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リブラリウスと趣味の記録

観劇とかパフォーマンスとかの鑑賞記録を淡々と。本務の仕事とか研究にご興味ある方は本家ブログまで( http://librarius.hatenablog.com/ )

【観劇ログ】劇想からまわりえっちゃん第よんじゅうからまわり『溶けて解せない』

どうも。イマイです。

どんなに辛くても,心から楽しんで笑うと元気が出ます。

本日はお誘いいただき,劇想からまわりえっちゃんさんの舞台を見に来ました。前々から他の劇団さんのアフタートークなどで名前がでてくる劇団さんで一度観てみたいなと思っていたところ,同じく色々観劇をされている方に誘っていただいた次第です*1

さてさて,本日は東京・王子のはなまる学習会王子小劇場にやってまいりました。

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お誘いいただいたときにはなるべく事前情報を入れず,新鮮な驚きとか心の動きを味わいたいタイプの人間ですが,ちらちらと目に入ってきた前評判を拝見していると,ギャグ満載とか,ものすごい勢いなどの言葉が飛び交っていました。私個人は笑いを入れるのは大賛成,大好物です。もちろんそうでない舞台も大好きです。プロレスでたとえるならばストロングスタイルも好きですし,コミックマッチも両方好きです(←たとえが分かりにくい)。

たぶん楽しい舞台になるのだろうな,でもどんな感じの笑いなのだろう,自分の好みと違ってクスリともできなかったらどうしようと考えつつ,13時の開演を待ちました。舞台は素組みの舞台ですが,青い照明が天井から2本下がっていて美しく舞台上を照らしています。

開演時間が過ぎてしばらくすると,舞台上に役者さんが登場。舞台を楽しむ掟を5つ説明し始めます。

さて,千穐楽前ということもありますので,この辺からネタバレ防止の改行を連打したいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞台を楽しむ5つの掟とは,飲食禁止,携帯電話は音の鳴らない状態にするなどの劇場であればどこの劇場でも繰り返される恒例のマナー説明でした。ところがからまわりえっちゃんの面白いところはそこからでして,こんな説明が行われます。「からまわりえっちゃんはみんなシャイです。全力でストーリーを進めますが,全力でギャグが邪魔します。ギャグに気を取られすぎて本編を見失わないようにお気をつけ下さい。」

何かがおかしい。何かが可笑しい。何かがridiculous*2

このあたりから何かやらかしてくれる雰囲気や期待感が高まって参りました。専門家に説明していただきましょうと登場してきたのが,シャー大佐でしたし。シャーって何,ネコに威嚇されている感じ?とか,脳内ツッコミをしているうちに舞台が開演しました。

物語のあらすじは下記の通りです。

故人曰く、成人式というしきたりでは
僕たちは国から洗礼を受け、
東京スカイツリーの割引券をもらうという
通説があったそうな。

すずさん!教えてくれ。
ゼロシステムは教えてくれないから。

僕の、基準を。
https://stage.corich.jp/stage/80515 から引用)

舞台上に現れるのは,心は子供で年齢は28歳の人物たち。ガンダム好きのガンちゃん,体育会系のフォルム南金剛寺豪慈,オカルトが得意技の男市*3の3名です。桃鉄をやりながら,愛玩動物をかわいがり,くだぎつねのヘミングウェイの格言を聞いたりと,冒頭からひたすら忙しく,慌ただしい場面が続きます。

ただ混乱しているシーンのように見えますが,どのキャラも個性たっぷりに全力で表現活動が行われているので,多少のセリフが聞き取れなくてもキャラの背景が伝わってきます。むしろ心地よいくらいです。男だらけのギャグ満載のシーンに割って入るのは,清く正しくがモットーの委員長の女の子28歳。口癖は「掟」です。そう,冒頭の前説がそのままこのシーンへと繋がっています。掟をひたすらに振りかざす委員長と全く聞いていない3人組。委員長はそれに対して怒り出すこともなく,気がついたら桃鉄を普通にやるくらいの仲良しでした。

…とまあこんな感じで,まともな人間はどこにもいないのかと思うほどに良い意味で個性的,悪い意味で残念な方々が続々と出てきます。でも,どのキャラも突き抜けた残念さが故に,いらだたしさよりも不思議と愛着が沸いてくるような魅力的なキャラだったりします。

魅力的なキャラが繰り出すギャグに気を取られすぎないよう気をつけながら,本筋を追っていくと,そこには「大人」になるための「芽生え」をめぐるせめぎ合いや葛藤が出てきます。この物語に引き込まれるきっかけは,人によってあちこちあるかと思うのですが,私の場合はゴージと弟が最初にやり取りするシーンからでした。

特にゴージの次のセリフがとても印象に残っています。

さては刃牙SAGA編を読んだんだな?!
あれは子供禁止だから某はまだ読んでないってのにおまえそれに影響され点だろ?ちょっとでよいから内容を教えてくれよお

この結婚をめぐる大切なシーンにもかかわらず(もちろん照れもあるかと思うのですが),子供の考えの範疇で収めようとするこのセリフは,弟とゴージの間の大人と子供の決定的な違いを表している感じがします。このあたりから,私は物語に引き込まれていきました。

この後もウォーカー,ママ,エリコ,クエス,長官,美容師,マスターパイパー,知事と様々なキャラが登場してきます。全てのキャラが1つ以上のギャグか,明らかにツッコミ待ちのシーンを放り込んできて,そのどのアクションも良いタイミングで切れよく放り込まれてくるので,こちらも遠慮なく爆笑することができます。爆笑しているうちに,ヒーローや悪役といった役割が全員に割り振られているはずなのに,どのキャラも憎めない愛らしいキャラになっているのだから不思議です。たとえそれが1シーンのみ登場する月(ムーンティアラを発生)であっても。

大人になる基準とは何なのか,大人になりたくない子供はどうすればよいのか,大人には何のためになるのか,荒唐無稽なギャグのトッピングに彩られた下地のアイスクリームにはビターなメッセージがたっぷり含まれていました。

こうしたメッセージをもし笑いなしに見てしまったとしたら,どこにでもありそうな普通の話になるのかも知れませんが,それを子供の目線でやり取りされるギャグを余すことなく詰め込んだおかげで,ギャグからシリアスへの落差が生まれて,子供から大人へと一線を飛び越えたときの衝撃やその重さがより強く伝わってくる気がしました(ただの錯覚かも知れませんけれども。)。

とはいえ,終始重い雰囲気は全くなく,全力で舞台上の全員が面白がっているままにクライマックスに突入し,まさかの感動的なシーンにすら皆さんは徹底して笑いを突っ込んできます。そこまで楽しませようとする皆さんが,もう大好きです。いつの間にか落ち込んでいた気持ちや体調の悪さはどこかへ綺麗にすっ飛んでしまいまして,忘れかけていたポジティヴな気持ちがむくむくとわいてきました。

一見するとくだらないことかも知れない細かいネタ振りまで,躊躇無く最後までやりきるみなさんの凄さがとてもカッコよく見えました。全てを遠慮せずやりきる演者さんの思い切りの良さや、時折挟まれるダンスや見栄切りの格好良さは魅力的なのです。

お誘いいただいたからリップサービスで良く書こうとか,行きの電車で軽くよぎったのですが,そんなリップサービスなどは全くいらないくらい楽しく愉快な105分間でした。終演後の物販で脚本が飛ぶように売れていましたが,買い求めたくなる気持ちはよく分かります。私も気がついたらサントラCDとかDVDや脚本を買い求めていたくらいですから。

終演後のアフターイベントも,新作脚本の稽古を行うというイベントで,からまわりえっちゃんの稽古を披露するイベントでした。予想通りというか,予想以上に,演者の皆さん達が本気で楽しみながら,面白い作品を作ろうとしているのが伝わってきました。そしてひょっとすると無茶振り?とも思える難オーダーを軽々とこなしている演者さんたちのすごさが垣間見えました。

お誘いいただいた方と終わったあと,そのまま場所を変えて雑談をする事なく,『溶けて解せない』の感想をやり取りしました。全員が何かにとりつかれたかのようなハイテンションで語り続けられる題材というのもなかなか出会えないものです。

色々書いてきましたが,全力で楽しんでもらおうとする皆さんと,それを全力で楽しむ客席との相乗効果をまた目撃したいと強く思いました。何もお誘いがなくても,からまわりえっちゃんの次回公演は自分一人で行ってみようと思えるくらい,それくらいに嬉しい時間でした。今回お誘いいただけたことに深く感謝申しあげます。

あー楽しかった。こんな日が1年に何回かあれば,どんな辛いことでも打ち破っていけそうです。

stage.corich.jp

*1:よって,アンケートのきっかけ欄は「その他→口コミ」でした。

*2:英語で可笑しいと言う意味だそうです。TnxATOK

*3:台本を見返して男1でなかったことに驚愕しています…。