【観劇ログ】gekiGeki 2nd「1000年の恋」プレ公演「初めまして、劇団「劇団」です。」
どうも。イマイです。
仕事柄,初めましてという挨拶は新年度恒例の挨拶となっております。とても大切な挨拶だなと痛感する次第です。
さて本日は,前々から楽しみにしていた劇団「劇団」さん(通称ゲキゲキさん)の東京公演に先駆けるプレ公演,gekiGeki2nd「1000年の恋」プレ公演「初めまして、劇団「劇団」です。」にやってまいりました。
会場はこのブログでは常連の劇場,シアターグリーンBASE THEATERさんです。
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1.開演前まで
晴天かつ熱量の高い劇場前。BASE THEATERの前は本日も上記の看板が出迎えてくれます。開場少し前に到着すると,劇場前では既に数人の方が列を作っています。
今回の制作はゲキゲキさんに縁のあるキャストさんやスタッフの方が多く入っていらっしゃいまして,9月の1000年の恋に出演される栗田ゆうきさんや,5月のLARPsで拝見した姜愛淑さんなどが出迎えて下さいました。暑い中待っている皆さんに「暑い中ですが,もう少しお待ちください」などのお声がけもバッチリな感じで,テンションが上がってきます。
そういえば,今回の公演はお試し価格とのことで,前売りだろうが当日だろうが衝撃のワンプライス1500円となっています。その上高校生以下は無料。30分のお芝居×3セットが見られるので,1本あたり500円。そして3本の間には2本の小芝居が入っているので,もう何だかもっと払いますよと思わず申し上げてしまいたくなる位の親切価格であります。普段チケットの値段は気にせずじゃんじゃんつぎ込むタイプですが,今回は思わず特筆したくなる位の衝撃がありました*1。
BASE THEATERに入ると,舞台上は後方の段が高くなっていて,3つの段からなる階段が中央から延びているシンプルなセット組です。
開演10分前ほどになると,キャストさんが2名前説で出てきます。私は土曜日の3パターンを拝見したのですが,藤原さんと中路さん,松田さんとアーゴイル*2さいとうさん+エアーポンプマン,小西さんと古川さん+藤原さんでした。およそ男性キャストがペアで出てくる組み合わせとなっているようです。
伝えるべき情報はそれぞれのキャストさんで共通なのですが,後半部分で触れる今回の短編作品の見所は微妙にキャストさんごとに異なっていまして,どの方の紹介も魅力的に聞こえてくるのですが,個人的には小西さんの紹介が脚本家ということもあって,一番熱いものを感じました。
前説が終了すると,このプレ公演の宣伝Tweetで流れているこのBGMが繰り返し流れてきます。あるポイントで音量が大きくなり,舞台上が暗くなり,いよいよプレ公演が始まります。
【ゲキゲキ役者紹介動画⑥】
— ゲキゲキstaff (@gekiGeki_staff) 2017年7月13日
◼︎古川剛充(ふるかわよしみつ)
我らがリーダー!我らが座長!役者としても抜群のエンタメ系俳優!
出演…『エアーポンプマン』『天国プロデュース‼︎』
《@Yoshimitsu_0107 予約窓口》https://t.co/PsurIgyyOK pic.twitter.com/ZBWyvzNBcB
さて,千穐楽前と言うこともありますので,ネタバレ防止の改行連打を行います。
2.公演概要とあらすじ
今回の公演の概要は下記の通りです。
関西を拠点に活動を続ける劇団『劇団』。 通称ゲキゲキ初の東京公演、 gekiGeki 2nd『1000年の恋』(特設SITEはコチラ) この作品を観てもらうために、やれる事は何でもやろう!
"ゲキゲキは面白いんだ"
とにかく、それを分かって欲しくて決めました! チケット一律1500円、高校生以下は無料! 満席になっても赤字決定!それでもいいから楽しんでほしい!
一人でも、二人でも、観劇が初めての方も安心!
全ての方へ自信を持ってお届けするエンターテイメント! ゲキゲキが誇る珠玉の短編3作品!( https://www.geki-geki.com/pre-site より引用)
舞台が明るくなると,舞台上はゲキゲキのメンバーがそれぞれ異なったポーズで静止しています。そこへ登場するのはこのプレ公演限りの舞台上へ登場することとなったゲキゲキの脚本家,小西透太さん。普段舞台上には登場することのない座付きの脚本家さんが発した言葉,それはよどみなくスピードに乗って語られるプレ公演の前口上でした。溢れる思いが詰まった前口上を聞きながら,この公演に対する皆さんの本気を感じていました。
そして,音楽とともにひとりずつダンスで動き始めるキャストさん。オープニングシーンの始まりです*3。
普通,オムニバスというといきなり1本目から始めても問題ないのかも知れませんが,このオープニングシーンが入ることで,おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさやワクワクを呼び起こしてくれ,初見の時はとても安心したのを覚えています。
オープニングが終わると,いよいよ1本目が始まります。それぞれオムニバスなので,中盤までの簡単なあらすじをちょっとだけ記載してみます*4。
「エアーポンプマン」
真っ暗な中,舞台上にかかるのはショッピングセンターの案内アナウンスがかかります。
「ただいまより屋上広場にて,エアーポンプマンショー第2部が始まります」
進行役の女性,シズナが登場し,台本を片手にエアーポンプマンショーの物語を語り始めます。逃げ惑う姫君。行き止まりの壁に追い詰められ,そこに迫る大魔王,姫君の身に危機が。頼みの綱であるエアーポンプマンは大魔王のギガファイヤーの炎で既に倒れている。しかし,そこでシズナが叫びます。
「みんな!もう一度信じて,一緒にエアーポンプマンを呼ぶよ!」
そう。ヒーローショーならお馴染みのこのセリフ。みんなが待っていたこのセリフ。
「せーのっ,エアーポンプマーン!」
そこに登場するは,みんなが待っていたあのヒーロー,エアーポンプマンなのでありました。舞踏会のフェイスマスクを付け,両肩にはエアーポンプ,赤いタイツに身を包んだ我らがヒーロー,エアーポンプマンが復活したのでありました。
何とギガファイヤーの攻撃は,しゃがむことで避けた*5模様,エアーポンプマンの活躍で無事姫君は救い出され,エアーポンプマンの正体であるお城の護衛隊長ゴローさんは姫君と無事結ばれたのでした。めでたしめでたし。次回のショーは午後三時から,またねっ!
かと思いきや,ショーの楽屋にシーンは変わり,エアーポンプマンを演じたマサヨシと,大魔王を演じたハルイチの間でなにやらいざこざが起きます。そこにマサヨシの恋人で姫君を演じたトモミと,進行役のシズナが入ってきて,騒ぎがなんだか大きくなって…。
「先端恐怖症の恋人」←(タイトルは明示されていないので仮にこう呼びます)
町で見かけた女性の部屋のドアを叩こうとする男性,なぜか顎が異様にしゃくれている大柄のこの男性がドアを開けようとした瞬間,謎の男性が近寄ってきて静止します。「今,そのドアを開けてはいけない」ドア前で展開する2人の男性は,なぜドアを開けられないのか。そこにはDNAレベルで二人と女性を苦しめるある悲しい事実があって…。
「バカと天才」
舞台中央でスポットを浴びる研究者,コバヤシ。
「人間誰しも,表の顔と裏の顔がある。表といえど多面的で掴み所がなく,裏は加えて見えにくい。人間心理の層は最早,宇宙のように未知なのだ。しかし…,…言葉はそれをねじ伏せる。人間をいとも簡単にカテゴライズする。」
そして,舞台後方に登場する,弁護士の三宅,主婦の羽賀,フリーターの田中(ジェイク),大学生の吉澤の4名。この4名は10万円のギャラで集められた心理検証実験を受けるために簡素な部屋へと通されています。
4名が受ける心理実験は,単純明快。1時間で4人を1名のバカと3名の天才に分類せよ。たったこれだけのことなのに,お互い全く初対面にもかかわらず,4名はとたんに言い争い始めます。学歴,プライド,信念,感情,そういったものが入り交じりながら,いったいバカは誰なのか,何を持ってバカというのか,そしてそもそも分類すること自体に意味があるのか,そしてこの心理実験の本当の目的とは…。
残り時間はあとわずか,分類の果てに4人が見る真実とは。チャンネルはそのまま。
「スリル」←(タイトルは明示されていないので仮にこう呼びます)
川のほとりで,石を投げる男がひとり。川の上で撥ねる石を見つめながら,男はあの撥ねる石はどこまで飛んでいけるのだろうと考えます。繰り返し繰り返し何度でも何度でも男は投げる,いつかフレーズが完成するその日まで。
「天国プロデュース!!」
ここはオリバーホテルの結婚式場。超人気ウェディングプランナーの間倉と富士が迎えるは,守井と綾花のカップル。完璧な演出をプレゼンする間倉たちに,守井と綾花はすっかりもり上がってオリバーホテルに結婚式場を決定します。
高額なプレゼンを無事終えた間倉,しかしポケットにはある書類が入れられていて,出そうかどうかを悩んでいます。そんなとき,オフィスにいる間倉の脳裏には,なぜかあの曲が繰り返し流れていて,しきりに飲みに行くよう促しています。しかたなく富士と飲みに出かけた間倉はまさかの交通事故で入院。意識不明の重体に。
気がつけば,なんだか白い世界。なぜか守護天使ルミルと大天使がその場にいて,申しわけなさそうに立っています。交通事故に遭ったことを大天使に告げられた間倉。
「私…死んだんですか…」
「(けろっと)そうです!」
ちょっと待て,そんな簡単に言われたって心の整理が付かないぞ,っていうか何だそのBGMは。間倉がツッコミを入れながら分かったことはたった二つ。守護天使のルミルに人間を幸せに導くための「演出」を教えてほしいこと,そしてルミルの担当である富士を幸せにできたら生き返れるということ。
早速富士を幸せにしようと,試行錯誤を始めるのですが,この富士が思った以上にどんくさいようで…。
こんな感じで,軽やかに概要が思い出せるほど,楽しい楽しい思いのまま,あっという間の115分が過ぎていきました。
3.感想
ゲキゲキさんはLARPsから拝見したばかりですが,3本+2本の中にゲキゲキさんの魅力が余すところなく,詰め込まれたおもちゃ箱のような作品群でした。振り幅もコメディからシリアスまで様々で,後述するようにオオッと思うシーンが次々に登場する楽しさがあります。
これは意見が分かれるところだと思うのですが,私はこのオムニバスはまさにこの順番であることが重要だと感じています。1本目の「エアーポンプマン」から「先端恐怖症の彼女」(仮題)から続く2本目の「バカと天才」の前半までがゲラゲラと笑える芝居だったかと思いきや,「バカと天才」の中盤から急速に雰囲気が変わり,緊張感が高まった後,「スリル」(仮題)で温かい空気に戻り,「天国プロデュース!!」でホッコリして帰ることができるようになっていました。
敷居が低く肩の力を抜いて見られるのにもかかわらず,そこまでにきちんと計算された構成が組まれていました。キャストさん全体に目の力や,表情が豊かな方ばかりで,照明や音響とあいまって,1500円だからといって手を抜くことのない本気がそこにあった気がします。
4.キャストさんひとこと紹介
興が乗ったので,そのままキャストさん紹介に行ってみます。
- エアーポンプマンではマサヨシ役,天国プロデュース!!では大天使役の古川剛充さん。小芝居の「スリル」(仮題)も含め縦横無尽の大活躍。情けない顔と立ち直った後の見栄切りのギャップは流石です。小芝居の方では,3回ともセリフを絶妙に変えてきていてそのたびに爆笑しておりました。
- エアーポンプマンではハルイチ役,バカと天才では三宅託郎役の中路輝さん。不器用だけれど思いは誰にも負けない役,そして粗暴で愚かな役のどちらでもこなす方です。エアーポンプマンはコメディですが,冒頭の大魔王の登場シーンはちゃんと決まっていますし,実はハルイチのラストシーンも結構カッコ良いのです。
- バカと天才では羽賀綴役,天国プロデュース!!では間倉カナミ役の植木歩生子さん。酸いも甘いも噛み分けたベテランから,真っ直ぐで純粋なキャラクターまで,表情豊かに演じ分ける方です。天国プロデュース!!の演出シーンは本当に楽しそうで,天職だということが的確に伝わってきました。そしてあんなわずかな30分の間なのに,天国プロデュース!!の最後では今にも泣きそうな表情になっているのは流石だと思います。
- バカと天才ではジェイク<田中芳夫>役の松田悠さん。ゲキゲキの紹介ビデオがネタふりではないかと思うほどに,天狗になったアーティストのジェイクの粗暴さと危うさがピッタリ当てはまる方でした。「バカと天才」の前半と後半のキャラの変わりっぷりはLARPsの気弱な青年を想起させました。
- エアーポンプマンではシズナ役,バカと天才ではコバヤシ役の中村千奈美さん。表情の豊かさと的確なセリフ運びには要注目の方です。エアーポンプマンの時,中村さんの表情や目の使い方が絶妙なツッコミとなっていて,エアーポンプマンの3度の観劇の内,1回客席の位置関係で中村さんの表情が見えなかったときにはクスッと笑えなかったシーンがあったくらい,重要な演技だったと思います。その一方でバカと天才では,迫力も兼ね備えていて狂気へとスイッチが切り替わるあたりは空気を一変させる勢いがありました。
- 天国プロデュース!!では富士則人役のさいとうひろきさん。小芝居では顎ネタをふんだんに使った一方,天国プロデュース!!では顎ネタを封印して,純朴なカナミを慕うアシスタントに徹していた方でした。その豊かにツッコミどころを兼ね備えた分,飛び道具的に使われることの多い方ですが,声が渋い方なので,このまま熱っぽく演じるヒーローとかも拝見してみたいなと思いました。
- バカと天才では吉澤麗奈役,天国プロデュース!!ではルミル役の小村七海さん。可愛らしく真っ直ぐな台詞回しと,危険を察知したときの叫び声の強さは必見の方です。今回は2作とも相手を手玉に取ろうとしているしたたかさを持った女性でして,天国プロデュース!!に流れる天真爛漫な空気はルミルあっての空気なのだと確信しております。
- エアーポンプマンではトモミ役,天国プロデュース!!では綾花役の久保真優さん。小村さんとはまた異なる真っ直ぐさと,お淑やかな雰囲気を併せ持った方です。エアーポンプマンでは劇団を一緒に旗揚げしたこともあって,襲い来るアドリブ演技も左から右へと難なく流していて,あの中でラスボスはまさにトモミだったと力強く主張したい今日この頃です。
- 天国プロデュース!!では守井敬太役の小西透太さん。ゲキゲキの印象に残るあの台詞を編み出す方はどんな方だろうと思っていたら,とても熱い思いを持った真剣な方でした。やはり,オープニングでの前口上でよどみなく挨拶をした際に感じた「ゲキゲキが大好きです,観てください!」という感じがとても嬉しく,その思いが分かっただけでも今回の公演に来て良かったと思いました。
- 今回はご出演されていませんでしたが,土曜日には前説を含めちょこちょこ出演されていた藤原祐史さん。出演されないにもかかわらず,ちょこちょこ出演されるのは,カンパニーの中がとても良い雰囲気なのだろうなと感じております。ところで土曜日夜の回で,ひと言も発さず,後ろに立っていたのは何だったのか,だれかお答えを…。
5.おわりに
こんな感じで,ゲキゲキさんの魅力が沢山詰まった入門編でした。さて,もしこのブログの文章でゲキゲキさんを観てみたいと思った方は,ぜひ1000年の恋をご覧になってみてください。今回示された様々なエッセンスがちりばめられた,きっと素敵な公演になること間違いなしです。また9月にゲキゲキさんは池袋へとやってきます!
というわけで,暑さの中に熱さを含んだ池袋より観劇ログをお届けいたしました。ではでは。