リブラリウスと趣味の記録

観劇とかパフォーマンスとかの鑑賞記録を淡々と。本務の仕事とか研究にご興味ある方は本家ブログまで( http://librarius.hatenablog.com/ )

【観劇ログ】劇団『劇団』特別企画公演 中路輝(演出)&さいとうひろき(作)初プロデュース作品「思い立ったら吉日」

どうも。イマイです。

並み居る仕事とイベントのお誘いを蹴っ飛ばしつつ,今月も新幹線に乗って大阪に行っています。 今回は,昨年7月と9月に池袋で旋風を巻き起こした劇団『劇団』さんの新作公演を観に行きます。毎回何かしらの挑戦をしてくる勢いのあるゲキゲキさんですが,今回は一人芝居とコメディーの2作品公演です。

今回の劇場は大阪,長堀橋のウイングフィールドという劇場。初めて伺います。こちらのログでは,「思い立ったら吉日」の感想を取り上げます。観劇順は「思い立ったら吉日」→「スプライサー」の順番です。

 
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1.開演前

開場して,客席に座って,舞台の方を観ると,コンクリートの壁のようなパーティションに鉄網フレームが8枚立てられています。そして鉄網の所に13個の道路標識が引っかけられていて,「大安吉日」,「ドリームミリオンジャンボ★」,「THEATER」,「探偵事務所」の看板が別途掛けられています*1。そして,下手の側に四角い木箱が2つ置かれています。 

開演前には,今回の作演コンビである中路さんが警察官の格好で,さいとうさんがパーティー用の蝶ネクタイとYシャツで登場し,開演前の注意事項説明が行われました。中路さんの説明に合わせて,さいとうさんがフリップを提示していて,丁寧な注意事項説明だなーと思っていたら…フリップには

「さいとうひろきが行きたい国ベスト5」

とか書かれているのですが。えーと,目の前でケータイの電源を切りましょうという説明が行われている中で

「第5位 バチカン市国」 

とか提示されましても。開演前の注意事項でまさかのフリップ芸披露という驚きの展開。もう笑うしかないでしょと思いましたよ,はい。

せっかくなので,5月19日(土)の2ステージ分,このフリップと実際の注意事項説明を対応させてみました。

 5月19日 12:00公演

フリップタイトル:さいとうひろきが行ってみたい国ベスト5

第5位:バチカン市国|携帯電話の電源は切りましょう
第4位:台湾|劇場内は飲食厳禁です
第3位:マダガスカル|劇場内のトイレは客席後方と5Fに一つずつあります
第2位:アンゴラ|非常時には係員の誘導に従って行動して下さい
第1位:イースター島堺筋線演劇祭に本作品は参加しております。

えーと,全く注意事項と対応してませんね。第1位に至っては国?と疑問系のフリップまで追加されましたし。何だったら堺筋線演劇祭のスタンプをもらってくるのを忘れてしまったですよ(←八つ当たり。

 5月19日 17:00公演
フリップタイトル:さいとうひろきが好きなうまい棒の味ベスト5
第5位:サラミ|携帯電話の電源は切りましょう
第4位:たこやき|劇場内のトイレは客席後方と5Fに一つずつあります
第3位:めんたいこ|本ステージは撮影が入っています。
第2位:コーンポタージュ|飲食?
第1位:テリヤキバーガー|非常時には係員の誘導に従って行動して下さい

回ごとに変わるんですか。何だったら第2位の時の注意事項はちょっとあやふやですし,第2位に至っては,提示した瞬間場内のお客さん,感心してましたから。第1位は納得の反応まで返ってきてどうすんですか。もう。何だったら第3位くらいからもう中路さん笑ってましたし。

というサービス精神たっぷりの前説が終了したところで,開演5分前となりました。

2.あらすじ

では,ネタバレ防止の改行連打をしておきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

物語のあらすじは下記の通りです。

人生最高の瞬間は,最悪の1日の幕開け!?

金なし職なし彼女なし!
散々な男に舞い降りた幸運…

それはなんと、宝くじ一等当選!

まさかの吉日に浮かれながら銀行に向かう途中ぶつかったのは、
今売り出し中の超人気女優!?

「助けてください!!」

彼女を追う人々の交錯する想い、そして当選金の行方は如何に!?

人生最高の瞬間に幕を開ける、最悪の巻き込まれ系コメディ!!

https://www.geki-geki.com/omokichi-site より引用)

1年前に別れ話を切り出された恋人に,1年後には借金を返して君を迎えに行くと約束しながら,1年の間に借金はふくれあがり,体重は5キロ増えた絵に描いたようなダメ男が,なけなしの金でたまたま買った1枚の宝くじ。それが,まさかの一等当選。意気揚々と換金に向かうその道すがら,一人の女性に激突。理不尽と思われるほどに激昂された後,突然言われたひと言。「私を助けて下さい!」

追っ手から上手くかくまおうとするも,ダメさ全開で,見つかってしまう女性と男。追っ手は探偵で,女性は人気女優と分かり,押し問答を繰り返した後,女性の何でも叶えてあげるという言葉に男は奮起して,女性の願い「福岡に連れてって」を叶えようとします。

宝くじの賞金を活用して,探偵を買収。さあ,これで全てが上手くいくと思ったら,銀行は祝日で換金できず,なぜか追っ手はどんどん増えていって…。そして女優が立つはずだった舞台の本番はもう明日。劇場と街と探偵事務所と福岡と。数々の場所で,9人のキャストがかけずり回り,跳ね回った結果,待っていた結末とは。

是非舞台で目撃して下さいませ。

3.感想

  • 小西さん&古川さんのコンビでない,作演の組み合わせで,どんな感じになるのかと思っていましたが,ご贔屓であることを前提にしても,敷居が低く,笑い飛ばすところは笑いつつ,でも最後はしんみりして,ほっこり優しくなれる作品でした。新しいゲキゲキの引き出しを見せて頂いた感じです。
  • さいとうひろきさんの脚本は,細部まで配慮がなされている脚本でした。同じキャラが「雨→あめんぼ」と韻を踏めるようになっているところは,気づいたときには流石と思いました。あと,とにかく不器用だけど優しさに満ちた世界のおかげで,中盤から安心して物語が楽しむことができました。とにかく徹頭徹尾優しい方なんだろうなとお人柄が思わず,脚本から伺えるほどでした。
  • 中路さんの演出は古川さんの演出とはまた違った印象を持ちました。私の気のせいかとしれませんが,間の取り方に違いがあったような気がします。リズミカルにセリフを畳みかけた後,そのままスパーンと台詞をたたきつける終わらせ方だけでなく,役者さんの顔で表現するために長めの間を取るところも作る辺りは違っていたのかなと思います。普段役者さんをやっている方だからかもしれませんが,役者さんの良いところ,見せ所をちゃんと引き出して進めていらっしゃったのかなとも思いました。
  • カンパニーの仲の良さというか,雰囲気の良さが伝わってくるほどのまとまりががありました。

4.キャストさんひと言コメント

  1. 中路輝さん,驚異のインド人,もといお姉キャラながら些細なトラブルには的確な指示をとばしてスタッフからの信頼も厚い演出家。リアクションの速さとわかりやすさはゲキゲキさんの中でも随一の方ですが,今回,キャラの中で一番細かい動きが多くて,その大半がきちんと笑いに繋がっていました。演出も付けながら,あの細やかさができるのは,流石だなあと思いました。
  2. さいとうひろきさん,宝くじプレゼンターにして,コッペパンを口の下につけたままレストランを出てきた(それはアゴです)刑事という名前の刑事。アーゴイルさん*2ネタがやはり鉄板で,目を引きますが,宝くじプレゼンターで魅せた有無を言わさない説得力は,身体の大きさだけではないところから生み出される雰囲気のなせる技かなと思いました。
  3. 松田悠さん,借金を返して恋人を1年後に迎えに行くと約束しながら,パチンコと日々の生活に追われて,ダメofダメ人間でありながら,濃すぎるキャラに振り回されているうちに改心して立ち直った情熱系。本作は松田さんの得意な,真っ直ぐ届いてくる驚嘆の叫び声がふんだんに発揮される役どころでした。ラストシーンは思わずグッと涙がこみ上げてくる熱い演技でした。
  4. 中村千奈美さん,今回のキャストの中で一番周りが見えている器用タイプで,鼻とTwitterを駆使してスクープを見つけ出す敏腕記者。ハキハキとした台詞回しに加えて,時折首をかしげる所などで垣間見えるしなやかさが魅力の方ですが,今回もふんだんに発揮されていて,劇中のテンポの良さの大半を担っている大切なポジションであるように感じました*3
  5. 小村七海さん,憧れの先輩と共演できるまでは代役だろうが何だろうが,できることは何でもやるけど,周りはあまり見えていない火の玉ガール。小村さんの真っ直ぐさと純粋さが魅力な方で,今回も縦横無尽の動き。あの強烈な真っ直ぐさがあったから,女優は降板しないという決意ができたんだろうなと納得できるほどでした。
  6. 森口稜さん,女優のことを第一に考えるも忙しすぎて説明が足りず,GPSをつけているのに行き先を見失うウッカリやり手マネージャー。全てを知っているという設定で,ストーリー転換のきっかけを担う場面が多いながら,どこか頼りない感じを出さなければいけない,難しい役どころな感じです。でもそんなことは全く見せず,左へ右へと飛び回って,物語のアクセントをしっかりつけていらっしゃいました。
  7. 久保健太さん,名探偵コナンを敬愛し,じっちゃんの名にかけて駅から徒歩一時間の事務所で依頼を待つ,頭はクールで心はホットな名探偵。後ろを向いて窓の縁に腕を置いているシーンは腕を横に浮かせて演じていらっしゃるのですが,意外と長い間,浮かせていなければならないことに二回目で気づきましたが,ほとんどブレずに保っていたのは流石だと思いました。
  8. 恵奈さん,妹第一で生きてきたけど,周りに頼らない性格のせいで,いざというときに孤独になりがちな売れっ子女優。穏やかな口調ながら,目を見開いて作り出す変幻自在の表情,そして態度を変えるときの台詞の迫力は芸能界の荒波を乗り切り,修羅場をくぐり抜けてきた背景が伺えました(何。
  9. 難波優華さん ,か弱そうで実は脅迫状を送ったり警察に通報して,姉を困らせるアクティブガール。でも姉に真実を告げる電話のシーンでは,最後に別れを告げようとするシーンで,ちゃんと困惑やためらいが顔で表現されていて(二回目の観劇ではそこばかり注目してました),このキャラも決して悪人ではないのだなと思いました。とりあえず警察沙汰にはならなかったようだし,本当に良かった良かった。

当日パンフにも記載がありますが,ゲキゲキさんは楽しんでもらうということに一生懸命な劇団さんです。

ゲキゲキの信条はたった一つ!すべてはお客様の笑顔の為に!

フレッシュさやエネルギーというものももちろん魅力なのですが,この真摯な態度がやっぱり魅力なんだよなあと思いつつ,次回公演の8月公演もHEP HALLで目撃できるようスケジュール調整と,楽しむために必要な努力をちゃんとやりたいと決意した次第です。

5.おまけ

土曜日17時のステージはアフターイベントとして,思い立ったら吉日にちなんだ抽選会が開催されました。(バインダーに挟まれたアンケート用紙に隠す形で,番号付きの付箋が貼られておりました)。

抽選の結果,何と,

3等「小さな写真」

があたりましたよ。私だけで独占してはもったいないので,ブログに貼り付けて共有しておきます。研究室に飾って宝物にしておきます。嬉しいです。ありがとうございました。

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www.geki-geki.com

stage.corich.jp

 

 

 

*1:これは物語の中で登場する場面の施設名と対応しています。

*2:「リーガウスですー」はもうお約束のやりとり。

*3:あと今回ご担当かどうかは分からないのですが,劇場までの道のり案内大変助かりました…(https://ameblo.jp/gekigekiblog/entry-12376650312.html)。