【観劇ログ】疾駆猿 第捌回公演『VAGUENIGMA ー2005ー喪失世代の懐疑レゾンデートル』
どうも。イマイです。
観劇集中期間の2本目です。疾駆猿さんは昨年6月に初めて拝見して拝見し,関連作品を含めるとなんやかんやで作品を3本続けて観ていた劇団さんです。今回は,先日恵比寿で拝見したときに主演されていた桜井ゆるのさんのお誘いがあり,伺うことになりました。
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会場は,下北沢のGeki地下Liberty。初めて伺う劇場です。到着は開場前の時間帯ですが,既に周辺に数人の方が集まっていて(もちろん劇場前には並んでいないマナーはバッチリのお客さんたちです),このカンパニーの人気を感じました。
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1.開演前
受付を済ませて,客席へ。2列目のロングシートに腰掛けて開演を待ちます。今回は事前アナウンスで,20分前にここまでのあらすじ動画が流れるとのことで,ワクワクしながら待ちます。
そして20分前に,前回までのあらすじがナレーションと,過去作品の写真そして文字のアニメーションで表現されていきます。実はベイゲシリーズは第漆回半公演「VAGUENIGMA -the Fates Ⅱ-」しか観ていなかったので不安だったのですが,雰囲気たっぷり,思わせぶりたっぷりの映像にその不安はすっ飛んで,期待に胸膨らませる開演前になりました。
舞台のセットは黒色の台が組まれ,後方がかなり高くなっています。下手方面から正面には高くなった後方から斜め前に階段が組まれており,上手方向から正面にはL字型の階段がセットされていました。そして一番後ろにはプロジェクター幕が引かれており,作品中の時間経過などを示すようになっていました。
それではネタバレ防止の改行連打を致します。
2.あらすじ&物語エッセンス
公式ブログによると,物語のあらすじは下記の通りです。
2005年。日本。
経済大国の誇りは既に無く、失業者自殺者の増加・就職難・財政赤字に喘ぐ国。
過去の栄光に縋り、先の見えぬ低迷の中で、国民は徐々にネット社会へと拠り所を求め始め、人間関係はより希薄になり、高齢者を狙った詐欺や、殺人すら好奇心で行われる21世紀に突入していた。
1997年に東京を震撼させた女子高生連続殺人事件の犯人である蓮上祈祝礼(レンジョウイノリ)は、解離性同一性障害を患い心神喪失で警察の監視下にある病院に隔離されていたが、新しい人格の目覚めとともに脱走に成功し、警察機構に追われていた。…
東京都渋谷区に本社を置く『明地探偵事務所』は、戦後より続く老舗の調査員派遣会社だが、世紀末に起きた事件により、経営の縮小化を行い、今は細々と活動している。事務所の探偵である黒冠木桂(クロカブキカツラ)は、失踪してしまった相棒の明地幹億(アケチミキヤス)を捜索していた。しかし、目新しい情報は無く、彼女の焦燥は募っていた…。
幹億の大学の同級生であり、彼の失踪の真相を知る唯一の人間・宍戸朱鷺尾(シシドトキオ)警視正は、日本の抱える闇の中に飛び込み、独自の捜査を続けていた…。
20世紀は終わったが、彼らの事件は世紀を跨ぎ、続いている。
此れは、過去に囚われ平成を生きる人間達が、前に進む為の一歩を踏み出す物語である。(https://ameblo.jp/schicksal-blog/entry-12443680831.htmlより引用)
開演すると,そこはどこかの病院の裏口。
3.感想
- 思わず「いいわぁ…」と呟きたくなるほど,簡素なセットながら映像や照明,音響や,キャストの演技や空気で彩られた重厚な世界は私の大好きな世界です。現代を舞台としたハードボイルドな感じ(そしてギャグが本当に最低限に収めているところとかも作品を壊さない感じで大好きです)は,一度きりしか観られないのが残念なほど,そして映像化されていないのが悔しいくらい,何度も何度も,そして何時間でも浸っていたい世界でした。
- オープニングの全員揃い踏み(ここはキャストパレードという用語を敢えて使いたいくらいカッコ良かったです)はベイゲシリーズを見てきた方であればグッとくるポイントだと思います。1作分しか見ていない私でも昂ぶるものがあったほどです。もちろん初見の方も十分楽しめる迫力で,最前列の方が羨ましいくらいでした(私は2列目でしたがそれでも圧倒されるものがありました)。
- どのキャストさんも作品世界に欠かせない個性的なキャラクターを持っていて,どのキャラもそのまま主役に(といっても実際過去作のメインキャラクターがバンバン出てくるのだから当然ですが)ストーリーを展開できるほどの魅力的なキャラクターでした。
- 2時間は長いのでは…と思っていたのですが,全く集中が切れることがなく最後まで観られました。切り替えのテンポが良く,ストーリーも先の読めない展開で進んでいき,そしてどのキャラクターも魅力的なので,気がついたら終盤になっていたという作品でした。
- ともかく,ハードボイルドでただただカッコイイので所見であっても一見の価値ありです。
4.キャラクター紹介
全員のキャラクターを列挙してこんなキャラクターでしたと紹介できるほど,どのキャラも強烈なのですが,私が個人的に強く印象に残っていたキャラクターを紹介します(もちろんこれ以外のキャラクターを演じていたキャストさんも全て凄かったです)。
- 狭間漸黒(桜井ゆるのさん)…INTRABORDERの時の疾駆猿さんで拝見していて,その時もシステムだったかなと勘違いしておりましたが,なんと漸黒役は今回初めてとのこと。エビスSTARバーの時の役柄やINTRABORDERの時の役柄とは正反対のクールさで,まあとにかくカッコイイのですが,不気味さ満点の役ですした。
- 篝縫緋(三浦沙織さん)…前回拝見した疾駆猿 第漆回半公演「VAGUENIGMA -the Fates Ⅱ-」でも強烈な不気味さを発揮していたのですが,今回も出演シーンは少ないながら強い印象を残していきました。あの声で後ろから近寄ってきたら何かを覚悟しそうです。
- 宍戸朱鷺尾(竹内尚文さん),宍戸白虎(齋藤伸明さん)…この二人がこの物語のハードボイルド度をグイグイUPしていて,この2人の絡みはいつまでも観ていたいほどの安定さでした。白虎のフレームが細い丸メガネがまた良い感じでした。
- 黒冠木桂(松木わかはさん),明地幹億(牧野純基さん),犬塚真実(石塚みづきさん),焼野原灼空(澤田圭祐さん)…この探偵事務所の4人はチームワークという意味では色々問題があるのではと思うくらい,癖が強いのですが,その癖の強さがアクセントになっていて,単に従順な助手とかだったら記憶に残らないだろうなというところでもちゃんと覚えているくらい,一つ一つのやり取りが魅力的でした。
過去作の総決算的な作品ではあるのですが,ただただハードボイルドでカッコイイ世界が目の前に広がっているので,まだ未見の方は是非観て欲しいなと思う作品です。とても楽しかったです!