【観劇ログ】Menicon presents 戦国オペラ「本能寺が燃える」
どうも。イマイです。
疾駆猿さんの舞台を観終わった後は水道橋まで移動しました。もちろん東京ドーム…ではなく,到着した場所は宝生能楽堂でした。そして演目はなんとこちら。戦国オペラ「本能寺が燃える」でございます。今回家族の繋がりから作品の存在をご紹介いただき,面白そうということで観に来た次第です。
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1.開演前
能楽堂は昨年の6月に宝生会の月並能を観に伺いました。その会場でなんとオペラを行うということで,気分はそれだけで高まります。
【観劇ログ短信】六月・宝生会 月並能(能「柏崎」,狂言「千鳥」,能「邯鄲」) - リブラリウスと趣味の記録
今回は正面の席に座ることができまして,座って前を見ると,能の舞台とは違い,後座の所にセットが組まれ,スクリーンとしてもそして演者が登場する時の引割幕としても機能しています。
入場時にはスクリーンには桜の枝が映されており,象徴的で印象に残りました。
そして本舞台の正面側と客席の間あたりに場所が組まれており,そちらに指揮者と少数ですがオーケストラが配置されています。下記のブログは場所は異なりますが,およその状況を掴んでいただくのには役立つかと思います。
入り口で頂戴したパンフレットを観ておりますと,今回の振り付けは日本舞踊の西川流総帥の西川右近さんが担当されているとのこと。オペラに日本舞踊,そして能楽堂という組み合わせに頭が少々混乱して参りましたが,今までに見たことがないものに期待が膨らんで参ります。
では,ネタバレ防止の改行連打を致します。
2.あらすじなど
「本能寺の変」で世紀の逆臣となった明智光秀が望んだものは何だったのか。
ただひとつの愛が、歴史を変える事件を引き起こす(http://event.menicon-ba.co.jp/event_info/event.php?id=148より引用)
舞台は二幕構成となっています。
開演するとまず,南光坊天海(橋爪淳さん)が登場し,杖をつきながらよろよろと客席から登場し,物語の世界を一言ずつ明らかにしていきます。誰もが知っているあの本能寺の焼き討ちは何故起きたのか,その時代に思いを馳せる中で,舞台上には斉藤道三(滝沢博さん)の娘である帰蝶(加藤恵利子さん),そして家臣の明智光秀(吉田知明さん)が現れます。帰蝶が光秀への愛を歌で現します。そして光秀も登場し,二人の間にある純粋な愛心を歌い上げていきます。
そして父,そして美濃国を収める武将でもある斉藤道三が登場。低音の声を響かせながら,マムシと呼ばれた将軍の勇ましさを表現していきます。
このまま安泰かと思われた美濃国,そして二人の関係ですが,そこに織田信長(田中良和さん)が現れます。輿入れで関係を結ぶ戦国時代の習わしに従って,帰蝶を信長へと嫁がせる道三。懐刀を帰蝶に持たせ,いざとなれば寝首をかいてしまえと指示するほどの余裕を見せます。
しかし,目をつり上げながら,自由奔放それでいて恐ろしさも兼ね備えた信長に道三は圧倒され,信長には勝てないとただただ落ち込みます。
自らが輿入れの手配をしなければならない皮肉に心を痛める光秀。道三への忠義から不満を漏らさないまでも帰蝶との別れを惜しみます。
場面は変わり,信長は,天皇家の混乱に乗じて,足利義昭(栗原峻希さん)に取り入り,天皇家の信頼を勝ち取っていきます。
道三は美濃国の行く末を案じて光秀を美濃国から離れさせます。そして道三は息子に戦を仕掛けられ,果ててしまいます。親と子が争う悲劇,憎しみが憎しみを呼び,戦が戦を呼ぶ世の無常を嘆き,第一幕が終わります。
二幕はいよいよ信長の家臣となり,本能寺の変が起きるまでのストーリーとなっていますが,その結末はぜひ舞台で見届けていただければと思います。参考のために,メニコンのページに掲載されている2017のダイジェストを紹介しておきます。
3.感想
- 何よりも能の舞台で,オーケストラ演奏によるオペラを観るというシチュエーション自体が初めての経験でした。どの方も当然ですが,歌唱力は随一であり,表現力も豊かな方ばかりなので,ただただ圧倒されるばかりでした。
- 背景にはさまざまな絵が照明によって映し出され(「光の切り絵」とパンフレットにはあります),目を楽しませるだけでなく,能楽堂の舞台に様々な世界を表現してくれています。桜の花が互い違いに描かれるところなどはそれだけで眺めていたいくらいの美しさでした。
- どの方も素晴らしかったのですが,橋爪淳さんの演じる天海(100歳以上生きたと言われる実在の人物です)が,自らが目撃してきた歴史を悔やみつつ語るところ,そして長生きしたことで衰えた足腰のためフラフラしながらそれを行っているところはとても印象に残りました*1。あと,大変細かい点なのですが,織田信長を演じていた田中良和さんは,終演後のカーテンコールで正面,脇正面だけでなく,中正面のお客さんにもお辞儀をされていたのが,良い方だなーと強く記憶に残っています。
- 能楽堂での上演と言うこともあったのかと思いますが,能の所作に見える箇所がいくつも取り入られていて,その瞬間だけ,オペラの舞台から能の舞台に一瞬錯覚して,それもまた興味深かったです。
初めての経験をたくさんした作品でした。本当に素敵で素晴らしい作品に出会えた幸運に感謝申しあげます。
*1:終演後に橋爪さんにご挨拶させていただいたのですが,もちろん軽やかに歩いて,お客さんと挨拶していたので役者さんスゲエと思った次第です