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リブラリウスと趣味の記録

観劇とかパフォーマンスとかの鑑賞記録を淡々と。本務の仕事とか研究にご興味ある方は本家ブログまで( http://librarius.hatenablog.com/ )

【観劇ログ】ジョーカーハウス「オズの魔法使い」

どうも。イマイです。

昨日に続き,本日も観劇に伺います。今回は旗揚げ以来,継続して拝見し続けることができているジョーカーハウスさんです。

1.はじめに

ジョーカーハウスの公演はこれで通算5作目。今回の劇場は,新宿のサンモールスタジオ。前回公演の「英雄コレクション」に引き続きの劇場です。今回の演目は「オズの魔法使い」です。今回は全3バージョンの内,2バージョンのキャストシャッフルのマーブルバージョンと,エメラルドバージョンの2つを観て参りました。

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今回も整理番号順に従って入場。サイズの小さな舞台が2段になっている程度の簡素なセット組み。開場中のひとときに,キャストさんがおもむろに登場してパンフレットを売りさばくイベントも継続中。こういう細かな楽しみもジョーカーハウスの楽しさの一つです。

 2.あらすじ

今回のあらすじは以下の通りです。

アメリカの片田舎:カンザス。農場に住む少女ドロシーは、
ある日、愛犬トトが近所のガルチ女史からいじめられたと帰ってくる。
しかし、養父母や牧場の使用人達はまともにとりあってくれない。
果ては、大地主ガルチ女史の激高に触れ、トトを処分されそうになる。
使用人達のおかげでガルチの手からトトを奪い返すが、
折から大龍巻が襲来して農場は大騒ぎ、
逃げようするが間に合わず、風で外れた窓などで頭をしたたか打つ。
ふと気づくと、ドロシー達は家もろとも大空高く吹きあげられていた。

「もう生きて戻れないかもしれないわね…」

家は一体いずこへ…?
やがてふわりと落ちたところは不思議なオズの国だった。
カンザスに帰るためには、
この国に君臨する大王:オズに会わなければならない。
ドロシーとトトの二人は、
オズの住むエメラルドの都を目指して旅に出る。
( http://stage.corich.jp/stage_main/63503 より引用)

今回の演目,「オズの魔法使い」は個人的にはちょっと思い入れのある作品です。演劇作品の配信を行っている「観劇三昧」 で,伊藤えん魔プロデュース版が無料で配信されています。たまたま無料で配信されていることもあり,ついつい本編を見て見とれていました。冒頭から楽しませるエンジン全開の作品で,お気に入りの作品の1つです。

この作品をジョーカーハウスの皆さんはどのように演じるのか,観劇前からとても興味がそそられました。そんなこともあって,今回,期待値を上げて臨みました。

千穐楽はもう終わってますが,ネタバレ防止の改行を連打します)

 

 

 

 

 

 

 

 

3.劇本体の感想

Over the Rainbowの曲がかかり,暗転後に舞台が明るくなると,そこはアメリカ・カンザスの牧場。ドロシー愛犬トトがいじめられていると,養母のエムおばさんに訴えかけるところから物語は始まります。

お馴染みの「オズの魔法使い」と大筋は一緒ですが,そこは伊藤えん魔さんの演出。50,51とひな鳥を数えているエムおばさんは,「AKBって何人だったっけ?」「48人,49,50…」と周りに邪魔される,時そばネタで冒頭から笑わせてきます。そう,この舞台の特徴は全編にちりばめられた笑いの宝庫。冒頭はとにかくドロシー,トト,エムおばさん,ヘンリー,他の人物も隙あれば笑いを放り込んでくるくせ者ばかり。

本来は恐ろしく怖い存在でしかないはずの,地主のガルチおばさんでさえどこか憎めないおっちょこちょいとして描かれています。一しきり笑顔になったところで,ドロシーは竜巻に巻き込まれ,不思議なオズの国へと飛ばされてしまいます。

ここからは,オズの魔法使いの大まかな筋と一致しながら展開していきます。ただ間に挟まれる小ネタは,最初に観たのがマーブルバージョンだったせいもありますが,てんこ盛りな感じでした。私に取っては大好物なので,心から腹を抱えて笑っていました(リンゴの木とパイナップルの木をペン2本が守っているってどう考えてもおかしい) 。

でもちゃんと物語で見せ所は各所に訪れ,それぞれ未熟なキャラクターが冒険を通じて成長するストーリーは踏まえられていますし,さっきまで道化役だったキャラが物語の中心に据えられて見え切りをしたり,重要なセリフを語ったりと笑いあり感動ありのエンターテイメントに仕上がっています。

関西小劇場ファンならお馴染みの,あの有名作品*1のあの曲を,まさかあのシーンでぶつけてくるとは予想もしませんでしたが,タイミングも効果もばっちりだったので,あの作品のあの演出家のファンとしては大変に嬉しかったです。

演劇は舞台と客席の双方で作り上げるものという言葉がありますが,このマーブルバージョンはとにかくお客さんのノリも最上でした。曲に合わせて手拍子は巻き起こる(公式にはOKです),ギャグにも敏感に反応するという一緒に観ていて一体感が生まれたのでは無いかと錯覚するほどに,最良の客席でした。それに合わせてキャストさんのノリもピークに達していて,とにかく狙っただろうアクションが全てピッタリはまっていくのが分かるほどでした。マーブルバージョンを観終わって出てきた言葉は,“現時点でのジョーカーハウスの最高傑作”*2というフレーズでした。「英雄コレクション」も「運命の子供」も「ロミオとジュリエット」も「不思議の国のアリス」も観終わった後の満足感はもちろんあったのですが,「金の卵」というジョーカーハウスを紹介するときに用いるフレーズが失礼なのではと感じるくらいに,一級のエンターテイメントが目の前にはありました。

その後のエメラルドバージョンも,マーブルバージョンと異なるフレッシュな顔ぶれ。こちらにもまた違った魅力があり,まだまだ繰り返し拝見したいメンバーの多い回でした。

 4.今回のキャストの皆さま

今回は,マーブルバージョンとエメラルドバージョンを拝見したので,その二つにもとづいて,キャストさんについて触れておきたいと思います(と思って書き始めたら全員分書いてましたが…。ルビーバージョンは未見ですのでどうぞご容赦下さい。)。下記の順番はマーブルバージョンの香盤表の順番に基づいております。

  1. ドロシー,北の魔女を演じた田守悠花さん。ジョーカーハウスお馴染みメンバーのエースで,今回も舞台の柱,ファンタジーの世界の雰囲気作りをがっちりとこなしていらっしゃいました。フワフワした雰囲気から,舞台上の空気を締める時の緩急の付け方は流石の領域で,ジョーカーハウスで田守さんが出てくるとホッと安心するほどの方です。
  2. トトを演じた橋本真位乃さん。今回はとにかくツッコミポジションで,それぞれのツッコミが的確に刺さり混んでいて,序盤からの笑いを大きく盛り上げる大切な役どころでした。それとは対比的にクライマックスの砂時計をひっくり返して掲げるシーンはそれまでのコメディエンヌとは打って変わって,物語の象徴的な役目となっていました。今回の影の主人公だなと思います。
  3. かかし,エメラルド城の門番を演じた福井清香さん。前回公演のまる子もそうでしたが,真っ直ぐ飛び込んできそうな迫力と存在感は流石のものがあります。マーブルバージョンで拝見したところ,クライマックスでは涙を浮かべながらセリフを叫んでいて,その様子にすっかり魅せられてしまいました。あのシーンだけ録音してもう一度音声だけで聞き直したいくらいに力こもったものでした。怪しい朝鮮語のネタをシアターミラクルで拝見していた頃とは比べものにならないくらい,凄いパフォーマンスだと感じました。
  4. ブリキを演じた中山貴裕さん。これでジョーカーハウスで拝見するのは3回目ですが,人間味とドスのきいた声の凄みのバランス加減がぴったりで,私は一番好きな役どころでした。良い感じにジョーカーハウスのメンバーから弄られていて,カンパニーの中でも雰囲気良いんだろうなと思うほどに,ゲストさんであることを忘れるくらい,今ではジョーカーハウスに欠かせない存在の方だと思います。物騒な自撮り棒と,AKBを棒で叩いて回るシーンは,もう心の底から笑わせて頂きました。
  5. ライオンを演じた澁谷遼平さん。マーブルバージョンのトリプルカーテンコール後の感想で,すごく緊張したと仰っていましたが,臆病でありながら勇敢に立ち向かう勇気を持つ立派なライオンでした。ウオーの後の左往は個人的なツボでした。
  6. ヘンリーを演じた吉永竜平さん。ヘンリーでも良い味を出してましたが,私の印象は「眉毛は誰だ→俺だ」のコンボです。真面目なシーンなのに笑ってしまいました。
  7. エムおばさん,パインを演じた本多由季さん。伊藤えん魔プロデュース版で南光愛美さんが演じたエムおばさんの印象により近かったと思います。パインの方は,あのネタに翻弄されておもろかったことしか覚えてませぬ…(汗
  8. ブライトを演じた国府田稔さん。序盤3人衆のお一人。見所はガルチの自転車に必死で追いつこうとする時の必死さです。あそこはガルチはそんな猛スピードで走ってるのかなと思うのですが(汗
  9. ジミーを演じた宮武健一さん。3人衆のええ感じの格好良いポジションで,声が良い方です。このシーンに出てくる方々はギャグシーンでなければ,声に聞き惚れるポイントだったなあと。
  10. ボブを演じた森本大希さん。声量があって美声な方でした。役としての登場は序盤のワンシーンでしたが,そのシーンだけでもハッキリと印象に残るほどでした。
  11. ガルチ,リンゴの木を演じた水沢まな美さん。順位とか順番を付けるのは,あまり好きではないですし,そもそも私にそんな資格はないと思っていますが,今回については第一声で張った声を聞いた瞬間から最高のガルチでした。おそらく過去と比べても一番の出来だったのではと思うほどです。伊藤えん魔さんのバージョンでもガルチは大好きな役なので,色々複雑ではあったのですが,そんな複雑さを吹き飛ばすくらいの勢いのある役どころでした。凄みとか迫力のある演技をもっと拝見したいと思います。
  12. 西の魔女,ケシ原莉乃を演じた小澤瑞季さん。今回はAKBの役でちょっと披露しましたが得意のアクロバットを封印しての演じどころ。でも少し気が触れた(あの単語は流石に出せませんが)感情の表現とか,AKBの振りのキレッキレなところとか,振り幅の大きさや魅せ方はピカイチだと思います。
  13. ツブヤッキーを演じた梅田拓弥さん。脇役のカラスですが,この笑いの多い舞台において,きちんと他のキャラへバトンを渡す大切な役目が多かったように思います。とにかく流れを止めずそれでいて,独特の雰囲気を出せる方はスゴいと思います。あのカラスとコウモリのコンビは何度でも拝見したいです。
  14. ホエヅラーを演じた寺尾隆之さん。良い感じの関西弁コウモリで,重くなりがちな西の魔女のシーンの空気を和らげているのが記憶に残っています。
  15. 東の魔女そして,ガルチを演じた佐々木志乃さん。過去の作品で拝見したときとは別人では思ってしまうほど,恐ろしい魔女もしくはガルチを演じていらっしゃいました。今作に出演のお馴染みメンバーの中で一番印象が変わった方でした。役者さんってスゴい…。
  16. 北の魔女グリンダ,渡辺ケシシを演じていた中嶌彩香さん。エメラルドバージョンのザ・アイドルという感じのかわいらしさが印象に残っています。マーブルバージョンの北の魔女はただただ清楚な感じですが,帽子の選択ボケをきっちりこなしていました。
  17. マンチ市長,エムおばさんを演じた美馬利恵子さん,パンフレットとは異なって目鼻立ちのハッキリした方でドロシー達を心配している様がハッキリと伝わってきました。
  18. ペペロンチーニ,緑の少女を演じていた瑠香さん。あー,ジョーカーハウスブログの伊藤えん魔さんの記事「妖怪幼稚園」に出てきた方はこの方でしたか。確かに美人な方で,序盤の華やかさを彩っていた方でした。
  19. ペローネ,エメラルドバージョンのドロシーを演じた小平こっこさん。セリフ量のひたすら多いドロシーをきちんとやりこなすだけでなく,声を低くして抑えた演技をしたときの存在感は,もし私がマーブルバージョンのキャストを考えるなら,絶対に悩むほど魅力的なものでした。この抑えた感じの演技ももっと拝見したいなと思いました。
  20. リンゴ,エメラルドバージョンのかかしを演じた徳岡天心さん。先に見た福井さんと比べてしまうかなと思っていましたが,福井さんの元気な感じと対比するような,少し力の抜けた感じは,これもマーブルバージョンでのキャスティングを迷うようなどちらも良い雰囲気を醸し出していました。エメラルドバージョンで受験が終わった気持ちと仰っていましたが,ルビーバージョンの千穐楽で事故がないよう祈っております。
  21. パイン,エメラルドバージョンの西の魔女を演じた美也さん。ジョーカーハウスのブログで拝見したとおりの圧倒的な存在感。それこそへまをしなければ天下を取れた感じの豪傑な武将という感じでした。あー,あれだったらドロシーはすぐ白旗上げるなーと思うほどに。
  22. ペン,ペローネを演じた合原彩香さん。最初と最後の登場なのですが,退場時に客席をスッと見据えるところが記憶に残っています。ペンの所は,あのPから始まる4文字のシーンに出てきて名乗るプレッシャーたるや相当なものがあったのだろうと思います。
  23. 緑の少女,ペンを演じていた久保綾子さん,中島幸乃さん,吉田ひかるさん。おそらくは本役よりもモブキャラの方が登場回数は多いのでしょうが,あのPから(以下略
  24. ケシ原莉乃,ペペロンチーニを演じた三宅彩日さん。あ,前回拝見した方だと思い出せる顔つきの方で,今回はコメディー方面かなと思っているとちゃんと斧に叩かれて卒業していく美味しい役どころでした。
  25. ケシわ木由紀,東の魔女役を演じた又吉宏美さん。この方もエメラルドバージョンの東の魔女の方が印象に強いです。カーテンコールの時にY字バランスで使っていた足の模型を持ってきて種明かしして下さっていました。ただしその種明かしの時に一瞬本当の足に見えてビビったのはここだけの内緒です。
  26. 渡辺ケシシ,マンチキン市長を演じた金子詩織さん。今回はマーブルバージョンの方が印象が強い方が多いのですが,金子さんはエメラルドバージョンのかわいらしさの方が印象に残っています。(というか,あの斧バットのシーンが面白すぎるのか…)
  27. エメラルド城の門番,それからAKBを演じたケシわ木由紀*3北原学さん。違うバージョンで観て,どっちも存分に持ち味を発揮していた方のひとりでした。女形の方面の持って行き方も,真面目そうな顔をして崩してくる感じも,物語の笑いにとって必須のキャラクターだったと思います。
  28. オズを演じた大石祥生さん。コメディの側面から繰り出す,ちょっとした男らしさやカッコ良さは安定の領域。開演前のパンフ売りのテンパり具合も,一つの味とさえ思えてきます。人間味溢れる役どころでは,随一の方です。偽デニーロのボケもしっかりと板についていますが,今度は渋く笑いのなく,人間味ゼロの大悪人の役もちょっと観てみたいです。

何人かの方をまとめて書いてしまいましたが,パンフレットを拝見してルビーバージョンも1回観てちゃんと追加しておきたかったなと本気で思いました。ううう。

 5.おわりに

ジョーカーハウスの過去公演を見てきて,そしてこの作品は観劇三昧さんで映像を見て気に入っていた作品でした。期待値を上げて臨んだのですが,そこをきちんと越えてくる作品で,おそらくは現時点でのジョーカーハウスの最高傑作だと思いました。舞台と客席の中で全てがきっちりハマった一級作品だと思います。

舞台上も最高,客席も最高という瞬間はそれこそ何度も訪れないのですが,そんな奇跡の時間に立ち会えたことは何よりの幸せです。

今回の5回目を拝見して,やっぱり私はこのジョーカーハウスというカンパニーを継続して観ていたいと思っていることを再確認しました。他のどなたが何を言おうが,今日は楽しかったですし,私はこの勢いある皆さんが大好きなのです。シアターKASSAIで予定されている次回公演が今から楽しみです。楽しかったです!

ameblo.jp

stage.corich.jp

 

*1:ばらまいていたのはケシという毒だというところから,とらわれのヒロインが外へと歩み出すところもまで不思議なほどの一致ですよね(棒

*2:最高という言葉は軽はずみに使いたくないですが,今回は遠慮なく使います。もう次回が楽しみで仕方ないレベルです。来週もお目当ての劇団さんなので最高だと言っているかも知れませんけれども。

*3:こんな名前だったのか(汗…