【観劇ログ】アガリスクエンターテイメント第25回公演「卒業式、実行」
どうも。イマイです。
卒業式の季節が近づいて参りまして,本業のお仕事でもそれ関連の動きが増えて参りました。ともあれ学生さんにとって一番良い形でありますように。と,思わず本業ブログのような書き出しをしてしまいましたが,趣味ブログは趣味ブログらしく,今日も観劇ログを書いて参りたいと思います。
本日伺ったのは,昨年8月に壱劇屋さんきっかけで伺った新宿コントレックスの主催団体であるAga-risk Entertainment(アガリスクエンターテイメント)*1さんです。
【観劇ログ代替】アガリスクエンターテイメントPresents 新宿コントレックスVol.17 - リブラリウスと趣味の記録
直後の9月公演には伺えなかったのですが,今回たまたまチャンスがありました。ということで,本日は新宿御苑のサンモールスタジオまでやって参りました。アガリスクエンターテイメント初観劇です。
(トップページからご覧の方は,「続きを読む」をタップしてください)
1.開演前
受付を済ませて,会場の片隅にあるフライヤーケースから壱劇屋さんの4月公演のフライヤーをゲットしました*2。
さて,上の写真でもちらっと見えていますが,今回の舞台では受付時にチケット,整理券とともに,もう一つアイテムが渡されます。
それがこちら。
まさかの卒業式プログラムです。しかも2つ折りで,微妙に薄い黄色の紙のモノクロコピーで作られた手作り感満載の式次第です。表紙をめくって最初のページがプログラム,2ページ目が合唱曲の歌詞,最終ページには校歌の歌詞が掲載され,これから目の前で本物の卒業式が始まってもビックリしないクラスのプログラムです。
そして開場時間が過ぎ,客席に入ると,客席の左右は紅白幕が吊られており,卒業式が行われている体育館の雰囲気が漂っています。
舞台上を見ると,様々な舞台装置が目に飛び込んできます。
- 下手側に机とイス二脚、真ん中に演台、上手側に司会席がおかれています。
- 舞台後方に黒い布に囲われた何かがおかれています(これは美術部が描いた絵でした)。
- 下手端と上手一部の後方には,学校でよく見られる等間隔に穴が空いた防音パネルが吊り下げられていています。
- 上手後ろには赤い垂れ幕三つ,その広報にはハンドルが2つセットされています。
そう,そこは体育館かホールの舞台裏といって差し支えない空間が広がっていたのです。最近シンプルなセット組みの舞台を多く見ていたので,装置の一つ一つを見ながら,ニヤニヤしている自分がそこに居ました。私はファンタジーと学校ものがとても好きなので(←どんどん追加されていく気がする),卒業式が題材ということもワクワクを増幅する材料となっていました。
さて,客席で荷物を整理しようと思うと,バインダーとボールペンが置かれています。全ての客席にアンケートが書きやすいようにバインダーが置かれているというのは,なかなか無く,素晴らしい配慮だと思いました。
ところで,このバインダーにはフライヤーとともに,先ほど見たばかりのアイテムが何故か挟まれていました。
先ほどもらった黄色のプログラムではなく,ピンク色のプログラム。プログラムが2枚あるのはどうしてなのか,印刷ミスで差し替えたのかな,いやそれだったら受付時には配らないだろうと,はてなが頭に浮かぶ中,作・演出の冨坂さんによる開演前の注意事項説明が始まります。
軽妙な語り口でいわゆる「あたりまえ関係注意事項」が語られた後,こちらのプログラムが2つある理由が説明されました。この2つが存在することは間違いではないこと,そしてこの2つには違いがあること,開演すると客席が暗くなるので今のうちに確認しておくことなどが指摘されました。
早速2つを見比べてみると,あー,教育関係ならば一度は見たことのある,あの揉め事に繋がる,あの文字列があるかないかが両者の違いでした。結構微妙なラインを付いてくるなーと,他人事ながら余計な心配をしてみたりします。
そんなこんなしている内に,客席後ろのカーテンが閉じられ,開演時間となりました。千穐楽は終わっていますが,再演決定などでうっかり観劇前にこのブログを見た方のために,ネタバレ防止の改行を連打しておきます。
2.あらすじ
今回のあらすじは下記の通りです。
3月8日朝、卒業式実行委員長・榎並夕起は頭を抱えていた。
自主自律を重んじ、卒業式の企画・運営も生徒が主体となって行ってきた国府台高校に、突如降ってきた「卒業式での国旗掲揚・国歌斉唱問題」。
職務命令のために実施しなければならない教員側と、自治のために反対する生徒側。政治思想も巻き込んで、校内世論は真っ二つ。解決のための協議も決裂。
どちらのプログラムで式を執り行うのか、決まらないまま式当日を迎えてしまったのだ。校門前には街宣車。火花を散らす生徒と教師。介入してくる保護者にOB。
果たして卒業式実行委員は無事に式を遂行することができるのか!?
委員長は憧れの先輩の卒業式を成功させることができるのか!?ーーーそして、開式の時間がやってきた。
( https://stage.corich.jp/stage/87017 より引用)
開演すると舞台上では卒業式当日のシーンが現れます。卒業式実行委員会(通称「卒実」)の委員長である榎波が,校長と生徒会長の熊谷を前に,あと30分で始まる卒業式の段取りを確認しています。30分前であれば当然のごとく最終確認であって,揉め事はあってはならないはずなのですが,ステージ正面に何を飾るかで校長と熊谷の意見は平行線をたどっていました。
国旗を掲揚しようとする校長,生徒会の総意として美術部の描いた絵を飾ろうとする熊谷,二人のいざこざは永遠に続くと思われるほどに妥協を全く見せず,榎波は強引に「美術部の絵または国旗のいずれか」を掲示することにして,段取り確認を進めていきます。
式次第に基づいて段取りを確認するはずですが,校長が黄色,熊谷はピンク色のプログラムを持っていて,何か様子が変です。1番目「卒業生入場」,2番目「開式の辞」,3番目「国歌斉唱」…。
「あ,違いますねー」と発したのは熊谷。何と熊谷の式次第では国歌斉唱が削られていたのでした。そう黄色は校長案,ピンクは生徒会案となっていて,2種類のプログラムが会場では配られていたのです。
生徒会で決めた卒業式実施計画の墨守を譲らない熊谷と,教育委員会の視察が来ている以上国旗掲揚・国歌斉唱の立場を譲らない校長,この2人のいがみ合いは歩み寄るどころか,ゼロから全く動かないという状況が続きます。司会を務める星,津和野は半ば呆れかえっています。
この残り時間が限られている状況にもかかわらず,ステージ裏には次から次へと来客が訪れます。
- どことなく勘の鈍そうな「卒実」の先輩で今年卒業する甲田
- ミュージシャンのプロ意識みなぎる吹奏楽部の淺越
- 校長側に付く英語科教員の鹿島
- 式次第を書き上げる度に変更が加わって書き直しになる国語科教員の持田
- 3年生が引退して1人だけになった美術部員の沈
- 生徒会に一定の理解を示しつつ妥協案を提示しようとする社会教員の矢吹
- 国府田高校の大ベテランでありながらもっともらしいことを言って煙に巻くことは天才的な美術科教員の中田
- 左方面の運動にどっぷり浸かっている前年度PTA役員の前田
- 急遽祝辞を頼まれて慌てふためく現PTA副会長の山岡
- 突如乱入してきた10年前の卒業生で完全に部外者の斉藤
国旗,国家の話だけでもやっかいなのに,飾るはずの美術部の絵は真っ白で何も描けていないわ,校長と生徒会長は全く譲らないわ,それでいて大人はそれぞれに厄介ごとを持ち込んでくるわで,誰しもが逃げ出したくなるようなこんな状況下。それでも榎波は憧れの甲田先輩のために,何とか卒業式を成功させようと,頭をフル回転させていきます。
フル回転した先の結末は,ぜひDVDか劇場で確認して下さいませ。
3.感想
- 卒業式の打ち合わせでの小競り合いから始まって,徹頭徹尾,急スピードで繰り出される言葉と言葉の応酬に,腹の底から大笑いをしていました。こんなに笑ったの今年初めてかもと言うくらいに笑っていました。
- あらすじだけ書くと,深刻で救いのない会話劇のように見えるのですが,主人公榎波の決して折れない前向きさと,人を陥れようとする悪人が誰も居ない分,ある種,安心して見ていられるところがあります(とはいえ,前田をめぐるシーンはそこだけ笑えない現実を突きつけられるのではありますが)。
- コメディなのですが,終わってから冷静に振り返ると,思わずマジレスしたくなる位,ファンタジーが現実に引き寄せられていた気がします。例えば,自主自立を訴えていて,生徒全員がまるで凄くハキハキと自主的にやっているように見えているのですが,肝心の美術部員は1人だけだし,生徒会の投票も舞台上に上がっているメンバー以外は大して関心がなさそうだしと,私の本務のお仕事でも強烈にあるあるなネタ満載でした。
- 美術部の先生のもったいぶって結局解決しないところとか、ああいう人いるよねと頷いてたら周りは爆笑してたので、これは奇妙なことなのだと気が付いて、ハッとした次第です。まあその後は遠慮なく笑ってましたが。
- もう1ステージみたいなと終演後に思うくらい,素晴らしい作品でした。スケジュールの都合で叶わなかったので,迷い無くDVD予約をしました。
初アガリスクエンターテイメントさんでしたが,大満足の作品でした。ぜひ次も観てみたいなと思いながら,帰途についた次第です。
追記:
ブログを書くために本作品の台本を読んでいたのですが,最終ページにスマートフォンで見る人向け,印刷後の最新版が見たい人向けに,PDFファイルが取り出せるQRコードが掲載されていました。ここまでしている劇団さんは私は初めてお目にかかりました。細かな配慮がとても嬉しい劇団さんです。