【観劇ログ】LINX'Sプロデュース「メビウス-201709 TOKYO-」
どうも。イマイです。
演劇ってとても面白いです。脚本,キャスト,演出,音響,照明,舞台装置,衣装に制作と全てが組み合わさったところに出来上がるキラキラした何かが観たくて今日も劇場へと向かいます。
冒頭で敢えて書きますが,最高の作品です。もし観劇を迷っていたら,絶対にお勧めします。
1.まえがき
本日は私の一押し劇団,劇団ショウダウンさんの主宰,ナツメクニオさんが作り出した二人芝居の傑作「メビウス」が東京に来ると聞いて,池袋シアターグリーンBASE THEATERまでやって参りました。
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今回の作品は関西小劇場ファンであれば一度は聞いたことのある伝説のファン,石田1967こと石田さんが手がけるユニットLINX'Sプロデュースによる作品です。
メビウスは劇団ショウダウンで最初の公演が行われた後,何度も再演を重ね,ついには劇団ショウダウンを飛び出して,LINX'Sプロデュースにより様々な役者さんのペアで上演されている作品です。
LINX'Sプロデュースの歴史はちょうど,会場に掲示物が張られておりますので,そちらを是非ご覧下さいませ。
石田さんがどれだけ面白い方かというのも,長々と書いても良いのですが,今回はそんなことはどうでも良くなるくらい素晴らしい作品だったので,早速本題に入りたいと思います。
今回の公演時間は平日20時からというだいぶ遅い時間帯になっています。でも社会人としてはこの時間は大変ありがたく,予定した会議が1時間以上終了時間が遅くなっても余裕で到着できる社会人に優しい設定です。これが19時開演とかだと,17時には職場を出ていなければいけない設定なので…。
制作の鉾木さんと久しぶりにお目にかかったので,テンションを上げつつ受付を済ませ,客席へと向かいます。物販席では,LINX'Sの過去作品DVDも並んでおります。
柿喰う客,The Stone Age,カメハウス,突撃金魚,ミジンコターボ,ムーンビームマシーン,ステージタイガーと関西小劇場ファンであれば興味を引かれる団体ばかりが出てますよとの売り込み文句に従って,1枚購入させて頂きました。
客席に入る直前,今回拝見するBチームの役者さんの写真が掲示されています。今回のBチームは三浦求さん(ポータブル・シアター)と澤井里依さん(舞夢プロevkk)のお二人です。
席に座りまして,舞台上に目をやりますと,照明用のトラスが6本ほど組まれていますが,舞台上は四角い箱が2つと花が一輪置かれているだけの,非常にシンプルな舞台セットとなっています。
では,千穐楽前であること,それから将来の再演前にご覧になる人のためにも,ネタバレ防止の改行連打を行います。
2.あらすじ
「どこかで会ったこと、ありませんか。」
二人の手が重なったとき記憶を探る、二人の旅が始まる。
時を超え、時を繋ぎ、いま走り出す。
至高のノスタルジックサイエンス・フィクションは男女二人が時をかけるラブストーリー。
開演すると,2体のアンドロイドが現れます。1体は腰掛け,1体は立って動いているアンドロイド。廃棄され,2体とも朽ちるのを待っているような状況です。立って動いている港湾労働用のアンドロイドは腰掛けている家事用のアンドロイドに向かって,最後なのだから人間のように話してみようと持ちかけます。
人間とは何かとしばし2体の間でやり取りした後,港湾労働のアンドロイドから家事用のアンドロイドにこんな言葉が掛けられます。「どこかで会ったこと,ありませんか。」
この言葉をきっかけに,2体のアンドロイドは自分たちの動作記録には残っていない,それでも何故か想起される映像を一つ一つたぐっていきます。一輪の花を鍵として,バラバラに散らばった記憶の断片は,やがて一つの塊となり,道となっていきます。
時には人間同士でなく,片方が動物の時もあり,男女の組み合わせでないときもあり,シリアスな場面もあればコメディカルな場面もあるのですが,何度も繰り返されるある場面が舞台上では強調されていきます。
2人の記憶はルーツへと戻ることが出来るのでしょうか。そしてなぜ2人は最期にこんなことをしているのでしょうか。物語の結末は是非劇場で目撃して下さい。
3.感想
劇団ショウダウンさんの物販で,割と早い段階からメビウスの台本と映像を入手していたのですが,こういう生の舞台で観られる日までと思って,ほとんど手をつけておりませんでした。いわゆる初見に近い状態です。それなのに,初見でこんなに最初から最後まで泣きまくっていました。こんなこと,生まれて初めてでした。
冒頭からアンドロイドが動きを停止する一時間前の出来事という,自分がわりと好きなシチュエーションかつ感情移入しやすいシーンであることもあって,気がついたら序盤からジワッと涙がでていました。いつもだとそれはシチュエーションに反応しているだけであってすぐ涙は止まることが多いのですが,今回のストーリー,役者さんの熱演はそれをすることを許してくれませんでした。
ねえ,どこかで会ったことある?とのセリフの直後に引き裂かれる二人,思い出す度に引き裂かれる二人。記憶の糸をたぐる旅のそこらかしこに,笑いもあれば悲劇も隠れていて,ボディーブローのように涙腺を刺激してきます。未来のアンドロイドの世界に場面が戻る度に,私はタオルを手放せなくなりました。思い出すというただそれだけのことをしているのに,前を直視できなくなるくらい悲しくなるのです。
予定された終わり,結末がたとえ見えていたとしても,それまでに広げられていた伏線がガッチリと心を掴んできて,おどけたコメディチックな本筋とかは関係ないあのシーンも,最後の種明かしではきちんと伏線になっているのです。
最後に断片がつながり,一つの線へと組み合わさっていくところは,テンポの良さもあってまるでアンドロイドが最後に見た走馬灯のようにも見えました。約束と記憶が連れてきた最後の瞬間,ようやく二人は出会うことが出来ました。たったそれだけの話なのに,こうやってブログを打ち込みながら,また泣いてしまいそうになります。
言葉としてはとっておきにしておきたい言葉なのですが,最高という言葉を遠慮なく用いたいと思います。演劇の奇跡,素晴らしさ,マジックが全部詰まった作品です。
ナツメクニオさんの脚本はとても大好きなのですが,この作品でさらにその認識を深めました。序盤に湖の畔の描写が行われる辺りは,ただただセリフで説明されるだけのシーンにも関わらず,その情景が目の前にまじまじと現れるような気が致しました。
笑いのバランスも非常に私好みでありまして,桃太郎のくだりでイヌ,コンドル,ゴリラが仲間になるあたりは,派手に笑わせて頂きました。でもこの笑いがあるからこそ,コントラストが思いっきり付いていて,ラストシーンの感動を呼んでいるのだなと思うのです。
4.キャストさん一言紹介
- 三浦求さんは撃鉄の子守唄とLARPSで既に拝見しておりましたが,今回はマイムの素晴らしさを存分に発揮されておりました。アンドロイドの動作した後の反動,ゴーストを追う際の数々のドア開けのマイム,ゴリラの動き,コンドルの動きなど,目に焼き付けておきたい表現のレパートリーは,今日の仕事疲れを忘れるどころか,生きてて良かったと思えるほど幸せな時間でした。
- 澤井里依さんはたぶん初見の役者さんですが,コメディとシリアスの振り幅が大きくて,特にコメディ方面のおどけ方が多彩な方だなと思いました。標準語かと思いきや,関西弁を思いっきり使っている場面は,それまでの勢いもあってゲラゲラ笑っておりました。個人的に好きなシーンとしては,ゴーストの場面が私は好きです。
5.おわりに
取り急ぎ,1回のみの観劇ですがログを打ち込んでみました。土曜日の昼公演も拝見する予定なので,また追記したいと思います。ではひとまず。