づき,財前という人間が二人の警官に確保されます。時間切れだから語ろうではないかとの謎のセリフ,多くの?が飛び交う中,シーンは過去へと切り替わります。

そこはふれあい養護院という名前の養護施設。子ども達が赤い頭巾を被った女の子の周りを取り囲んでいます。女の子が持つのは一つのスケッチブック。そこにはどこかの地図がクレヨンで描かれています。それはどこの地図?—日本でもない,外国でもない,これから作る地図—何か謎かけのようなセリフが残り,仁科刑事のセリフと共に,より近い過去に舞台は移動します。

豪雪の町を行き交う人々。ひとりの女性が傘をさし,電話で話ながら登場します。電話口の先では誕生日のプレゼントを巡って,ちょっとした予定の行き違いが話されています。電話の最中,女性の端末にはメールが到着。仕事かもしれないからと,メールを確認するために女性は電話を切ります。その時,舞台上手から登場するパーカー姿の男性。夜道は危ないよと警告していますが,明らかに死亡フラグが立ちそうな警告です。案の定,男性は包丁を持ちだし,女性に斬りかかろうとしたその刹那,女性の鞄から刃物が取り出され,男性は返り討ちに。そして驚くこともなく,殺害現場を撮影する女性。青暗い照明の中,不気味さが舞台上に広がります。

それと同時に全国で多発する殺人事件。まさかの47都道府県で同時発生する殺人。容疑者が逮捕され,香川県での取調が始まります。全国の警察が固唾をのんで見守る中,突如容疑者は「ドラゴンカルト」の叫びを残し,服毒自殺します。「ドラゴンカルト」とは何なのか,そして事件の真犯人は誰なのか?多くの謎を引き連れながら,別所警視の指揮の下,仁科刑事,暁刑事のコンビ,そして生島,古都,大鳥,勅使河原,比良坂と言った人間くさい面々とともに物語は進んでいきます。

これまでの劇団ショウダウンさんでも,黒船に見られるような全体的に暗い照明はあったのですが,今回は全体が薄暗いという感じではありません。随所で四角形の大きなスポットライトで舞台上が照らされるのですが,明るいところと暗いところがハッキリ分かれていて,その違いが強調されています。

劇団ショウダウンさんといえば,くすぐりネタを割とふんだんに盛り込んで来るタイプの劇団さんだと(私は勝手に)思い込んでいました。もちろん,アーロン,ブレイン,ショー・パウアーの登場シーンを始め,笑いを取るシーンもあります。しかしながら,今回はシリアスなシーンが続き,張り詰め緊迫した空気がずっと舞台上を支配しています。

気がつくと,舞台にじっと見入っている自分がいました。最近観劇している舞台は,笑いをふんだんに盛り込み,シリアスシーンや見せ所との落差を際立たせる舞台が多かったので,張り詰めた空気のまま進行する物語はかえって新鮮な感じでした。登場人物や背景は異なりますが,ちょうど洋物の刑事ドラマ「刑事コジャック」のコジャック,クロッカー,スタブロスが展開する硬派刑事ドラマの質感を思わず連想していました。

ふれあい養護院の元従業員,峠下の証言のもと財前要一が容疑者として連行されます。天才と狂気が一人の人間の中に同居する参考人はほぼ口を割りません。そうする中,鑑識官の縣がテレビレポーターの松井に情報を漏洩していたことがわかります。しかしこの縣も暁刑事の捜査に同行した先の学校で,謎の失踪をしてしまいます。

一か八か,犯行グループのねらいを太秦署に絞らせる大ばくちを打った別所警視。太秦署に迫る危機,仲間の刑事達が次々と倒れていく中,裏切り者は誰か,ドラゴンカルトは誰なのか,少しずつ明かされていく謎,そしてデカ長の遺体安置所に訪れる謎の影…。

いやあ,まんまと騙されました。あの人がドラゴンカルトだなんて。元々推理ものの犯人を当てるのは下手だと自覚してますが,まさかまさか。

 

暁刑事が首謀者だったとは。

 

サイコパスという設定だからこそ,完全に擬態し証拠すら掴ませないのは当然なのですが,劇団ショウダウンさんといえば,看板女優の林遊眠さんはヒーロー,ヒロインの位置づけだと勝手に思い込んでいたからこそ,そして雪月花では主人公の刑事チームだったことからこそ,完全に味方側だと思ってました。見事に騙されました。

正体が明かされてからも,余裕綽々とカリスマとしてその場にいるものを圧倒する姿は,最初から全てを仕組んでいた黒幕,Twitterの感想でも拝見しましたが,納得のラスボスでありました。この衝撃だけは初見のまさに楽しみだといえましょう。

ここ最近のファンタジー路線の劇団ショウダウンさんだけを見てきた方は(私もですが)180度違う雰囲気に驚きます。その上で,演出家のナツメクニオさんとしては以前からやってきた方向性の一つだと伺い,劇団ショウダウンさんの引き出しはまだまだたくさんあるのだと気づかされました。

それと同時に,舞台の楽しみ方の多様性も再認識しました。舞台を拝見する際に,泣いたり笑ったりできるということは舞台の分かりやすい魅力だったりするわけですが,大号泣も大爆笑もないのに,じっくり作品世界に浸り,2時間15分楽しむことができたのです。

さて,初見以後は何ら楽しみはないのかといえば,そんなことは全くありません。むしろラスボスがどのように行動しているのか,それを古都を始め周りがどう怪しむのか,それ以外のキャラはどのように行動しているのか,一つ一つ確認する作業が待っています。例えば,暁刑事が「ドラゴンカルト」のフランス語で書かれたWebページを見つけるきっかけを作っているあたりは,初回は無邪気な行動をしたヒロインのほほえましいシーンに見えますが,2回目以降は用意周到でかつ無邪気に演じきる恐ろしいシーンに代わります。

確認する作業ということでは,この作品は本当に細かい所まで配慮がされているので,それを確認する作業も良いでしょう。

多くの方が登場する舞台というのは,どうしても出番の少ない方,見せ場の少ない方が出てしまい,キャスト紹介をしようと思っても,あれ?この方は何を演じてたのだっけと迷うことがあります。ところが,この作品は初見でも大半のキャストさんが印象に残る*1存在でした。ということで,キャストさんの全紹介に今回も挑みます。

4.キャストさん紹介

  1. 仁科済役の久保健太さん。ストーリーテラーかつ人狼のハンター役。過去の失われた記憶と闘いながら,赤ずきん(=暁詩織)を追い詰めていく物語の鍵を握る人物です。ナツメクニオさんの長台詞を明瞭に読み上げるだけでなく,過去と葛藤しながら戦う所,特にラストシーンで暁に銃を突きつけるときに,震えていた腕と手。運命に必死にあらがおうとするその姿はとても美しかったです。
  2. 暁役の林遊眠さん。劇団ショウダウンさんでは看板女優で,今回も陽気で積極的なヒロインキャラと思っていました。まさかの黒幕でしたけれど。でもサイコパスとして完璧に演じ分けているという設定があるからこそ,微塵もそんなそぶりは見せず,むしろ命の危険が生じるような車の襲撃事件を命じていくような存在。暁刑事はサイコパスの属性を持った「名役者」だったのかなと今では思います。
  3. 別所拓実役の佐々木穂香さん。警視として太秦署の命運を握る大切な役目です。署長として声を張り上げ続けなければならない大変な役どころですが,凜々しさと頼もしさにあふれる声や行動に満ちた迷いのない警視でした。あれほどの署長なら無茶振りでも署員は付いていくことでしょう。太秦署での全面戦争直前90度に頭を下げながら発したセリフは格好良すぎて,心が震えました。あと個人的には聞き込みのシーンのモブでギャルの演技をされていたときのギャップがすごく,演技で印象ってここまで変えられるのかと感嘆した次第です。
  4. 古都十三役の中路輝さん。一癖も二癖もある中堅のベネズエラ人と日本人のハーフの元刑事。かつて取調中に犯人を撲殺した正義感を飄々と隠しつつも,的確に物語の核心を突いていきます。中路さんは若き宰相,若き臆病なガンマンと若い真っ直ぐ目の役を続いて拝見してきたのですが,こうしたくせ者の役も拝見できて嬉しかったです。そして冒頭とクライマックスで二回繰り返される発泡許可をを別所に促すシーンでの,照明に写る横顔が何とも美しく,かつての古都が持っていた正義感を象徴しているように思いました。
  5. 生島浩二/西畑守役の伊藤匡太さん。機動隊でならしたけんかっ早さです。でも正義感にあふれ事件をいち早く解決しようとする所では曲がったところのない刑事です。初めて拝見する方なのですが,口の悪い関西弁の刑事が本当にその場にいるかのような馴染み方で,終盤財前を殴り倒す際の勢いは非常に迫力がありました。かと思うと西畑守のような殺人犯も演じ分けられていて,印象に残るキャストさんです。
  6. 大鳥役の稲森誠さん。関西弁バリバリの冗談を飛ばす鑑識親父ですが,太秦署のピンチには消火器を振り回しながら最前線に立つ切り込み隊長。参加していないって言ってたけど学生紛争に絶対参加してるに違いありません。この緊迫した物語では,安定感たっぷりに進行をするとともに,とぼけたセリフで一服の清涼剤を与えてくれる存在でした。古都とは名コンビだったんだろうなあ。
  7. 縣恵利香役の和中香穂さん。大鳥のところで下積み中の鑑識。でもFBIの鑑識セミナーにも参加しちゃう行動派。頭脳明晰でありながら天真爛漫なそぶりを見せていましたが,実際にはあの施設のサイコパスメンバーの一員だったわけで,その背景を知ってから見るとハキハキとした受け答えも何か寂しく見えてきます。松井に情報を流している際にはどう大鳥に気づかれないようにやっていたか,描かれていないところの想像をしたくなる役どころでした。
  8. 勅使河原役の中鶴間太陽さん。古都の過去を知る刑事長。とにかくスーツ姿での立ち姿がどこまでも格好良いです。勅使河原の初台詞は結構後のはずなのですが,場面場面で登場する度にイケメンっぷりが印象に残っています。黒船や撃鉄の子守唄とはまた異なるカッコ良さでした。抑えた声も魅力的。太秦署でも恋人にしたい署員No. 1に違いない(勝手な想像
  9. 比良坂役の佐竹仁さん。太秦署の情報収集能力では群を抜いた,ただし残念な名サーチャー。佐竹さんの確実な台詞回しに聞き惚れ,ここで何か差し込んでくるだろうというネタの期待も全て回収してくださるさすがの安定感。緊迫した物語の中の一服の清涼感を生んでいました。今回の舞台では撃鉄の子守唄以来の身のこなしがあちこちで拝見でき,モブキャラでもガンガン芝居をされているので,見逃す手はありません。東京公演限定出演なのがもったいないくらいの方です。
  10. 笹本/水川役の土井郁己さん。香川署では鬼塚の部下として,太秦署では自衛隊員として登場します,これ以外にも抗議で押し寄せる市民に追い詰められて発砲する気弱な刑事としても登場されています。特に気弱な刑事のシーンでは,それまでに見せない弱々しさを前面に出していらっしゃいました。それ以外の二つの役のギャップもあって,印象に残っています。
  11. 鬼塚役の筒井紘二さん。香川署の取調官でありながら西畑の自害を促した人物。香川署のシーンは短いシーンなのですが,このシーンあたりから緊迫した物語の歯車が回り出す,世界観構築のために欠かせないシーンでした。このシーンでの鬼塚の取り調べは緊迫感あふれるもので,映画のワンシーンでも見ているかのような錯覚に陥るほど引き込まれていました。
  12. 財前要一役の篠原涼さん。人狼教皇として「ドラゴンカルト」のゲームを操っていた人物。狂気に満ち壊れたからくり人形のような首や腕の動きは,壊れきった財前の人格を的確に表現していた怪演だったと思います。はめていた手錠が照明を反射してまぶしい人が出てくるのかなと心配していたら,ひとしきり振り回した後はきちんと手を組んで金属面が反射しないようにされていて(後で伺ったところちゃんと気をつけていらっしゃるようです),そうした気配りも拝見していて嬉しかったです。
  13. 松井信代/ブレイン役の竹内敦子さん。太秦署の前で取材にあたるテレビレポーター。三徹するくらいの根性とともに警察署内部からのリークメールをきちんと取材に活かす有能さ。松井のセリフはひたすら長台詞な上に,ゆっくり喋るわけにいかない役,さらにブレインというサブの役でも個性的な医学者という役があったため,竹内さんは舞台に出ずっぱりでおそらく全キャストの中でもセリフ量はトップクラスだったのではないでしょうか。カンペか何かをおもちなのかなーと松井の持っているバインダーを見たところ,紙は挟まっていましたが白紙でした。The勧進帳。さすがです。
  14. アーロン役の星璃さん。プロバイダーもとい,プロファイラーとして物語の謎を一つずつ解きほぐしていく探偵役。イケメンな役者さんだなーと思っていたら劇団Patchの方と聞いて納得。でもイケメンなだけではなくて,冷静に謎を解き明かしていくインテリの演技は世界に溶け込んでいました。もう1役のヘリコプターからレポートする報道記者の落差もまた面白く,また演技を拝見してみたい役者さんの一人です。
  15. ショー・パウワー役の和田雄太郎さん。たまたま日本に旅しに来た所を居合わせ物語を引っかき回す霊能力捜査官。物語の中ではコミカルな役どころではあるのですが,身のこなしがシュッとしている方でどんな方なのかなと思っていたら,ダンサー,振り付けをされている方と知って納得しました。財前の取調中のシーンでは,そちらに注目しては行けないと思いつつ,浮いているように見える水晶玉についつい目が行ってしまいます。モブのシーンでは髪を下ろして出てきているのですが,だいぶ印象が変わって見えました。
  16. 志賀龍彦役の金本英信さん。養護院の児童心理顧問。子どもたちを哀れむがあまり,歪んだ原体験を子どもたちに与えてしまった悲劇のきっかけ(でも張本人ではないのが悲しいところ)。この作品では何度か,本物の方がそのまま演じているのではないかと錯覚するシーンがあったのですが,この志賀の語りっぷりはまさに学者が語るときの立ち居振る舞いを連想させるものでした。あそこまで狂気ではありませんが,ああいう教育学者見たことが有るような気がします(本務のお仕事的に)。
  17. 峠下清子役の香月みゆきさん。ふれあい養護院の元従業員として,財前へつながる重要証言を太秦署にもたらした人物。あれほどゲームに参加しないと言っていたのに結局巻き込まれているあたりが運命の皮肉な感じがします。撃鉄の子守唄以来の二度目です。アーロンとの交互の掛け合いで財前の居所を証言するシーンは,この掛け合いで舞台のリズムが変化することもあって,見所の一つです。峠下の本役としてはわずかな登場ですが,あとはドクターや別所へのインタビュー役など,あちこちに登場していらっしゃいます。
  18. 女の子役の宮島めぐみさん。ひかるちゃんという名前を持つ過去のふれあい養護院の黒幕です。暁詩織の過去,不気味な子どもとして登場してきます。パイドパイパーの刺客役の不気味さともまた違う感じの不気味さで,後天的な狂気と言うよりは先天的な狂気を帯びていました。これが世界にピッタリ当てはまる感じで当て書きかと思うほどでした。今回の演目で退団されるのは残念な限りですが,今後のご活躍を強く祈念申し上げます。
  19. 刑事/市民役の中原こころさん。主にモブキャラとしての登場ですが,集団での登場以外でも,酒場でつまみ食いをとがめられた店主と喧嘩して出て行くアルバイト,太秦署の受付で志賀の出頭に応対する署員など,各所に登場します。特に,酒場のアルバイトの部分はメインキャストの芝居の方ではなく,佐竹さんと中原さんの小芝居の方に目が行ってしまうので,悩ましいところであります。あと,太秦署の外で野次馬をしているときにも細かい芝居をされているので,そちらも余裕があったら見てみると面白いと思います。

というわけで,この作品はどの役者さんも何をやっていたか,役名は無理でも演技の内容は資料なしに思い出せました。どの方にも見せどころがある,そしてそれが余計なシーンには決して見えない作品で,どなたか傑出した人で引っ張る芝居と言うよりは,全員で作り上げるチームのお芝居だったと思います。

この要因としては,もちろんこの作品を作・演出であるナツメクニオさんのお力が強いと思うのですが,演出助手として参加されていた劇団Mayの金哲義さんのお力も関わっているのではと考えます。

ご出演の舞台ではないのにも関わらず,劇団ショウダウンさんの公演をTwitterから援護射撃して下さっている金さんが演出助手で参加されていると聞いて,今回の舞台は楽しみにしていました。石田1967さんのTweetからも盛り上がっている様子が伝わってきました。

今回の芝居は集団としての作品となったのは,とても良い雰囲気なのが伺えて,こうした環境で作り上げられたからこそ,全てのキャストさんの顔や演技を印象づけたお芝居になったのかなと,素人ながらに考えたりしています。

5.おわりに

劇団ショウダウンさんを結構ゴリゴリ推しておりますが,今回もその行為に全く悔いがないと自信を持って申しあげられるほど,充実した楽しい時間を過ごすことができました。やっぱり私は劇団ショウダウンさんのことが大好きでした。

この演目を届けて下さった,キャストの皆さま,脚本・演出のナツメクニオさん,演出助手の金哲義さん,そして,舞台美術・監督のニシノトシヒロさん,音響の須川忠俊さん,照明の牟田耕一郎さん,宣伝美術・写真の堀川高志さん,制作の鉾木章浩さん,当日運営の神谷沙織さん,長谷川滋大さんに,深く御礼申しあげたいと思います。

最後までご覧頂き有り難うございます。長文,乱文失礼いたしました。

stage.corich.jp

*1:悪目立ちということでなく,ストーリー上の存在として記憶に残る