【観劇ログ】ChimoRoid第二回企画公演「物語はハッピーエンドにできている」
どうも。イマイです。
忘れたいことや,忘れたくないことが歳を経るごとに増え続けて困っております。
1.はじめに
さて,本日は出演者の堀木さなさんにお誘いを頂きまして,初めてのカンパニーさんを観劇しに中野HOPEまでやって参りました。中野ザ・ポケットで10数年前にキャラメルボックスの俳優教室の発表会を観に来て以来の,かなり久しぶりの中野での観劇であります。
劇場までのレンガ道を歩きながら,観劇前の気持ちを盛り上げておりました。
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2.開演前(主に舞台装置)
受付を済ませて,地下におりて劇場に入っていきます。客席に腰掛けて前を見ると,しっかりと作り込まれた舞台が目に飛び込んできます。
舞台下手の上側には桜の花が設えてありスポットライトが当たっています。そのさくらの木の下には三段の階段が置かれ,桜の木の前に手すりが付けられています。舞台中央を境目に,上手側はどこかの部屋の中が展開されています。上手側にはテーブルと二脚の応接いすが置かれ,その周りには小さな赤と白の花が棚板に置かれた2段の小さな棚や,ガラス窓がはめ込まれたドアがあります。服を掛けるスタンドに迷彩柄の服と帽子,上着が掛けてあります。その周りの壁には絵が4つかけられており,その壁に沿って作り付けの長いソファーが一つ置かれています。
作り込まれた舞台装置を見ると,それだけで何かワクワクしてくるのは私だけでしょうか。どんな物語が展開されるのだろうかを勝手に想像しながら,気がつくと開演時間となっていました。
さて,まだ千穐楽を迎えていない公演ですので,ネタバレ防止の改行連打をいたします。まだ未見の方はご注意くださいませ。
3.あらすじ
物語のあらすじはフライヤーによれば下記の通りです。
探偵事務所を構える,柊螢。その助手である深山那月と三園暁。
探偵といっても依頼はほとんどなく,猫探しや忘れ物を届けると行った雑務ばかり。そんな探偵事務所にある日,2人の依頼者が差し出し人不明の手紙を持ち,事務所を訪れる。手紙の内容はまったく同じ一文。
「私を探してください」
そんな手紙を手にした2人に依頼され,奇妙な差出人探しが始まる。
—私はあなたを見つけにきたの。
いいえ,私を見つけに来たの—
(当日フライヤーより引用)
4.物語序盤のストーリー
開演すると,舞台下手側から物語が始まります。桜の木の下に現れる1組の男女。仲が良さそうな2人,ひとりは那月,もうひとりは風間翔(ひろ)です。世界の美しさに思いを馳せる若さがキラキラ輝くようなシーンが展開されていきます。ひとしきり会話した後に,音楽とともに物語の登場人物が次々と現れます。それぞれが何か劇中のワンシーンを示唆するような動きをしていて,それが次々と舞台上に現れていきます。全キャストが顔見せをするオープニングシーンが目の前に現れています。
そして,舞台は上手側の部屋へと移ります。物語の主人公である深山那月が部屋に入ってきます。那月の祖父が守ってきた喫茶店を事務所代わりにした探偵事務所は,あらすじに書かれている通り,目立った依頼も無く,迷い猫の捜索が主な仕事となっています。
探偵事務所のメンバーはとても個性的で,主人である柊螢(けい)は絶対記憶の持ち主で一度覚えたことは忘れないという特技の持ち主。助手の2人,那月は行動力抜群ながら,時に突拍子もない行動を取る不思議キャラ,三園暁(あきら)はノリの軽さはあれどたった1枚の猫の写真から,地道な捜査で見事見つけ出す努力家という組み合わせです。
その探偵事務所にやってきた不思議な依頼人が,相田華怜(かれん)と相田翔大(しょうた)の兄妹です。二人「私を探してください」とだけ書かれた差出人不明の手紙を持参し,差出人探しをして欲しいと依頼します。身の上話を少々聞き出している間に,事務所にはもう一組の依頼人がやってきます。お嬢様の成瀬蘭とその使用人の永松です。この二人も何やら依頼があるようで,早く何とかして欲しいとねじ込んできます。
同時に二組を相手するのは難しいので,後ほど改めてという話が螢と永松の間で取り交わされようとしたとき,突如,那月が相田兄妹の手紙の文面を読み上げてしまいます。
「え?何で手紙の内容をあなたが知っているの?」
蘭と永松が持ってきた依頼も相田兄妹と全く同じ内容,全く同じ文面でした。
さて,探偵事務所に突如降ってきた2つの依頼。差出人は一週間後の報告会まで無事見つけることができるのでしょうか。螢が探偵事務所を開くきっかけになった,薪環(たまき)や,桜の木の下に白いガーベラを備え続ける謎の男性,風間駆(かける)。総勢11名のキャラを巻き込みつつ,いよいよ調査が始まります。
物語の結末は是非劇場でご確認ください。
5.感想
まとまった文章にならなかったので箇条書きでつらつらと。
- 物語序盤では,ドタバタ探偵物語の雰囲気があり,出しゃばりすぎる弟子と主人との慌ただしくも幸せそうな言葉のやりとりが印象に残っています。それが終盤になると,悲しくも優しい物語へと印象が変わっていって,後述するように涙なしでは見られない作品になっていました。
- テンポ良く早口で大量のセリフをやりとりするシーンがあります。私はこういうシーンはとても好きです。
- どのキャラも凄く印象的なキャラクターであって,フライヤーを見ながら全てのキャストさんの演じた役がどんな役だったかをそれぞれ思い出せるほど,それぞれに見せ所のある作品だったと思います。例えば,翔大が序盤でみせる話し手の方をきょろきょろと見る挙動不審っぷりとか,暁の見せる軽さの仲に見える誠実さとか,蘭の見せるせっかちっぷり,環の異常に身のこなしの良いお茶入れなどが印象に残っています。
- 柊と風間のやりとりで明かされる真相では,なぜか涙が止まりませんでした。それまでにおかしいと思えるパーツはあれども,それでも健気で元気そうに振る舞っているあのキャラクターが,予想以上に抱えているものが大きかったこと,そして二度と取り戻すことが叶わないものであったことに対する儚さが,涙腺を強く刺激したのかも知れません。それほどまでに主人公の深山那月は魅力的なキャラクターで,感情移入できるキャラクターでした。
- お誘い頂いた堀木さん演じる「過去の那月」のピュアな感じ*1が,物語終盤で明かされる真相へと繋がっていて,なるほどと思いました。あのシーンがピュアな感じで描かれれば描かれるほど,哀しく見えるのだなと思います。
- 赤いガーベラが1本,喫茶店の棚に飾ってあったのですが,まさか終盤のガーベラの花束に繋がっているとは思いもしませんでした。これだけでなくかなりの伏線が物語上に仕込まれていて,2回目をもしみられるのであれば,もう一度この辺を確認しながら観て見たいなと思える作品でした。
- 上で思い出しながら書いてビックリしたんですが,蘭は最初のシーンでもう差出人に繋がる答えを言っているんです。「何であなたが手紙の内容をしっているの?」って。もちろん意味合いは違うのですが,考えてみれば那月は知ってて当然ですよね…。
- 考えてみれば,あの物語には誰も悪人がいないのですよね…。涙が出る辛い現実がある作品だったのですが,観終わったあと心地よい感覚が残っていたのも,そんなことが影響していたのかも知れません。
というわけで,急遽お誘い頂いた舞台だったのですが,心地よい時間を過ごすことが叶いました。お誘い頂いた堀木さん,どうもありがとうございました。