【観劇ログ】劇団ショウダウンPresents林遊眠一人芝居「マナナン・マクリルの羅針盤」2018年版
どうも。イマイです。
推したい劇団は数々あれど,公演日程が発表された直後に全通を考える劇団はそうありませんで,私の場合は劇団ショウダウンさんがその劇団です。流石に11ステージ+2は全通できませんが,半分以上は行く覚悟で日程を組んでみたりしています。
というわけで,本日は劇団ショウダウンさんが2014年に第25回池袋演劇祭で大賞を受賞した作品,林遊眠一人芝居「マナナン・マクリルの羅針盤」の再々演を観に,東京・シアター風姿花伝までやって参りました。
2015年の再演の時に観劇ログを書いていたようなのですが,割とざっくり書いていたことに気がつきましたので,今回は初めて見たときのような感じで詳しく書いていきたいと思います。
【観劇ログ】劇団ショウダウン「マナナン・マクリルの羅針盤 再演 2015」 - リブラリウスと趣味の記録
目白駅から徒歩12分ほど,西武池袋線の椎名町(しいなまち*1)からは徒歩6分ほどで到着する劇場です。余計な立て看板はなく,写真に示したようにビルの壁面に額が飾られていて,とてもオシャレな感じがします。
階段を上がって2階を取り囲むようにつけられた通路で待っていると,開場時間となりました。
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1.開演前
受付で代金を支払い,チケットを受け取ります。フライヤーの表が印刷されています。そうそう,劇団ショウダウンさんといえば,フライヤーのカッコ良さは随一なのであります。
既に大阪公演を拝見しておりましたが,物販コーナーでは以下のように東京公演限定でのポストカードが追加された模様です。私もキーホルダー(たぶんこれはストラップですが)と,ポストカードを1セット購入いたしました。
【 #マナナン・マクリルの羅針盤 東京公演物販追加】
— 井口十三@劇団ショウダウン (@i10zou) August 12, 2018
マナナン・マクリルのキーホルダー(500円)、マナナン・マクリルの羅針盤、 #蒼のトーテム のポストカード(200円)が新入荷しました。劇場にお越しの際にはぜひ物販コーナーにもお立ち寄りください。#マナナン東京 pic.twitter.com/8veJiyuJDQ
客席に入って,先ず目にしたのは大阪公演と異なる字幕上映スペース。クラウドファンディングで実行することが約束されていた字幕上映が本当に実現した瞬間です。
開演前と休憩中は写真撮影&UP可能なので,早速撮影してみました。どうですか,このカッコ良さ。まるでハードカバーの物語の表紙みたいです。正直,これだけでテンションが相当上がりました。
そして大阪公演を観に行った人だけの特典,当日パンフレットです。ラフスケッチの大阪公演版に比べて,なんと東京公演版はタイトルとペン入れがされたバージョンになっています。これもとにかくカッコよいのです。
色々な種類のカッコ良さに満たされつつ,開演時間を待ちます。開演前には主宰のナツメクニオさんが登場します。英語字幕回ということで,英語のアナウンスもセットになっていて,字幕以外にも徹底されているなーと思った次第です。
では,千穐楽前なので,ネタバレ防止の改行連打をしたいと思います。
2.あらすじ
劇団公式Webページによると,あらすじは下記の通りです。
時は大航海時代
海洋の派遣を握る大国の港町に住む一人の青年、没落貴族として生きる彼は、海の彼方にあるという船乗りの楽園を目指し、誰も進んだことのない航路に向けて、舳先を向ける。
大国の軛を断ち、自由に、人間として生きるために。
林遊眠が一人で演じきる、海洋冒険大作。劇団ショウダウンがかつて上演したことのないレベルの最高傑作で挑む、掟やぶりの一人芝居。
西と東の大都市が今年、大海原に飲み込まれる!
開演しM0の音楽が終了すると、舞台上部から赤の照明,上手と下手の斜め上から青の照明,そして上手と下手の水平方向からは白い照明に包まれ,主演の林遊眠さんが衣装を身にまとって登場します。
・・・その船は,朧な月明かりの中でもはっきりと分かるほど,巨大で雄大で,そして美しい船でした。
女が語り始めるのは冬のカリブ海の物語。奴隷商船の甲板上で奴隷である母親が水を求めようと,船員に声をかけたところ,ほぼ酒の遊び半分,悪ふざけで,海へと突き落とされようとします。洋上でこの母親が突き落とされ絶命すると思われたその時,サミュエル・ベラミー率いるスループ船が,この奴隷商船であるガレーを襲います。瞬く間に制圧された奴隷商船の船上,ベラミーは奴隷たちに向かって高らかに宣言するのです。
ようこそ,かつての奴隷たち。今までの狂った茶番は幕を閉じた。拘束している鎖をたたき壊せ。今からお前たちは何にも縛られることのない,今からお前たちは,・・・自由だ。
1717年というわずか1年の間しか活躍しなかった海賊,サミュエル・ベラミー。その実在する海賊がケープコッドで消息を絶つまでのストーリーが史実,ファンタジーを取り混ぜて鮮やかに描かれていきます。
途中休憩10分を挟んで,2時間15分の大熱演する一人芝居。ぜひこの作品の結末は劇場で見届けて頂ければと思います。
3.感想
- まず何よりも2時間15分の一人芝居は圧巻です。再演を拝見したときに,「林遊眠さんの台詞,体の動かし方,表情,どれをとっても並大抵ではたどり着けないし,たどり着くという表現を使うことがおこがましい気さえします」と感想を書いているのですが、今回もその感想は全くぶれることなく,凄いものを見せて頂きました。
- 特に2幕のクライマックスの戦闘シーンがセリフ,動き,音,光の全てがテンポ良く,立て板に水がごとく紡ぎ出される言葉に,ひたすら五感をフル動員して感動しておりました。とにかくカッコ良いので,このシーンだけでも観て欲しい,そう思うほどの素晴らしさです。
- たくさんのキャラが登場する作品ですが,エドワード・ティーチと黒髭の掛け合いは,林さんの演技が凄いのですが,キャストが2名いるのではと錯覚するほどに別人がそこに立っている感じがします。
- 特に2幕は英語字幕に注目して観ていたのですが,サミュエル・ベラミー少年の回想シーンで,ピエトロ・メイヤーと黒人の奴隷の3名が出てくるシーンで「girl」と字幕に出てきました。その瞬間,何度も観ているはずのこの作品で一度も泣いたことがなかったこのシーンで,突然涙が溢れてきました。そうか,このシーンで強く振る舞っていたこの女性は「Lady」ではなく,「Girl」だったのかと分かったのです。3人が手を繋いで歩いている姿とか,奴隷の少女が精一杯強く振る舞おうとしている姿が浮かんだ瞬間,1回目だったらたぶん何のことはない過去の回想シーンが突然,辛く悲しいシーンに切り替わっていました。おそらく日本語字幕だったら,気がつかなかったであろうこの違い,関係性や対象をはっきりと表現する英語だからこそ,初めて気がついた(もちろん台本には少女と明記されてはいるのですが)姿でした。この1つだけでも英語字幕を観られて良かったと確信しました。暗転シーンではちゃんとプロジェクターの光源が絞ってあるという配慮もバッチリでして,おそらく次の回からを観るときも,この字幕の単語が頭をよぎってたぶん感涙すると思います。
- 1幕のロジャージャレットとの海戦シーンで,七門の大砲から砲弾が撃ち出されたとき,大砲の音が7回鳴っていました。大きな音だけでなく,細かい音も含めて音響の妙がこの世界の魅力だと思います。
- 照明も好きなシーンがいくつもあるのですが,1幕のベラミーの海賊たちへのスピーチのシーンのスポットライト,2幕のダーナ・オシーのシーンの全体が白く,少し暗めの青になっているところが心動くシーンでとても好きです。
本日,8月13日(月)時点でもまだまだ公演日程は3日残っています。お席も潤沢にあるそうなので,ぜひ多くの方にこのサミュエル・ベラミー,そして劇団ショウダウンの大賞受賞作品を見届けて頂ければと思います。暑い夏にピッタリの冒険活劇が今始まります。
*1:何回もしいなちょうと呼び間違えるのでここで打ち込んで対策を打ちます。