リブラリウスと趣味の記録

観劇とかパフォーマンスとかの鑑賞記録を淡々と。本務の仕事とか研究にご興味ある方は本家ブログまで( http://librarius.hatenablog.com/ )

【観劇ログ】ジョーカーハウス「英雄コレクション」ガールズゲーム

どうも。イマイです。 

pokemon GOはAndroid OSのバージョンが古くて蚊帳の外です(本務の業界的には大騒ぎなのでちょっと寂しいです)。さて,4月からやっていた本務のお仕事に区切りがようやくついたので,観劇の予定をガンガン入れてます。

本日は,旗揚げ公演から拝見しているジョーカーハウスさんへやって参りました。過去3作でお馴染みの池袋シアターKASSAIから,今回は新宿サンモールスタジオへ移動しての公演です。私自身も初めて観劇する会場なので,嬉しさと楽しさと心細さと*1が交錯しながら会場へと向かいました。

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1.前振り

 さて,ジョーカーハウスといえば,

日本中に隠れていた金の卵達をかき混ぜかき集めオーディション。 選ばれた精鋭メンバーで創るエンターテイメント ( http://www.jokerhouse.jp/ )
と銘打たれているとおり,若手主体の公演カンパニーです。ただ、単なる若手カンパニーではありません。2年にわたり第3弾までを着実に公演できていて,あくまで素人の感想ですが,誠実にかつ着実に踏み出しているカンパニーだと思います。
 
しかも,今回の作品は伊藤えん魔プロデュースの過去作や,先行して大阪で上映したものではありません。従来だと大阪でジョーカーズメンバーがベテランと共演しながら、慣れた状態で臨むことになりますが,今回は2年前に上演した脚本をほぼ全面改定して臨んでいるため,ほぼ東京だけの「新作公演」と言っても良い作品です。
 
どんな感じになるだろうと、前日までにあらかたの仕事を片付けて、Twitterを眺めていた所,演出の伊藤えん魔さんの雷がタイムライン上に落ちていました。

ジョーカーハウスの活躍もここまでか?との思いも過ぎりましたが,ガールズバージョンの初日は翌日金曜日の昼。ここで言及されているのはボーイズバージョンであり,ガールズバージョンの出来を判断するのは見届けてからと思い,予定を変更せずに劇場へ向かいました。 

受付開始は予定の14時から15分ほど押し*2,それでも開場は一分たりとも遅れないキッチリ進行*3で劇場内へと入りました。恒例の役者さんによるパンフレット売りが一段落した後,いよいよ開演時間と相成りました。

千秋楽はまだ先ですので、恒例のネタバレ防止のおまじないとして、改行を連打します。

 

 

 

 

 

 

 2.あらすじ

ストーリーは公式サイトから引用します。

【英雄コレクション】配給元不明のオンラインゲーム。超リアルなそのゲームは口コミで密かに広まっていた。 ログインすれば誰でもスーパーヒーローに変身。裏モードではアニメ、ゲームの人気キャラに自在になれる。だが、そこには「主人公ヒーローを狩るハンター達」も大勢いた。 主人公はその世界で勝ち抜き伝説のヒーローとなる。だが突然、ゲームの世界は未知のウィルスによって破壊されてゆく。 いつしか、現実世界にも影響が出始め、ログアウトできないままゲームに留まる闘う事を強いられる。果たして、彼らはその世界を救う事ができるのか?少年ヒーローのボーイズゲームと少女ヒロインのガールズゲーム、二つの世界をかけ巡るバーチャル・ヒロイック・アドベンチャー!(ジョーカーハウス公式サイト

主人公は場末のネットカフェで受付のアルバイトをしているマル子という女の子です。このマル子は,よく言えばコミュニケーション初心者,悪く言えばただの挙動不審気味な元ニートです。彼女のアルバイト先はコスプレ着用の上で勤務することが義務づけられていて、その服装は国民的なアニメーション作品の「あの作品」の主人公を彷彿させる気がしますが,とりあえずその辺は気のせいだと致しましょう。

受付をたどたどしくこなしていると、自信過剰のノリはどこまでも軽い、金髪のネクタイ着用店長サンジが登場。軽口と適当さだけは随一の才能を見せ、物語は進行していきます(こちらも某海賊ものの「あの作品」のコスプレです。)。

アルバイト先のネットカフェでは,最近「英雄コレクション」という出所不明のネットゲームが大人気とのこと。最初は躊躇しながらもマル子はゲームにログイン。気がつけば先ほどまで現実世界ではおそらく苦戦するであろうネットカフェのティッシュ配り(あるいは回収)も,チヤホヤされながら無事成功していました。

気がつけば自分の姿もキュアマッスルの姿に。襲いかかるハンターを縦横無尽に動き回って退治することもできるようになっていました。町中で見かけて声をかけることでさえ叶わなかった「エル」とも積極的な恋の話ができるなど,現実世界では全くもって恵まれていなかったマル子はゲーム世界では大活躍できる存在になっていました。

さて,そのキュアマッスルのそばにはメーテルと,刃というキャラクターが立っています。気がつけば,様々なキャラクターが自分の周りに寄ってきて,だんだんとゲーム世界は賑やかになっていきます。

しかし,そこにガンプラーという声だけの存在が現れ,絶対に傷つけることが出来ないはずのキュアマッスルを重傷へと追い込みます。そうする内に世界はどんどんと崩壊していきます。このゲーム世界を守れるか,そしてマル子の片思い相手エルとの恋路の行方は…。詳しくは舞台でご確認ください。

3.感想など

素人考えなので,もしかすると的外れな指摘なのかもしれないのですが,これまでの3作品に比べて,音響とのタイミングや役者のセリフ回しなどハードルとしては高く設定されているのではないかと感じました。序盤,動きに対して音が合っていなかった箇所も,割と派手なズレ方だったので,これまでの作品とは違ったレベルの対応が必要なのではと思います。セリフも結構甘噛みな感じがあちこちに出てきましたが(会場もこれまでと異なっていましたし),こちらからでは分からないレベルで何か難しい箇所があるのではという印象を持ちました。伊藤えん魔さんの指摘によれば,それらは全て役者の緊張という大敵が立ちはだかったためとのことですが。

でも,そう言ったテクニカルな所を抜きにして,笑わせるところは笑わせて,魅せるところは魅せる作品だったと思います。一見するとパロディの色物に見えますが,実のところマル子という少女の成長とか,その間の葛藤とかが笑いのオブラートに包まれながら,身体の中にじわりじわり効いてくる作品だと感じました。

また,一人二人とキャラクターが減っていき,最後数人に絞られてからのクライマックスでは,それまで賑やかさと笑いに隠れていた「迫力」が前面に出てきていました。あとで申し上げますが,キュアマッスルのクライマックスシーンは一度だけではなく何度も見たいシーンとして特筆したいくらいです。

そして,ジョーカーハウスのメンバーの今まで見られなかった新しい魅力を多く見つけることのできたのがとても嬉しく感じました。さて,それぞれキャストごとにメモ書きを残しておきたいと思います。それくらい印象的な方が多かったので*4。ちょっとだけ出演の方は1回では全部魅力を拾い切れていないと思うので,雑な紹介をしていたらごめんなさい。

  1. マル子役の福井清香さん。これまでの作品では比較的飛び道具というか,何かしらの特技が付与された役柄が多かったように思うのですが,そうしたものを封印して,内気で何の取り柄もない少女を熱演されていたように思います。特に冒頭のおつりを派手に間違えるシーンとか,接客の挙動不審っぷりには,いつの間にか感情移入していました。
  2. 刃役の田守悠花さん。女性的な役柄が過去作では印象に残っていたのですが,本作では一転して男性的な役柄でした。刀裁きとかはまだまだ課題があるとトークショーでは仰っていましたが,ゲームを守るガードプログラムとしての凜々しさを長い時間が拝見できたのはとても嬉しかったです。
  3. キュアマッスル役の小澤瑞季さん。今回一番強く印象に残りました。ダイナミックに舞台を飛び回るだけでなく、足や手を打ちつける音の一つ一つが力強く、勢いにあふれていました。声量も抜群で困難と思われる今回の台詞回しも全く問題なく流石だと思いました。クライマックスの顔をゆがめ叫ぶ様は、かなりの迫力に満ちていて、二度三度見返したいと考えるほど素晴らしいシーンでした。
  4. メーテル役の吉田亜未さん改め羽田亜未さん。今回一番印象が大きく変わった方でした。これまで,物語の中のアイドル的な役割が割り振られることが多かったように思うのですが,今回のメーテル役のすっとぼけていながらも淡々と冷静に物事に当たる様やカッコ良さを感じるほどの堂々とした出で立ちは,とても魅力的でした。

  5. サンジ役の大石祥生さん。流されやすいチャラ男を演じるために,早口かつ適当な台詞回しをしなければいけない点で今回はハードルがかなり高かったのではないかと思いました。ただ中盤あたりの落ち着いたあたりから醸し出す人の良さは大石さんならではで,あそこまで適当でも店がつぶれないのはあの人の良さがあってのことなのだと思いました(適当)。
  6. エル役の富士蒼涼さん。多分初登場の方。豹変したときの不気味さを含めて,あー女の子にモテるだろうなあと思ってみていました。背丈がエルサイズというオチには流石に驚きましたが(汗)。
  7. ルフィ/エス役の梅田拓弥さん。前作の重要人物とは打って変わって,軽快なそれでいて物語に大きく絡んでくる役で,エスはTシャツにSとだけ書いた質素なものでしたが,マル子の理想の男性像が見えてきて,印象に残りました。エンディングで実はウイルスを仕込んだのが自分だというのは,かなりの衝撃だったのですが,あの明るそうに見える愚痴が実は既に核心を突いてきていたのかもしれません。
  8. コナン役の橋本真衣乃さん。コナンってアニメでは普通に見えるけれど,実際にいたらあんな感じに腹立つキャラだろうなという位,ピッタリはまっていた役のように思いました。ちょっと声を出しにくそうにしていたような印象があったのですが,気のせいだと良いなと思いながら心配しています。
  9. ミカサ役の増田悠那さん。前回の男っぽい役に磨きをかけて,さらに魅力的なクールビューティーを拝見できました。今回の作品だとコスプレキャラの場合,全員が個性的すぎてかえってどれも平凡に見える危険性が高いと思うのですが,それでもハッキリと思い出せるカッコ良さでした。トークショーで二刀流のための刀裁きを傘などで相当練習されたと伺いましたが,なるほど納得の見事さでした。
  10. 神楽役の今井美沙さん。銀魂どころかアニメーション作品をまともに観ていない私は,帰宅してググってから初めて,「うわーそっくりそのまま」という今坂らかよと言う感想を抱きました。ザッツフリーダムなキャラで,物語の緊張感を良い意味で緩ませるコメディエンヌでした。
  11. おそ松役の山本大輝さん。foolishな役柄を演じたらジョーカーハウスの中ではトップクラスな方(褒め言葉です。念のため)だと思うのですが,今回もその力を惜しみなく発揮されている感じでした。でもこういう方がいてこそ,物語の豊かさというのは出るのだと思います*5
  12. サザエ役の又吉宏美さん,のびママ役の金子詩織さん,みさえ役の美馬利恵子さんは,どなたも今回ジョーカーハウス初出演。3人一緒のシーンがほとんどだったのでまとめてでごめんなさい。ああいう感じで言われたら,マル子でなくてもニートになりたくなる気持ちは分かります。ある種カチンとくるような神経逆撫での台詞回しやまとまり方は見事だと思いました。
  13. 碇シンジ役の宮武健一さん。碇シンジ役というよりは,ネットカフェのモブキャラ(お客さん)の方が出番が多そうで,今回のガールズゲームではリリーフ登板的な役割が多い感じです。キャストさん達がパンフ上で提案しているゲーム企画の中でも,割とゲームクリアできない感じではトップクラスにトホホさが出ているので是非ご覧くださいませ。
  14. ゾロ役の中山貴裕さん。前回の「運命の子供」でもドスのきいた筋の人を好演されていましたが,今回もゾロ役だけでなくそのまま暴○団関係の組長さんで出てきます。高校生でなくても,あんな感じで来られたら縮み上がることは間違いなしです。それから,今回はネットカフェのお客さんとして軽快にゲームをプレイしている様が何度か出てくるのですが,それまでとのイメージの落差があって面白いところでした。
  15. 犬夜叉役の須見一男さん。こちらの方もジョーカーハウス初出演。ワンパンマン役,組員役を含めて,ちょっとずつの出演ですが,背が高いこともあって目立つ感じの役者さんです。パンフレットのコメントは短いながらも,ちょっとダークさが入っていて軽くニヤついてしまいました。
  16. 猫娘役の三宅彩日さん。ジョーカーハウス初出演。こちらも猫娘としてはほんの一瞬の出演で,むしろ長谷川役としての出演時間の方が長いかもしれません。ハッキリとした台詞回しの方なので,もっともっと観て見たい気がします。トークショーでジョーカーハウスを観劇して,それから出演を志したとのコメントをされていて急に親近感が湧いたのは気のせいだと思います。
  17. ムスカ役の貴志灯さん。私のイメージはクールな2枚目キャラのイメージが強いのですが,今回は割とフリーダムな感じで3枚目の方面への魅力を広げていたような気がします。原作の笑いどころをもっと私が身につけていればさらに爆笑できた気がしているのでDVDの時までには何とかしておきたいと思います←/(2回目追記: 昨日よりも笑いどころがスッと入って来た感じで,昨日よりも爆笑していました。)
  18. 部下役の小鉄公之さん。1回目はちゃんと拝見できていなくて,きちんとした印象が残っていません。そこで,2回目は小鉄さんを少し追って観劇していました。結構いろんなシーンでの出番が多く,裁いているだけでも体力を使うだろうなと思いました…。考えてみればこの作品,役以外の所での出番がやたらありますよね…。
  19. 部下役の潮美月さん。実は部下の中でも,ガンプラーの憑依があったので,殺陣の部分もたっぷりめ。陰気少女のシーンは数少なくボーイズゲームでは剣心役で格好良く登場されているようなので,今回ボーイズゲームの方が見られなくて残念な限りです。こちらもDVDでじっくり拝見したいと思います。
  20. 道具屋役の北原学さん。登場シーンとしては短いのですが,怪しいRMTの道具屋は強く印象に残る役です。秋葉原あたりにあんな感じの人いましたよね(←偏見)。ボーイズゲームではあのカマ子役とのこと。どこまではっちゃけるのか映像を楽しみにしたいと思います。
  21. ナース役の小久保恵梨奈さん。ジョーカーハウスのお母さんポジションというキャッチフレーズが付けられている方ですが,ナース服を着ると本職ですかと思うほどのピッタリ加減です。ちなみにボーイズバージョンではサザエ役だそうで,まさにお母さんポジションでした。
  22. 「でんせつ」の鈴木役の水沢まな美さん。ボーイズバージョンではナウシカ:劣化ミクという役で,おそらくは得意の顎ネタとコメディエンヌを存分に発揮されているのだと思いますが,鈴木役ではそうした得意分野を全て封印されていました。でも,立ち居振る舞いとサムズアップの合図だけで表す様は,膨大なセリフが飛び交うこの舞台では珍しく静かで,それでも十分な説得力を持っていたシーンだと思います。
  23. 組員役の吉田達也さん。こちらの方もジョーカーハウス初出演。でも組員役で出てきたとき,1人だけ本物が出てきたと錯覚するほどのワイルドさで,セリフがそれほど無くても印象に残るというのはこんな感じなのだなと思いました。

多分これで漏れはないと思うのですが,もし漏れがあったらこっそりコメントを頂けると嬉しいです。ジョーカーハウスの魅力は,キャストさんの勢いや元気の良さも魅力なのですが,トークショーなどで垣間見える舞台への謙虚さとか,真っ直ぐさも私が好きなところです。まだまだこの人達を観て見たい,そう思って帰路についた次第でした。

4.おまけ:トークショー前座

さて終演後,伊藤えん魔さん&ジョーカーズのトークショーを聞こうと並んでいたところ,17:30になってもロビー開場が始まりませんでした。理由はえん魔さんからキャストに皆さんへの愛情あふれるトークショーが長引いているとのこと。仕方ないかと思って待っていたところ,当日のお手伝いで入っていた制作チームの方が前説代わりのトークを繰り広げてくださいました。

特に名古屋出身の方*6は,積極的に日常話から名古屋の味噌トークまで幅広く話題を広げて,時間をつないでくださっていました。なかなか開場待ちの時間には手持ち無沙汰になることが多いのですが,ここまで楽しませてくださるカンパニーというのは希有でして,こうした制作さんが支えているからこそ,ジョーカーハウスという場所が居心地の良い場所になるのだなと改めて感じた次第です。

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さて予定にはなかったのですが,どうやら乗り換えを頑張ればもう1回見られそうなので,明日11時の回でもう一度ガールズゲームの方を観てきたいと思います(ぇ 

2回目追記:

ちょっと無理して2回目を見てきました。昨日よりも一体感は増していて,昨日気になったはずの箇所は見事に修復して洗練されていて,とにかく世界にどっぷり浸かって2時間楽しんでいました。静と動のコントラストも自分の中では,より強く感じられて,とにかくもう良かったという他ありません。千穐楽までのご盛況並びにカンパニーの皆様が最後まで無事駆け抜けられることを,強く強く祈念申し上げます。

*1:公演後のトークショーネタです。

*2:おそらく綿密にリハーサルをやり直しされていたのだと思います

*3:こういうのはとても嬉しいです。

*4:複数演じている場合は,キャスト表で先に書かれている方を優先しました。

*5:ちなみにおそ松さんちゃんと見てないんですが,あんな攻撃の仕方しましたっけ…?

*6:Twitter検索をする限りおそらく志水淳さんかと思うのですが…。