リブラリウスと趣味の記録

観劇とかパフォーマンスとかの鑑賞記録を淡々と。本務の仕事とか研究にご興味ある方は本家ブログまで( http://librarius.hatenablog.com/ )

【観劇ログ】劇団壱劇屋「憫笑姫-Binshouki-」

ども。イマイです。

リアル世界で兄です。格好つけたり伊達や酔狂が好きだったりします。

1.前振り

さて本日は名古屋方面の4日間連続のお仕事を終えた後*1,お仕事や池袋演劇祭のCM大会が開催されている東京方面には戻らず*2,大阪のHEPホールまでやってきました*3

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夜のHEP FIVEの賑やかさを横目に一路8階へと上がっていきます。

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演劇パスでスムーズに入場し客席に到着すると,舞台上にはスクリーンが張られ,壱劇屋さんフリークならお馴染みのPV集が上映されています。スマートフォンの電源を切りながらふと前に目をやると,前回のノンバーバル殺陣芝居「独鬼」のPVが流れてきました。河西さんによる公演の写真と共に,あのメインテーマが流れています。死なない鬼の哀しい物語を思い出しながら,まだ公演が始まってもいないのに思わず涙ぐんでいました。

「独鬼」の公演DVDは今回の物販で初お目見えでした。もう既に1枚ゲットしているのですが,布教用にもう1枚と台本も1セット買ったので,研究室置きしておきます。興味のある学生さんはどうぞ(ぇ

librarius-theater.hatenablog.com

さて公演が始まる頃かなと思った頃,今回は出演されない座長の大熊さんが舞台上に上がって前説を始められました。軽妙にユーモアたっぷりに(昔カミカミだったとは信じられない…)前説を展開された後,何と次回作のPVがあるとの告知が。本邦初公開のPVは,稽古場写真がないのにも関わらず,来月を楽しみにできる内容となっていました。いよいよ開演です。

では,本公演は千穐楽までまだ期間があるので恒例となりましたネタバレの改行を連打したいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.あらすじ,ストーリー

物語のあらすじはこちら。

これは“姉”の物語

パンをもらえば妹に
服をもらえば妹に
わたしの全てを妹に

姉は妹の為に城へと上がる
そこに待ち受けるのは欲に塗れた愚者の陰謀

これは“姉妹”の物語
姉は妹を守る為
戰旗を掲げ戰場に立つ

( http://stage.corich.jp/stage/84079 より) 

独鬼の時にも同じ記述をいたしましたが,舞台上では, ノンバーバルのアクションパフォーマンスが75分展開されます。一切の台詞が存在しない演劇です(叫び声とかうめき声のような言葉にならない声は発せられます)。台詞がない代わりに,音楽やアクション,顔の表情といった他の要素で物語を表現していきます。

本編が始まると,ノンバーバル殺陣芝居シリーズでは珍しい階段を備えた3つの台が並び立つ立体的な舞台がそびえ立っていることが分かります。白装束を着た誰かが登場し,手元に持った台帳に何かの描写を始めます。

黒い服を着たモブキャラの皆さんが立ち回る中,今公演の主役である西分綾香さんが真ん中の台に一人立ちます,見上げるような仕草をすると,姉妹と思われる二人の女の子が登場してきます。真ん中の台の階段であやとりをしながら遊んでいると,後ろには戦火の音が流れ,黒服を着た大勢のモブキャラが争い始めます。戦争が始まったのです。猛烈な殺陣が飛び交う中,姉は妹の手を引き逃げ出します。西分さん演じる女と姉妹が目が合った瞬間,姉は声を上げ妹の手を取り歩き出しました。

場面は変わり,街のシーンへと切り替わり,姉妹が過ごす街の生活が描かれます(このシーンから妹は久代梨奈さんに代わっています)。このシーンでは姉がパンをもらえば,そのパンは妹に与え,服を姉がもらえば,その服は妹に与える。妹思いで少し過保護の姉が描かれていきます。その光景を,ひとりの男が見ていました。末満健一さん演じるこの国の王です。

王に見初められた姉は,妹と一緒に良い生活を送りたい,いや妹を幸せにしたいとの一心で城へと嫁ぐことを決めました。幸せな王宮の生活が送れるかと思いきや,姉が衣装部屋で着せられたのは煌びやかなドレスではなく,動きやすい服装でした。そして,王の間に通された姉を待っていたのは一つの王の指令でした。甲冑をまとい,この国を守れと。

全く状況が飲み込めないまま,従者の情勢と共に突如戦場に送り出された姉。戦旗を無理矢理持たされながら,戦場へと飛び込んでいかなければならなくなった姉,そして城に人質のような扱いで残される妹。

そんな中,竹村晋太郎さん演じる大将が女性たちの所へと歩いてきます。女達を嘲笑し馬鹿にし,命をもてあそぼうとしていた王や貴族とは異なり,自分たちの生死がかかった兵士達はともかくも,目の前の戦いに集中していました。大将は女達をまとめて助け,女隊の窮地を救います。

戦いで恐怖に震える姉,そして姉が何をさせられているのかをうすうすと感づいた妹。この姉妹の結末はいかに。

3.ここが魅力!

いつもだと文章でつらつら書くのですが,見づらいことと,遠征先で遅くなって明日の公演に集中できなくなることは避けたいので,箇条書きで失礼いたします。

  • 終わってからアンケートを書き始める語彙がすぐ出てきませんでした。ひと言では言い表せない,様々な魅力がそこにはあったからです。
  • モブキャラの方も含めて,全員がカッコ良くて,切なくて,キラキラしていました。身体だけでなく剣も衣装も心でさえ躍動するこの瞬間に立ち会えたことは何よりの幸いであります。
  • 自分が兄であることもあって,中盤の妹を助けようとして叫びながら決意を固めるシーンは思わず涙が出そうになりました。そして目が潤んだままでは終わらず,終盤にかけて大迫力の殺陣とともに,ラストシーンでは見事な見栄と御歌頭さんによる見事な墨絵が合わさって,心が舞台上に持っていかれる感覚を覚えました。
  • 重低音たっぷりのBGMも迫力有る殺陣を,大いに盛り上げてくれます。これぞ壱劇屋さんの舞台だと思える,体感する音響を担当してきました。
  • 主役の西分さんのカッコいい殺陣も魅力なのですが,ガタガタ震える演技が,それ以降の堂々とした殺陣とのコントラストを強くしていて印象に残っています。本当は刀さえ持つことを怖がるような姉が,妹を守りたいがために必死に戦いの場に飛び込んでいくことがよく分かる構図になっていました。まさに姉の成長物語だと思いました。
  • NMB48の久代さんは,私NMBさんを全く知らない人間だったのですが,素晴らしい魅力を持った方だと思いました。これが初舞台だとは信じられない位,素晴らしい役者さんでした。そういえば,末満健一さんがハロプロで演劇女子部を演出した際にアイドルをやっている方は,もともとスゴい人たちなのだと言うことを感じていましたが,今日それを再認識いたしました。稽古時間は決して多く取れなかったに違いないはずなのですが,いやいやそんなことは全く感じさせないキレのある殺陣を魅せて頂きました。
  • 当初は出ないと言われていた竹村さんが,本当にカッコ良かったです。殺陣の連続となる箇所も,流れがぶつ切れることなく,一本の線で繋がっているかのような滑らかで,それでいてメリハリのある動きであって,もっともっとこの動きを見ていたいと思える素晴らしさがありました。
  • そして,今回の舞台で演じる末満健一さんを目撃できて,本当に本当に嬉しいです。私が関西小劇場を好きになるきっかけとなり,素晴らしい役者さんを見つけるきっかけとなったチャンバラ芝居のSMITH,壱劇屋さんを観るきっかけになった西分さんと出会わせて下さった有毒少年はどれも末満さんと繋がっています。その末満さんがチャンバラで西分さんと対決するシーンは,夢にまで見たシーンであって,お願いだから終わらないで欲しいと思えるほどの美しく,色々な思いを重ねて見てしまうシーンでした。末満さんの迫力有るそして怖いキャラを演じたらとことん恐ろしく怖くなる魅力を改めて感じました。
  • 不思議なことなのですが,今回の舞台で明らかに動作を止め停止しているキャラクターが動いているかのような錯覚を何度も覚えました。心が動くのを観測することは絶対にできないはずなのですが,錯覚だけではない何かが殺陣の中から伝わってきたのではないかと思います。
  • 不憫さを笑い飛ばす姫と書いて憫笑姫なのかなと今のところ解釈しています。ただ,不憫さを笑いながら乗り越える姫なのかもしれませんが…。
  • 壱劇屋さんの五彩の神楽は遠征してでも観たい作品群だと思ってましたが本日の終演後、確信しました。並みいる予定を切り倒して駆けつける所存です。

おそらくは伝説になるだろう壱劇屋さんの五ヶ月連続公演。そのスタート地点からきちんと見届けられたことが嬉しく,そしてちゃんと期待のラインを超えて,また新しい魅力を届けて下さったことがそれ以上に嬉しいです。台本をきちんと読んだ上でまたもう1回見届けて,魅力をしっかりと感じて参りたいと思います。

stage.corich.jp

8月26日(土)17:06追記

台本を読み込んだ上で二回目の観劇を致しました。思った以上にまっすぐでピュアな姉妹の物語に、より心動かされました。りなっちこと、久代さんが台本を読んで思わず涙したというのが、確かにと思うほどです。

久代さんはラストの小林さんと繰り広げる大立ち回りが、本当にスピーディーで美しかったです。目の瞬きの一つまで細かく作り上げ配慮されている感じを含め、今後の大活躍を楽しみにしたい女優さんです。

大立ち回りといえば西分さんも、初心者から王とやり合うプロへの成長や切り替えが見事です。ラストシーンの剣裁きのすばやさは見とれるほどの見事さです。

末満さんが階段を下りるとき、下を見ないだけでなく、目をぎょっと見開いて堂々と降りてくる様は、あたりの空気が引き締まる感じがし、ラスボス感満載で幸せでした。目線の方向一つで雰囲気をさっと変えられるあたり、RIPで拝見していた怖い末満さんの魅力を思い出した次第です。

藤島さん演じる母親が姉妹を守ろうとして絶命するシーンは台本を読んでいると、姉に託した約束を想起させてグッとくるシーンになります。

あー幸せ。12月終わるまでは何とか生き残る気力が湧いてきました。

*1:本当は間に合わない予定だったのですが,学生さんが優秀で全員が最終試験途中退出だったので,間に合いました…。ありがとうございます。

*2:なお,お仕事は事前にお休みの連絡を入れて,迷惑がかからないように準備万端の状態にして参りました。迷惑は最小限にしておくの大事です。

*3:ずいぶん来ていないと思ったら2014年の4月のミジンコターボさんの解散公演以来だったことが分かりました…。