リブラリウスと趣味の記録

観劇とかパフォーマンスとかの鑑賞記録を淡々と。本務の仕事とか研究にご興味ある方は本家ブログまで( http://librarius.hatenablog.com/ )

【観劇ログ】ピースピット2017年本公演「グランギニョル」

どうも。イマイです。

舞台を観ながら,いろんなことを連想したり明日の仕事とかを思い出すことがあります。前は思い出す度に憂鬱になっていたりしたのですが,それは舞台を観ながら思い出すことでデトックスをしているという,舞台の楽しみ方の一つだと思えるようになりました。でも,本当に凄い舞台だとそんなことを1ミリも考える余裕もなく,ただただ目の前に集中しています。これも舞台の楽しみ方の一つです。

さて本日は,私が関西小劇場を見始めるきっかけとなったピースピットの本公演,かつ末満健一さんの最新作である「グランギニョル」見届けるために池袋のサンシャイン劇場までやってきました。TRUMPシリーズの最新作です。

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 いつもだと,書く順番と材料を決めておいて,それを順番に配置するように書いているのですが,今日は観終わった後,エクトプラズマが口から出ていくんじゃないかのレベルで惚ける勢いでして,しかも忘れないうちにあれこれ書いていきたいと思っているので,いつもとはパターンを変えて,箇条書きであれこれ書きます。

(一応ネタバレ防止の改行連打をしておきます)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • 凄い舞台は開場して客席に入った瞬間,セットとBGMで世界に入り込めるという話がありますが,今回はまさにそれでした。荘厳な音楽とステンドグラスを連想させる舞台セットが目に入った瞬間,TRUMPワールドのあの世界に飛び込んでいた気がします。
  • 今回は素晴らしいパフォーマンスとストーリーの畳かけで,とにかく全く気が散らないレベルでした。2時間半の舞台だと普通長いと感じる瞬間があるのですが,今回は気がついたら,いや気がつかないレベルで時間があっという間に過ぎていた感じです。
  • TRUMPシリーズの見事な仕掛けとして,単体でシリーズ初見の人が観ても楽しめる作りになっています。多分エンディングはシリーズ初見だったら前向きな終わりに見えるところなのでしょうが,TRUMPを継続して見ている人にとっては,明るそうに見えるセリフや振る舞いも第1作への伏線のように見えてしまって,いうならば「悲劇的な最期を遂げた歴史上の偉人の前にタイムスリップして,仲良くなって意気投合して,悲劇的にならないように時間改変しようとしたら,歴史の筋書きには抵抗しきれずに最期を見届けることになってしまう」系のどうしようもなさです。全部がぶつけようのない悲しさで満ちあふれていて、涙を流しただけでは発散できない衝撃でした。
  • 豊富なストーリーに支えられていることもあるのですが,キャストさん全員がそれぞれ輝いています。
  • ピースピットから観ている方だと菊池祐太さんが癖のある情報屋黒猫*1をやっているという所も見所です。だって初代ソフィー・アンダーソンですよ。あの黒猫が死亡してソフィー・アンダーソンに転生したんじゃないかという妄想を思わず考えるくらい個人的に盛り上がっていました。
  • ダリ・デリコって第1作だけを観ると,分からず屋の頑固なひょうきん親父にしか見えないんですが,今作を見るとあの第1作のコメディに見える登場シーンですら,哀しさを帯びたシーンに見えてきます。あれだけの過去を飲み込んで,ウルとラファエロを守るためにブラド機関で必死になっていたと考えると,もう可哀想すぎるんじゃないかと。演じてらっしゃった染谷俊之さんが,アウトロー気取りだったダリ・デリコをあるときはキザに,またあるときは人間くさく演じていらっしゃって,身のこなしの良さも相まってとても魅力的な方に見えました。
  • ゲルハルト・フラの物語は,衝撃というより覚悟していた悲劇が「あぁやっぱりか」と見せつけられる悲しさでした。高貴な貴族に育てたかったのに,アンジェリコが捻くれて,TRUMPを追い求めるようになってしまったのはやはり父親を追いかけてしまうところがあったのでしょうか。アンジェリコも可哀想すぎる…。演じられていた三浦涼介さんは最初女性かと思うほどの美しさで,男性的なデリコと対照的になっていて,その表情の一つ一つが印象に残っています。
  • 執事ハンスのキャラクターが,割と印象に残る,好きな台詞回しかつ印象に残る立ち居振る舞いだなと思っていたら,池村匡紀さんはクロムモリブデンの方でした。憎めない人間嫌いの執事としてきちんと要所を締める役どころだったと思います。
  • キキ・ワトソンは,演者の田村芽実さんがやたらマリーゴールドを意識させるようなセリフを仰っていたので,まさかなぁと思ったら,まさかのご先祖さまでした。歌唱シーンもおそらくはCD化されないのでしょうが,DVDのおまけで付いてこないかと思うほどの名曲です。不安定だけれど,歌が好きで,もう泣かないと決めたんですよね…。アンジュルムを卒業されて,役者を本格的に始めた方ですが,舞台にスッとフィットしていて,また他の舞台でお見かけするのが楽しみでなりません。
  • 李春林役の東啓介さんが,たっぱがある方で殺陣のシーンとかで見栄えのするカッコいい方でした。最期まで黒幕だと疑っててゴメンナサイ…。おそらく末満さんのことでしょうから,李春林たちのその後もきちんと詰められているのだろうなと考えるとちょっとゾッとする次第です。
  • 呪いというテーマですが,それぞれのセリフがこれまでのシリーズ作品と同じ言い回しや全く同じセリフを使っていて,そのたびにビクッとさせられ,知っているからこその哀しさを感じることが幾度もありました。もちろん知っているからこそニヤリとする場面がありまして,「ダリちゃーん」はその代表格的なセリフでして,もうなんだか卑怯(ry
  • 殺陣のスピードとかも高速で見所たっぷりでした。映像で拝見できるのが今から楽しみです。
  • 「ウル」という言葉は「希望」という意味だったのかー。だからこそあの作品世界では,ウルと言う言葉をみんな大切にするのかなと思いましたが,ウルもううぅ可哀想すぎる(本日3回目)。

チケットはかなり好評な売れ行きで,本日も昼の公演,当日券は全て売り切れでしたが,ぜひ舞台上でこの世界に浸かって頂ければと思います。やっぱりピースピット,末満健一さんの名前に間違いなしでした。

grandguignol.westage.jp

*1:それもあの有毒少年とほぼ同じ衣装!