【観劇ログ短信】六月・宝生会 月並能(能「柏崎」,狂言「千鳥」,能「邯鄲」)
どうも。イマイです。
6月10日(日)に勤務先の国文幹事会の学生さんにお誘いを頂きまして,東京水道橋の宝生能楽堂に行って参りました。今回の催し物は「月並能」という宝生能楽堂が毎月開催している月例公演とのことです。
JR水道橋の東口から途中まではドームのお客さんと同じ道を通りますが,ドームシティーからは一本,道を隔てたところ,宝生ハイツというマンションの1階部分に能楽堂がありました。宝生能楽堂があります。高校の芸術鑑賞で能や狂言は見た記憶はありますが,本格的な能楽堂は人生初です。
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集合時間からだいぶ早めに会場到着。入り口はちょうど開場時間を迎えていて,多くのお客さんが中に入っていきました。今回の観劇会を主催してくださった国語国文学科の幹事会の皆さまならびに参加者が続々と到着。開演時間10分前に中に入りました。
座席は中正面 という場所で,本舞台の斜め前側の席でした。多少柱で隠れるところはあるのですが,前方から最後列まででもそれほど遠い距離ではなく,見やすい印象がありました。
当日は能「柏崎」,狂言「千鳥」,能「邯鄲」という3つの作品が上演されました。番組表は下記のPDFをご覧下さい。
私は能はほとんど初めてに近い状態で拝見したので,細かい所作の豊かさとかまでは分からなかったのですが,まず驚いたのが1つめの柏崎が始まり,シテ(主人公のこと)が舞台から鏡の間へと繋がる橋掛かりから登場したときでした。お客さんの頭に隠れて足裁きが最初見えなかったのですが,まるでベルトコンベアに乗って登場してきたかと錯覚するほどに,頭も肩も全くぶれることなく水平に移動していました。それはベルトコンベアではなく,当然すり足での登場でして,それだけで凄いなとただただ驚いてしまいました。
以下,個人的な感想をメモします。
- 物語の始まりは拍手が起こるわけではなく,とても静かに始まります。セリフは「謡」(うたい)で構成されており,笛と太鼓以外の楽器は登場せず,ものすごくシンプルでした。でも音楽はとても多彩で,見始めてからしばらくすると,囃子方のかけ声がバンドのベース音であるかのように聞こえてきました。
- 「静」という感じがピッタリあてはまるほど,動きは最低限なのですが,だからこそ扇子一つを顔の所に持ってくるような小さな動きも,かなり気を遣って動かさなければいけないほど,細やかな配慮が必要な舞台だと感じました。
- 上記の番組表にもあるように,簡単な筋書きが配られています。使われる言葉は文語体ではあるのですが,筋書きのおかげで1本目は理解が及ばないということは全くありませんでした。
- 狂言は音楽もなく,ひたすらセリフの応酬。声の調子を変えての笑いやストーリーを生んでいくさまはとても面白く拝見いたしました。個人的には中学時代に狂言をモチーフにした舞台作品を演じたことがあり,「やるまいぞやるまいぞ」のセリフにはとても懐かしいものを感じました。
- 休憩中に,物販で「謡本」(うたいぼん)と呼ばれる台本を購入し,2本目はこの「謡本」を見ながら,拝見しました。すると,「謡」の一つ一つについて,細かく調子や声の上げ下げが決まっていて,素人が2~3日勉強しただけでは決して到達できないほど,複雑な決まり事で成り立っていることが分かりました。そして「謡本」を見ながら観劇することで,より深いところまで楽しめることが分かりました。会場内でも「謡本」を見ながら観劇されている方が複数いたのも納得でした。
- 素人なので細かいところは分からないのですが,基礎体力とか鍛錬がそのまま舞台に出てしまうのだろうなと,奥深さを感じた1日でありました。
おそらく一人ではなかなか機会がない能の舞台だったのですが,勤務先の学生さんの企画のおかげで,拝見することが叶いました。白百合女子大学の国文幹事会の皆さまに,深く深く御礼申しあげます。ありがとうございました。
なお,記事の執筆にあたっては,下記のWebサイトを参考にいたしました。この場を借りて御礼申しあげます。