リブラリウスと趣味の記録

観劇とかパフォーマンスとかの鑑賞記録を淡々と。本務の仕事とか研究にご興味ある方は本家ブログまで( http://librarius.hatenablog.com/ )

【観劇ログ】ぴあ主催劇団壱劇屋10周年特別公演「二ツ巴」

どうも。イマイです。

父と子の物語。最近どうも涙腺が弱くなっているようで,この文字面だけでグスンとなることが増えてきております。さて,本日は大阪はABCホールまでやってきました。少々肌寒い気候ですが,見る限りの快晴でABCホールそばの堂島川あたりで思わず写真を撮りたくなってしまいます。

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さてABCホールは一昨年9月,同じく壱劇屋さんの「シャドウ・トラフィック」以来です。もちろん,ただABCホールに遊びに来たのではなく,本日は劇団壱劇屋さんの10周年記念の特別公演「二ツ巴」を観にやってきました。NMB48久代梨奈さん,谷川愛梨さんが出演,しかも久代さんは主演ということでその界隈では話題になっている公演です。

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 1.開場前

今回は劇団壱劇屋さんのノンバーバルxアクション改め,WORDLESS殺陣芝居シリーズの最新作です。五彩の神楽シリーズですっかりその魅力にとりつかれ,通い詰めた私としては何としてでも観たい作品です。

劇団壱劇屋さんといえば,映像班の皆さんが繰り出すカッチョよいPVがまずは魅力です。ご覧になっていない方はまずはPVだけでもご覧下さいませ。

www.youtube.com

今回の作品は外部から客演を招いて行う作品ですが,壱劇屋さんの気合いの入れようは半端ではなく,許可を取った上での大阪道頓堀でのゲリラパフォーマンスを挙行するほどでありました。

ticket-news.pia.jp

PVとゲリラパフォーマンスから伝わってくるキーワードは「水」と「橋」。果たしてこれがどう作品に関わってくるのか,3日目の最終日しか伺えない私としては,壱劇屋さんのリツイートを全て非表示にするという手を使いつつ,1日目と2日目はなるべくTwitterを観ないという作戦をとり,ネタバレ防止を万全にして,本日を迎えた次第です。

3日目の昼公演から参加した私は,ロビー開場時間とともに中に入ります。出迎えてくれるのは恒例となりました劇団員全員の名前が書かれた幟です。HEPホールでは何度も拝見しましたが,ABCホールでこうやって並ぶとまた違った迫力がございます。

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物販コーナーでは,下記のラインナップがお出迎え。3日目のお昼の回で久代さんと谷川さんのミニ幟は完売し,台本も昼の公演で完売したため,急遽夜の回用に台本は増産されるほどの売れ行きだったようです。私は劇団のミニ幟などを一通りのグッズを買い求めました*1

ロビーでしばらく時間をつぶしていると,普段の壱劇屋さんの公演ではお見かけしない方が沢山いらっしゃっていました。NMB48のお二人のファンの方も多数訪れていたようで,その辺の単なる壱劇屋さんのファンですが,どうかこの作品を楽しんでもらえますようにと思わず祈ってしまいました。

壱劇屋さんの公演でありながら,どことなくそうでないような気もするフワフワした不思議な感じがあるのですが,たぶんこの方達なら予想通りどころかそれを上回ってくれるはずだと自分に言い聞かせて,開場時間となった客席へと入っていきました。

さて,ここからはもしかしたらの再演があったときのためにネタバレ防止の改行を連打しておきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.舞台セット

客席に入ってまず自分の座席を目指し,荷物を置いた後に,振り返って思わず声を上げてしまいました。

え,橋が架かってますよね?

目の前の舞台上には舞台袖から舞台袖を繋ぐように,見事に橋が架かっており,舞台上から2m位の高さに床板と欄干が並んでいて,床板はちゃんとわたれるようになっています。橋の橋脚の間から人が出入りすることができるほどのスペースが橋の下には設けられていて,上手側と下手側から床板に,8段の階段が架かっていました。

橋の上には木が生えていて,葉が生い茂っていました。千穐楽に座ったJ列あたりだとちょうど橋を上から見下ろすようになっていて,この葉っぱがちょうど橋との間に見え隠れして立体感が出ていました。

舞台上に何か大きな物が出来上がるとは聞いていましたが,まさかここまでとは。この瞬間,映像化はないと言われるこの作品を観に来て良かったと確信しました。

3.あらすじ

物語のあらすじは下記の通りです。

この世の万物には神が宿り
人々はその恩恵を授かり生きている

水の神に見放された都
父はただひたすら水の神に挑み、都を護ってきた
私はそれを誇り、唯々力になりたかった

水流の途絶えた橋が架かる村
父はただひたすら水の神に挑み、畑を作ってきた
私はそれを誇り、唯々助けになりたかった

渦巻く想いは巴となって
二人の少女は相見える

神をその身に宿して

( https://stage.corich.jp/stage/89471より引用)

五彩の神楽シリーズでは,あらすじの説明はまったくないまま,開演となっていましたが,今回は普段の壱劇屋さんファン以外の方も沢山いらっしゃっているということで,作・演出の竹村さんが開演前に冒頭の部分を少し解説してくださっていました。説明が終わり,最初のストーリーラインが頭で整理していると,水音が強くなり,会場の照明が暗くなって,いよいよ開演時間となりました。

物語としては,水の神に見放された都と村で,主とその娘である「トモエ」,父とその娘である「ともえ」の二つの家族が,水の神への祈りを捧げ,水を取り戻そうとする中で繋がり,そして重なり合っていく物語です。

ともえもトモエも父親のことを慕い,力になりたいと考えています。それぞれの父親は自分のやり方で何とか,水を取り戻そうとするわけですが,水の神はとても気まぐれで,信仰心を持たない人々に対しては冷淡な態度をとり続けます。

主はとうとう人柱という手段を用いて,水の神への忠誠を示そうとします。しかし,水の神からの回答は一時的な水流の復活のみ。やがて,人々は主の娘のトモエを人柱にせよと主に詰め寄ります。

そんな中,人柱となった人々に心を痛めていたトモエは橋脚の下で,追悼の意を示しているときに,ともえと出会います。すぐに打ち解けた二人。それを見ていた主に使える宰相,久沓はともえをトモエの身代わりにして人柱にしようと企てます。

水の神の気まぐれと,宰相の謀略に翻弄される二つの家族,果たしてこの都に水は戻ってくるのか,そして二人の娘は父親の力になれたのか…。この続きはいつかあるかもしれない再演で是非ご覧下さいませ。 

4.感想

  1.  NMB48のお二人をお招きすると言うことで,今までに定評のある作品で守りに入っても良さそうなものですが,壱劇屋さんは新作それも,今までにトライしたことのない技を沢山混ぜて挑んできました。ネタバレ回避しておいて良かったと心から思うほど、今までのシリーズとは違う新しさに満ちていました。攻めの姿勢を崩さない,そんなところが私は大好きです。
  2.  NMB48の久代さんと谷川さん,アイドルという世界で戦っているお二人。本職ではないから仕方ないと言う言葉が全く必要ないほど,安定してそして安心して楽しめただけでなく,お二人の表現力の豊かさ ,立ち回りのキレの良さをすっかり楽しんでいました。稽古期間も限られている中,あれほどの作品を仕上げてくるお二人にただただ感服致します。普段の公演とかCDも時間を見つけて試聴して観たいなと思うほどでした。
  3. セットは大がかりですが,最小限の道具と世界で表現する壱劇屋さんの魅力もふんだんに出ていました。特に半透明のビニールシートを使って,人力で水のCGを表現するあたりは,素直に舞台セットやCGで表現した方が簡単だろうとも思えるのですが,そこを敢えて挑んでくる壱劇屋さんは流石です。
  4. もちろん人力で表現しているからこそ,人が半透明のシートから見え隠れするところとか,不規則な水の流れが効果的に表現できています。そして攻撃の際に水の神が繰り出す,水流も非常に分かりやすく表現されていたと感じました。特にラストで二人がそれぞれ分かれて戦うシーンは,半透明のビニールで区切られているだけなのに,リアルな壁に見えてきて,それがくるくると回転しながら二人の戦いを切り替えて魅せてくれます。あのシーンだけ10回ぐらいリピートで観たいくらいです。
  5. そして恒例となったABCホール全体を揺るがす重低音の音響は,これぞ生で見ているからこその魅力です。もちろんスピーディーな殺陣から目が離せないのですが,音響とともに繰り出されるアクションに全く飽きることなく85分の時間を過ごしていました。
  6. 個人的には照明も今回とても好きでした。特に水の流れるときに使われる白い照明は非常に印象的でした。衣装の見事さを含めて,ライブを遠征で観に来たことは正解だと確信しました。
  7. キャストさんが通し稽古の後,感涙していたと聞いていて,どんな話かなと思ったのですが,私も結局感涙していました。最後は二人が日常へ戻れるように父親が道化を演じた所,もちろん二人の娘は途中で気がついたのでしょうが,それでも戦わなければいけないという辛さ,そこで涙がこみ上げてきました。
  8. 壱劇屋さんを初めて観る方が喜んでくれているTweetを観て,関係者でもないのに嬉しくなっている自分がいました。

もちろん再演して欲しいなと思う作品ですが,再演が叶わなくても「りなっちー!」とか声を上げながらみんなで盛り上がれる,発声可能上映会を是非とも開催して頂ければ嬉しいです。正直,日帰り新幹線の遠征はわりと体力を削られるのですが,そんなことが気にならない位,観に行って良かったという気持ちに満ちた日曜日でした。壱劇屋さんの皆さん,ありがとうございました。

stage.corich.jp 

5.おまけ

ということで西分さんの写真がお手元にないようなので,普段は載せないのですが戸笈眼さんの写真(ブレブレですが)をUPしておきたいと思います。

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*1:久代さんと谷川さんのミニ幟はファンの方に行き渡って欲しいので,あえて購入しておりません。あしからず。