【観劇ログ】劇団ショウダウン「撃鉄の子守唄」
どうも。イマイです。
昨日速報版をアップしましたが,本体がようやく完成したので,以下の通りUPします。【9月3日一部追記しました】
1.はじめに
観劇前に期待を高めすぎると,もし万が一ということが怖くなったりしますが,劇団ショウダウンさんの場合は幾度もそれを覆す傑作を提示してくださっているので,思う存分期待値を上げて臨んでおります。
というわけで,東京は池袋,シアターグリーンBIG TREE THEATERにやって参りました。 公演案内の時間に燦然と輝く19時開演,22時10分終了予定の文字。そう,この公演は何と休憩含め190分公演という長時間の公演なのです。
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2.あらすじ
物語のあらすじはCorichから引用します。
北米、ニューメキシコの町に、
史実から抹消された一人のアウトローがいた。「最強の臆病者」…
決闘の恐怖から逃げ出し、
銃を捨てた男を人々はそう呼ぶ。しかし平和な片田舎の町が
野盗の集団に襲われた時、
男は一人の少女を守るため、
再びその手に銃を取る。それは失われた物語
荒野に響く撃鉄と硫黄の狂詩曲
それは失われるべき物語後の世に偉大な作家として知られる、
アーサー・コナン・ドイル。
医者の卵であった彼は、
冒険を求めてアメリカに渡り、
黄金伝説の都市、エルドラドを目指す。それは、 アウトロー、ガンマン、闇の者たちを巻き込み、
世界の偉大な遺産を奪い合う、
凄惨な戦いの始まりであった。壮大な独自のファンタジー世界に定評のある
劇団ショウダウンが再び挑む、
史実の裏に隠された歴史の闇を、
作家ナツメクニオが大胆解釈する
歴史エンターテインメント!
( http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_id=73671 より)
では千穐楽前なので,ネタバレ防止の改行を連打します。
舞台上には,上手と下手の二つに上がり口を備えた,高い段がセッティングされ,その前には西部劇の酒場で出てくるような押して空けるタイプの扉がセッティングされています。
劇団ショウダウンさんならではの開演予定時間ぴったりの開始。音楽が高まり,舞台は暗転します。一人の男が背中を向けて座り,子供達が2名,周囲を走り回ります。語り手の名前はコナン・ドイル。この物語の主人公であり,物語のストーリーテラーです。子供達に語って聞かせるのは,かつての冒険譚。子供達は興味深くその物語に引き込まれ,続きを聞こうとせがみます。
母親が現れ,夜も遅いからと寝かしつけた後,ドイルの前には妖精が現れます。そして妖精達も物語を語ってもせがみます。ただし,それは失われた物語,失われるべき物語だったのです。
そして物語を語り始め,若きドイルは正面を向き直り,舞台上は一転して西部劇の世界に突入します。ドイルは酒場でのトラブルに巻き込まれ,ガンマン達に追われます。その中で,ドイルの危機を救ったのは「最強の臆病者」ロック・ストーンの目にも止まらぬ早撃ちの弾丸でした。
ビリー・ザ・キッドをはじめとした西部劇のスターが立ち並ぶ中,この世界の奇跡を掌る財宝を眠らせようとするキャロルとそれを狙う謎の組織が入り乱れ,オールスターの顔見世興行のような賑やかさが舞台上では展開されます。
しかしながら,ロック・ストーンとキャロルが一目惚れをして,ただ華やかで賑やかと思われた舞台に転換が訪れます。それまでの道化のような立ち回りから,徐々に見えてくる一筋縄ではない,複雑な物語と人間模様,そして随所に見え隠れするセリフや立ち回りの妙は,最初から最後まで私を舞台上へと引きつけていました。
3.オススメポイント
3時間もの間,よそ見や余計な想像をしないで観劇することはなかなか難しいことです。私の場合は余計な想像を始めてしまって,面白いシーンをスルーするという悪い癖があるのですが,今回についてはその隙すらありませんでした。
演劇特有のメタなネタも各所にちりばめられてはいるのですが,それによって現実に引き戻されることがないくらい,舞台上の世界は強固であって,確実にその場に存在していました。
それに,重厚な書き込まれた物語ではあるのですが,想像を広げるだけの余白もきちんと用意されています。アニーと興行師の間で起こった過去のやりとりや,キャロルが故郷でどのような人たちと会話し暮らしていたのか,ビリー・ザ・キッドとパット・ギャレットがコンビを組むことになった理由など,1回見ただけでもその背景を想像したくなる要素が沢山隠されています。
1幕はサーカスを見ているような華やかさがあり,2幕もその華やかさを引き継ぎながら,細かい人間模様が垣間見えるようになります。色々な解釈はあるかと思うのですが,1幕は主人公コナン・ドイルの中でも記憶が曖昧になっていたり,脚色が含まれている語りだったのに対して,2幕は正しく伝えようと語ろうとしているのかなと私は考えています。
絶妙なタイミングの音響,煌びやかな照明,物語を形作る様々な衣装,そして中盤と終盤の盛り上がりを支えるダンス,そして役者さん達の熱演と,重厚なストーリー。またしても劇団ショウダウンさんの総合芸術に魅せられました。
可笑しさも,カッコ良さも,情けなさも,切なさも,悲しさも全部が含まれた長大なストーリーを鑑賞し終わった後,複数回見る予定を入れていた私は,自分の決断が間違っていなかったことを確信いたしました。目撃できて幸せです。
4.キャストさん紹介
さて26名もキャストさんがいるのですが,御礼として,お一人ずつ印象に残ったシーンを含めてご紹介したいと思います。
- キャロル役の林遊眠さん。ご本人のブログでも言及がありましたが,少年や挑みかかる青年のような役を最近拝見してきた中,守られるタイプの女性役。序盤は200歳とは思えないほどの可憐な少女の印象でした。しかし,正体が判明してからの,一見前向きそうに見えながら,抱えた秘密に対する覚悟や諦めの様子は,この物語の後半を支える扇の要でした。【9月3日追記:ラストシーンでドイルから帽子を借りて,顔を隠しながらドイルに語りかけるのは,ドイルの前では美しいまま死にたいと願うからこそなのですが,ちょうどこれが映画「風立ちぬ」のヒロインの行動と重なるなと気がついて,より一層悲しみが深化した気がします。】
- ロック・ストーン役の中路輝さん,前回公演の「黒船」の悩める軍師役もカッコ良かったのですが,今回は男性でも惚れるクラスのカッコ良さ。臆病者の場面と,いざ意を決した場面もギャップもキャラクターの魅力を引き出しています。ラストシーンの悲しみと覚悟を背負い,世界樹の元へ消えていく様はまるで映画のクライマックスを連想するような,切り取って補完しておきたいほどの美しいシーンですし,中路さんの魅力がふんだんに含まれているシーンだと思います。【9月3日追記:1幕の過去の過ちを一気にまくし立てるシーンは見事で何度も見返したいシーンです。】
- コナン・ドイル役の白石幸雄さん,野性味あふれる冒険家としてのコナン・ドイル像という魅力的な役どころでした。劇団ショウダウンさんの公演では恒例となった,ストーリーテラー役+主人公としての膨大なセリフ量を,初日の難しさの中でもこなしていていらっしゃいました。コンディション的には大変な役どころだと思いますが,千穐楽まで無事に乗り切ることを祈っております。【9月3日追記:クライマックスの世界樹の燃えさかる中のドイルの慟哭は,何回も繰り返し観る中で物語を楽しんでいた観客自身に重なって,涙腺を刺激してきます。粗暴に見えながら真っ直ぐだからこそそうなるのだなと思います】
- パット・ギャレット役の升田祐次さん,前回の「黒船」で見せた険しい顔だけでなく,おそらくは主要キャラの中で最も感情豊かで人間味あふれる役どころでした。朗々とした語り口と激しい立ち回りで魅せるだけでなく,その魅力的な声でギャグパートも担当すると,ここまで楽しいのかと思うほど,声を出して笑わせて頂きました。それなのに物語の終盤での登場シーンはズルいくらいにカッコ良いのです。【9月3日追記:ホルスターに銃が上手く入らないときのトラブルにも,ギャレットだったらこうするだろうなと言う動きでカバーされていて流石だなと思います】
- ビリー・ザ・キッド役の中鶴間大陽さん,第一幕で殺されてしまう役どころですが,触ると危険な歩く爆弾のようなキッド役の狂気に満ちた,そしてどこか子供のような純朴さを備えた両面の印象を感じました。物陰に隠れるときの俊敏さや,銃を構えたときのカッコ良さは是非ご注目あれ。【9月3日追記:回を重ねるごとに無邪気なんだけれど,実は色々悟っているのではと思うクレバーさを兼ね備えている気がしていて,殺されることも分かっていたのではとも考えました。背筋がピンとしていて,やはり銃を構える姿が舞台上で映えます】
- バッファロー・ビル役の加東岳史さん。物語の核心を握る興行師で,登場したときの耳目を引く華やかさを備えながら,終盤の糸を引いていた悪役として登場した狂気の振れ幅は,非常に強く印象に残りました。そういえば,物語の終盤で異なる文脈で2度目の登場をする,あるセリフは今考えると独特の妖しさを兼ね備えていたように思います。【9月3日追記:独立記念日の宴会のシーンは他のキャラと違って神妙そうな顔をしていることに気がつきました。何か算段していたのか,それとも物思いにふけっていたのでしょうか。】
- アニー・オークリー役の植木歩生子さん,最初に登場した際にはあまりに素朴で,前回の凜々しさを期待していた私としてはあれ?と思ったのですが,ショー用のキャラ設定と聞いて納得。物語の中盤から見せる啖呵や男っぽさとともに見せる優しさは非常に魅力的な役ですが,終盤に仲間を騙すためという設定を知ってしまったため,2回目に見たときには仲間に見せる気遣い一つにも,影を感じるようになる,複数回の鑑賞で印象の変わる不思議な役でした。【9月3日追記:回を重ねるごとに赤のカツラにツッコむ台詞が進化しています。某チェーン店の紅ショウガというツッコミは,もう次回からそう見えてしまうのではと思うくらい的確で,爆笑したシーンです。】
- スザンナ役の菅原三花さん,キャロルを町に受け入れた有力者の娘です。居振る舞いや台詞から伝わってくる品の良さや懐の深さが何か母性を感じる役でした。一幕のキャロルが二幕よりも少女っぽくはしゃいで見えたのは,スザンナを母親だと思って甘えていたのではないかと思います。でも,あのキャロルを町に受け入れる算段をしたのですから,単に優しいだけでなく,相当のやり手なのではとも思いますが。【9月3日追記:ビルが用心棒になるときだけ,動きが俊敏でコミカルになります。たぶん舞台で見えていないところでてきぱき仕事をこなすキャリアウーマンなのではと思います。】
- ピ○チュウもとい,ミゲル役の古川剛充さん。強力な魔法の力を目前にし,いったんは排除を選択し,それでもピンチにまたすがろうとする酒場のマスターの弱々しさは,この物語を通じて登場する強大な力に振り回される人間の弱さの一つを感じます。その一方で2幕の台詞でもシャロンのことを心配していたと語られていて,人思いの一面も魅せる役です。そういえば,この舞台では前回公演ではなかった,トレードマークのお帽子を被っている役で,劇団「劇団」のファンの方にも注目だと思います。【9月3日追記:独立記念日の宴会のシーンでシャロンと語り合っているシーンがあることに気がつきました。もしドイルがあの町を訪れなければ,別のサイドストーリーが成立したのかもしれません。】
- シャロン・ダイア役の山岡美穂さん,酒場での踊り子や占い師で見せる味方の雰囲気とは打って変わって,2幕からは物語の悪役の中心人物として,あぁ不老不死とはここまで人を狂わせるのかと印象づける役どころです。でも,悪役の中心人物であっても神になりきれない器の小ささが,器量の狭さや余裕のなさを通して,表現されており,この役も濁流に飲み込まれた哀しい人物なのだと感じました。個人的には酒場を立ち去る際に,名残惜しそうにほんの少し立ち止まって,サヨナラと呟いているのが,強く記憶に残っています。【9月3日追記:ラストシーンで,ストーンを止めようとした最期の瞬間,悪役ではなく酒場での仲間の顔になったのではと解釈したら,その後の号泣シーンに加えて,このシーンも号泣せざるを得なくなってしまいました。シャロンは魅力的ですが,とにかく可哀想なイメージが強くなりました。】
- ユル役の薗一輝さん,1幕の三人組のガンマンのリーダー。敵方につきながらも,余計な殺生を好まず,味方のピンチには撤退できる勇気を持った,おそらく描き方を変えればヒーローにもなり得る爽やかなガンマンでした。スラリとした趣に加えて,銃裁きやアクションで魅せるあたりは,サムナーの町にユルのファンがいてもおかしくはないように思いました。【9月3日追記:独立記念日の宴会をうらやんで呟くアドリブシーンが回が進むごとにネタ追加になっていました。千穐楽ではどこまで膨らむのかと思うと,千穐楽を見届けられないことが悔しい限りです。】
- ジェーン役のくすむらしほさん,1幕の三人組のガンマンの紅一点。でも三人の中で最も冷静でかつ最も勇敢なガンマンです。甘い声を出しながらユルに甘えつつ,やるときはやるタイプの魅力的な役どころ。くすむらさんの凜々しい語り口は序盤のシーンを何度ももり立てていきます。銃を構えながら戦闘を繰り返していくシーンは序盤の見所の一つです。【9月3日追記:独立記念日の宴会では,ちゃっかり酒場の宴会に参加していて,ああ,この日に仕事する奴は本当に野暮なのだなと確信を強めました。】
- ケリー役のミワチヒロさん,物陰に隠れて心臓バクンバクン言わせてるおかしなキャラですが,ミワさんの台詞回しと立ち居振る舞いのおかげで,どこか憎めないひょうきんさが伝わってきます。あの三人組,揉めたりしてますが結構仲良しな感じで,三人の出会いをきっかけにしたサブストーリーも観て見たい気がします。なお,2幕のミワさんはハンというアサシンで,一幕よりも輪をかけておかしさを増幅させています。でもなんだか悪いキャラに見えない(ry【9月3日追記:ガンマン三人組の中で一番無謀な役どころですよね,シャロンの確保にも自分一人で行ってしまうし。でも,それは手柄を挙げてジェーンを振り向かせたいためであると考えると,また悩ましいところです。】
- サマリー役の三浦求さん,三浦さんは1幕では酒場の客として登場していますが,何よりも2幕の豪腕な教授役はドイルの苦手なアマゾンの植生や学術面のフォローをしながら,緊迫したシーンを和ませる様々な活躍をする役です。そして「世界はまだまだ不思議に満ち溢れている。いや,世界に不思議でないことなど何も無い。」というあの台詞は,これだけのために台本を買っても良いと思えるくらいカッコ良いセリフです。三浦さんの台詞回しは,教授としても,ドイルの祖父代わりとしてもとても安心できる優しいセリフでした。【9月3日追記:エントのシーンが回が進むごとに,(最初からそうだったと思うのですが)周りの木たちと相談するなどの笑いどころが増えていて,見逃せないシーンとなりつつあります】
- フェルナンド役の為房大輔さん,パイドパイパーの時も物語中で,全く別人として登場してきますが,今回も冒頭で退場させられる保安官と,一行を大樹の元へ案内する案内役として現れます。この2つは脇役ながらも物語の重厚さに必須の役どころで,特に2幕の案内役はドイルの物語を深めるために,必須な人物です。為房さんの声の凜々しさや声の通りの良さ,そして演技の振り幅の大きさはこの物語を支える重要な骨格だと感じました。個人的にはエル・ドラドに到着して,近くの木とハイタッチしているところが印象的でした。【9月3日追記:その直後のぴょーんとジャンプする高さにもご注目あれ。】
- ヘイズ役の佐竹仁さん。序盤の道化役を演じているときは,パイドパイパーの諜報員の部下で見せたコミカルな役どころかと思いきや,今回は順風満帆に見える主人公達の行く手を阻む強大な悪の黒幕として登場します。堂々たる風貌や態度で一見ぶれていなさそうな元大統領が,甘言にそそのかされて目的を変容していく様は,人間の弱さを感じる哀しい役どころだったと思います。【9月3日追記:少し後方の客席からみたら,段が高くなっているところのスペースがかなり限られていて,堂々と演じているけれど実は揺れたりして結構演じる側には大変なのかなと素人考えで感じました。あと7月14日の深夜の飲み会シーンでは,酒が足らなくなったのか,コップをしきりにひっくり返しているのが印象的でした(←どこ観ているのかと自分でも思いますが)】
- ウィーラー役の中川律さん,パイドパイパーで拝見したときの温和な王様や父親役からは一転して,今回は悩める将来の副大統領候補。ただ悪役でありながら悪役になりきれない常識人の悩ましさがものすごく伝わってきました。2幕開始直後に地面を音を立てて踏みつける演技は,言葉では表しきれない苛立ちがあるのだろうと想像できるくらい,印象的なシーンでした。【9月3日追記:9月2日の昼公演で,あのシーンの猛獣役でご登場し。「なんて現場だ!」という台詞は爆笑ものでした】
- アルルカン役の尾崎秀明さん,おそらくアルルカン役としては仮面を付けて台詞もない役ですが,一幕の黒衣を含めて,物語の殺陣の見せ所ではかなりの割合で登場している方だと思います。黒衣のはじき返した弾丸の数を数えながら近づいてくる様は,この物語の中でも最も不気味なシーンであって,暗殺者として数多くの用心を殺めてきたのだろうなと思うほどの迫力がありました。【9月3日追記:コミカルシーンは無縁かと思いきや,保安官のシーンがありましたね…。そこでも淡々とツッコミを入れているあたりが,徹底しているなと思いました。なお,黒衣の名前はシノギで,グラップラー刃牙から取ったとのことです。( https://twitter.com/nats491125/status/771551499570688000 )】
- ムーン・チャイルド役の森谷聖さん,この物語だけ見ていると多分唐突に見える役なのですが,『ムーン・チャイルド』がアレイスター・クロウリーの作品だとすると*1,あの衣装は黒魔術師をイメージしているのかなと思いました。代謝速度を落として動きを鈍くする法力も,不死身の身体で立ち向かうキャロルには無力でした。このシーンで出てくる刺客の内,ピアスとハンよりも主人公達の反撃に動揺した人物として描かれているのは,魔導師と言いながらも堂々と銃を使っていて,権力はありながらも実は魔術としてはたいしたことが無いためなのかなと考えました。 【9月3日追記:1幕は町民役で酒場をはじめ,あちこちにご登場されているとのことです。 あのキャロルを追放したシーンでも一町人として発言されております。 https://twitter.com/moriya307/status/771857628313952256 】
- ピアス役の羽田野裕美さん,半径10メートルの範囲では飛び道具が使えないというガンマン殺しの魔法使い。二幕の登場時に,長髪で顔を隠しながら演技をしていくあたりは,底知れぬ恐ろしさを醸し出していて,衣装のセクシーさよりも怖さの方が強く印象に残りました。やられ役ではありますが,あんな感じで西部劇の世界に登場したら並大抵のガンマンでは立ち向かうことすら叶わなそうです。【9月3日追記:本日舞台でちゃんと確認したら半径は10メートルでは無く,100メートルになっていました。確かにライフルだったら10メートルは届いちゃいそうですものね…。】
- バルキリー役の大西真央さん,泉のシーンでキャロルとストーンに訪れる悲劇を予言し,ストーンへその覚悟はあるかと迫る役です。物語の中ではセリフや登場シーンも限られていますが,キャロルとストーンを見つめながら予言をしていくシーンはおそらくはカラーコンタクトか,照明の関係か分かりませんが,眼のあたりから,圧倒的な力の差を知らせるような迫力があり,眼力ともいうべきものを感じました。【9月3日追記:バルキリーのメイクが印象的で,他のシーンのどこに登場しているのか?と思っていたら,冒頭で子供1で登場されていました。妖精をインチキだと批判している台詞があります。たぶん偶然かと思いますが,ドイルの物語を語る際に子供1をモチーフにしたのかなと妄想してみたりします。】
- グラディス役の重松よしこさん,二幕の冒頭で身分違いのドイルの恋を,木っ端みじんにする貴族の女性です。シンプルなセットと衣装ながら,高貴で身分違いには厳しい堂々たるイギリス貴族を表現されていました。ちなみに私は未読だったのですが,ロストワールドの世界では主人公の新聞記者エドワード・マローンに大きな事をやり遂げた名のある人物としか結婚したくないと告げたのは,「グラディス」という人物でした。なるほど,エドワード・マローン=コナン・ドイルという伏線がここでも張られているのかと,Googleの検索結果を眺めながら驚愕しています。【9月3日追記:最初の酒場のシーンも含め,結構な箇所で登場されています。ストーンが嘔吐した客の後始末をする際に,近くに居合わせて,手でにおいをかき消そうとするなど,細かく演技されています。】
- フランシス役の中山さつきさん,プロフィールを拝見すると高校2年生17歳とのこと。妖精役で最初と最後だけの登場ですが,可憐な感じで,アイドルのような印象を受けました。実は2回目観劇の時点で他の登場シーンを把握できていないので,祭りのシーンはアイシャドーを手がかりとして登場シーンを探したいと思います。【9月3日追記:祭りのダンスシーンでは最前列のセンターという結構分かりやすいところで登場されていて,場を盛り上げていらっしゃいました。気づかず申し訳ない限りです…。あと,酒場では麦わら帽子を被った少女として登場されていました。】
- 母親役の香月みゆきさん,冒頭と一番最後の物語進行役として登場します。ほんのわずかな役ですが,一つ印象に残る場面があります。それはラストシーン,ドイルがキャロルやストーンと語っている間,ドイルに対して身振り手振りをしているところです。あれを「何を言っているの?」という解釈か,「起きてください,大丈夫ですか?」という解釈にするかで,ドイルが生きているのか死んでいるのかが変わってきます。なお,物販の台本ではこのラストシーンは男の子と女の子が登場することになっているので,おそらく大阪公演と東京公演では違った演出になっているのではと感じました。【9月3日追記:酒場と祭りのシーンでは後ろの方で登場されていることが多いですが,台詞が無くても細かく演技されていらっしゃいます。アドリブかと思いきや,ここも演出の範囲と聞いて,本当に細かい所まで作り上げているのだと感じました。】
- エルシー役の竹内敦子さん,こちらも妖精として役名がついた役としては最初と最後だけの登場ですが,前作の黒船で見せた子どものような純真さは今回も健在です。物語のあちこちに登場してくるモブとしてのシーンが多いのですが,もしかするとドイルから妖精が物語を語り継いでもらっている間に,いたずらであちこちに登場してきているのではと勝手な妄想を膨らませて楽しんでいました。【9月3日追記:モブシーンで一番分かりやすいのが,ワイルドウェストショーの開演前に,客2としてショー!?と叫ぶところでしょうか。これが妖精が入り込んだいたずらだと考えると,また物語が楽しくなります。】
- 女の子役の宮島めぐみさん,こちらも役名がついた役としては冒頭のみの登場ですが,酒場のシーンでは派手に酔いつぶれている人物として登場するなど,登場シーンは他の役付の方よりももしかしたら多い役かもしれません。今回の女の子役についてはお化粧と演技が溶け込んでいて,「女の子」として登場していたのを終演後にキャスト一覧を見てから認識したほどで,最初の登場シーンは酒場の派手に酔っ払った女性からかと思っておりました。申し訳ありません。【9月3日追記:キャロルを追放する際に,「話し合って決めたの」と発言されている所を観ると,あの酔っ払い女性もしらふではちゃんとコミュニティの一員として義務を果たしているのだなと思いました。】
5.物販オススメポイント
まずは台本はオススメです。物販で購入した台本のキャスト一覧に書かれている「他,超多数」という一言に,この物語の壮大さの片鱗を感じました。こんな感じで楽しめる台本は劇場受付および劇団ショウダウンのWebページで好評発売中です(宣伝)。あと,物販に新登場のフォトセットはkutowans studioの堀川さんによる美しい舞台写真がたくさん封入されていますので,オススメです。
繰り返し申し上げますが,こんな傑作を観客席で見届けられるのは,何よりの幸せです。まだまだ書けそうなことはありますが,ひとまずここで止めておきます。また観劇した中で気がついたことがあれば,逐一補充して参りたいと思います。
【9月3日追記】舞台セット写真は終演後撮影OK,ネットワークへのUPもOKとのことなので,ご厚意に甘えて,UPしてみます。