【観劇ログ】5月文楽公演「絵本太功記」
ども。イマイです。
私は観劇趣味を公言しておきながら,割とメジャー路線とか伝統芸能系は見ていないことが多いのです。ただこういうものこそ,最初の第一歩を踏み出すのには勇気がいるような気がして,ずっと躊躇し観劇までには至りませんでした。
今回,所属先の国語国文学会の観劇会で,国立小劇場の5月文楽公演「絵本太功記」を観に行きますが,いかがですかとお声がけをいただきました。そういえば,文楽は関西小劇場を観に行く際に,良く訪れるシアトリカル應典院の最寄り駅である日本橋に本場中の本場がございます。
Hさんの行政の時に,色々やり玉に挙がっていたことは存じ上げているのですが,そういえば文楽ってちゃんと拝見したことがなかったなと気がつきまして,今回のお誘いのメールに対して,ぜひお願いしますと返事を返していました。
というわけで,本日の観劇ログは文楽公演「絵本太功記」です。なお,あくまでも初めて観たものを趣味的に記録しているだけなので,もっと詳しく知りたい方は別メディアの情報をお探しいただけると幸いです。
小劇場を観るときには,あまり予習をしないで初見は何も事前知識を入れず1回目を観て,その後2回目,3回目と行くパターンになりがちです*1今回は1発勝負かつ全体の話の中から抜粋した形で展開されるとのことなので,少し予習をしていくことになりました。
観劇会に先立ちまして,勤務先の国語国文学会の先生が昼休みに実施している,学生さんを交えての事前説明会というのがございました。映像を使いつつ,かつ時代背景も交えて,昼休みの限られた時間でコンパクトに取り上げていらっしゃったので,これだけでも予習はばっちりかなと思いました。
ただ,これまでちゃんと伝統芸能を観てきた家族に今回のことを話すと,ちゃんと予習した方がよい,というか歌舞伎の役者名もちゃんと読めないくらいなのだから,ちゃんと事前知識は身につけるべきとのツッコミをもらいました。まあ,仰るとおりとしか言いようがないのです。
そこで,自分なりにもう少し予習をちゃんとしていくことにしました。Web上で評判の良い本を店頭で観ながら,購入した所,以下の2冊がとてもイメージを掴むのに役立ちました。
まず,1点目は三浦しをんさんの『あやつられ文楽鑑賞』です。最初のエピソードが楽屋訪問から始まるので,いきなり裏から見せるのかと面食らいましたが,文楽の世界がどのように構築されていくのかが分かりやすくなっており,国立小劇場の客席に座ったときには,この本で見たあの品物がそこにあるということが頻発し,精神的なハードルを下げるには大変に良い著書だと思いました。
ただ,三浦しをんさんの本には,今回上演される「絵本太功記」は掲載されておりませんのでしたので,高木秀樹さんの『文楽手帖』も合わせて拝見いたしました。見開き2〜3ページでコンパクトにまとまっており,ストーリーの概略を掴むのには役立ちました*2。
新国立劇場と国立小劇場を取り違えるという,ほぼお約束のボケをかましつつ*3,国立小劇場に到着。集合時間よりだいぶ早く到着したので,敷地内の伝統芸能情報館で時間をつぶしていました。単なる展示コーナーかと思いきや,文化デジタルライブラリーというWeb上の解説を観られるPC端末が置いてあったりして,予習をもし忘れてきてもここでリカバリーできそうな感じであります。
さて,そうこうしている間に集合時間と相成りまして,劇場の正面入り口に馳せ参じたのでございます。伝統芸能だとネタバレを気にしなくて良いので,このまま改行せずに進めて参ります。
今回の絵本太功記は全15段*4で構成される物語の中から,以下の4段のみを抜粋して上演しています。
- 本能寺の段
- 妙心寺の段
- 夕顔棚の段
- 尼ヶ崎の段
物語の主人公は武智光秀。史実では明智光秀と称される人物です。江戸幕府時代に幕府絡みの人物を実名で扱うのはタブーだったので,このような音が近い別の名前に置き換えられています。
<ここから書きかけですが公開します。>
さて,いつもだと思いついたことをツラツラ書き連ねていくところですが,明日朝1限から授業だと言うこともあり,これ以上の時間が取れないので,以下,書こうと思っていた内容を箇条書きにしておきます。今週はちょっと別件でバタバタしているのですが,どこかでちゃんと文章にしたいと思いますので,ひとまずご容赦を。
- イヤホンサービスは初めてだったらぜひオススメ。大夫の声の音程まで意味が持たされていることが分かる上に,細かい所作の見所も教えてくれます。
- 武智光秀は日本史で習ったときは復讐に燃える冷酷な男というイメージがあったのですが,今回の絵本太功記では揺れ動く人間の弱さが見え隠れしているのが印象に残りました。
- 人形が操られているだけなのに,物語が進むにつれ,まるで人間が演じているかのような錯覚に陥り,最後には人間が演じたとしたらどのようなシーンになるのかまで想像しながら楽しみました。
- 皐月,操,初菊が感涙するシーンは,三味線や大夫の語りもあってか,気がついたらこちらの方までもらい泣きしていました。
- 所作全般,特に手の動き方は見入るばかりでして,人間の動きと重なるのもまさにこういう精密な動きがあってこそなのだなと思います。
- それから,三浦しをんさんの本でも言及されているように,舞台上のどなたもメガネや時計を身につけていないのは興味深く,最後の最後まで個人的な見所でした。
- プログラムに山川静夫さんの名前を見つけて,そういえば,「山川静夫の新・華麗なる招待席」でサクラ大戦の「新・愛ゆえに」が放送されていたことがあったなあ,あれも伝統芸能からのエッセンスがあちこちに散らばっていたなあとか(やや脱線)。
<ここまでの部分は書きかけで公開します(2016/05/22 23:34)。>
いつもは現代劇やファンタジーを多く観ているのですが,それぞれの劇で登場する見得の切り方とか,所作といったもののルーツがここにあるのかと思うと大変興味深く,14時から17時半までの公演時間は発見の連続でありました。
今回お誘いいただいた国語国文学会の皆様,並びに引率の先生に深く感謝申し上げます。また一つ面白いものを見つけることが叶いました。
*1:2回3回とみるのが前提なのかと我ながらあきれますが…
*2:ちなみに同行された先生はもちろんこの2点はご存じで,良い本ですよねと仰っていただけたので,ホッとしたのはここだけの話です。
*3:新国立劇場は京王線新宿から一駅の「初台」,国立小劇場は「永田町」が最寄り駅です。
*4:なお,Wikipediaだと14段となっていますが,これは後年追加された「大詰」を除いている為と思われます。日本芸術文化振興会の「文化デジタルライブラリー」に基づいて今回は記述しました。 http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/contents/learn/edc18/ehon/digest/index.html