リブラリウスと趣味の記録

観劇とかパフォーマンスとかの鑑賞記録を淡々と。本務の仕事とか研究にご興味ある方は本家ブログまで( http://librarius.hatenablog.com/ )

【観劇ログ】クロムモリブデン「翼とクチバシもください」

ども。イマイです。

気がつけば1ヶ月以上舞台を観ていないことに気がつきました。忙しいとはいえ,これは良くありません。ただ土日に予定が入っていることが多いので,なかなかチャンスがありません。

となれば,平日夜の公演を狙うのが筋ということになります。今回訪れたのは,クロムモリブデンさんの「翼とクチバシもください」です。東京は赤坂見附の赤坂RED THEATERへウキウキしながら移動しました。

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クロムモリブデンさんは「曲がるカーブ」を拝見して以来,2度目の観劇です*1。それ以来ありがたいことに継続してDMを頂戴していて,毎回のタイトルとデザインの面白さに,もう一度見たいと思いつつ,予定が合わないことが続いていました。

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今回の決め手になったのはこのDMと,先日拝見した壱劇屋さんの「SQUARE AREA」でした。ちょうど奥田ワレタさんがゲストの回がありまして,そういえばクロムモリブデンが5月に公演をやるのだということを思い出すきっかけになったのです。

そんなことを思い出しつつ,2年ぶりのクロムモリブデンのロビーで物販を買い求めていました。物販のサントラは2パターンあって開演前のBGM集と,本編のBGMの2パターン。何とオリジナルの切手シートも販売されています。パンプレットは珍しいA5サイズ。それから本公演の台本とかなり充実しています*2。これらを買い求めつつ過去公演のDVDを2つ買い求めました。もちろん,研究室置きします。

そうこうしている間に開場時間となりまして,今日は客席の後方であるK列の8番というところで観劇に臨みました。この劇場は,座席の座面下にフライヤーの収納スペースがあって,とてもスマートな感じがして嬉しくなります*3

では,ネタバレ防止のために改行のおまじないを行います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

液晶ばかり見ていると、目も心も乾燥してしまってマシンになる。 それで無理矢理人々は眼から液体を流そうとする。 泣ける話を目薬のように入れるのさ。しかし人工的な話はなかなか泣けない。 何が泣ける事なのか余計にわからなくなってマシンになる。 マシン人間やアンドロイドはアンディーと呼ばれてる。アンディーはドラッグでもある。 撲滅運動も開始された。でも、鳥になれば楽に飛べるのさ。鳥になれば。

上記の引用は今回の公演に書かれているリード文です。劇団Webページを見ても,どのような話か分からないようになっていて,ナゾが深まるばかりです。今回,物販で台本を買い求めることができたので,記憶を辿りながら,ほんの少しだけ冒頭の所だけ,ストーリーを追いたいと思います。

舞台はスチームが下手天井付近から吹き出す,工場のような薄暗い空間から始まります。刑務官林田が,主人公である奥寺に声をかけ,言葉のやりとりが始まります。

このコミュニケーションが非常に特徴的で,言うなれば伝説のハナモゲラ語を3倍速にした感じの,意味があるのかないのかがさっぱり分からないけれども,勢いで「※★△*×,パシュッ!」とテンポ良く,それも身振り手振りと共に発せられていて,最初は驚きますが,だんだん目が離せなくなる不思議なコミュニーションが行われていきます。

なお,台本には全くこの不思議な言語の記載がないので,詳細は舞台上もしくは今後発売されるであろうDVDでご確認いただくことを強くお勧めしたいと思います。訳分からないのですが,ただただ面白いのです。

さて,物語は奥寺が刑務官である林田から,独房に入れられている常滑川について,これから脱走するだろうから,手助けしてやれ,そしてスパイしろ,泳がせておいて,悪事を暴いてやるんだと指示を出します。まあ,荒唐無稽かつ,いきなり物語が転がり出します。

ところがこのスパイもあっけなく,潜入先で奥寺が流されていくことで,二重スパイになってみたり,警備員をやっていたはずなのに在宅勤務になってみたり(笑),訳が分からないうちに,訳が分からない人がダース単位で出てくる始末であります。

ただ,これらは全てアンディーというドラッグが見せていた奥寺の幻覚であるということが中盤あたりから分かってきます。当初はただの混沌,カオス空間かと思いきや,実はなぜ奥寺がドラッグに流されなければいけなかったのかが判明し,そして奥寺がなぜ感情を露わにすることがないのかも明らかになっていきます。

このあたりの物語が転がる様は,演劇の面白さだと思いますので,詳細は劇場でご確認ください。以下,感想です。

個人的には,意味のあるなしがどうでもよくなる擬音とメリハリのある動きがとても楽しかったです。意味の分からない言葉でも切れの良いキャッチングが舞台のあちこちで披露されたら,こんなに自分はワクワクしてしまうのだということを認識することができました(笑)。また,擬音のところどころがコテコテのギャグを挟んでくるのですが,こういうのは大好物です。

おそらく熱に浮かされた時に,表面上は苦しみながら脳内ではこんな光景が入り乱れているのだろうなぁと思う奇妙な空間がありました。最初の段階では何だこれと思っていた私も,最後はその空間が去りがたくなる親しみを覚えました。 まさに謎の高揚感がそこにありました。

個人的にはリキッドを点した後の無意味から意味のある言葉へ,少しずつ切り替わる唱和が照明や音響と合わさって,きれいな空間を描いていて,とても好みでした。あのシーンはDVDでどんな感じになるのだろうかと今から楽しみです。

キャストさんの中では,お目当ての奥田ワレタさんのクレイジーっぷりを堪能いたしましたし,TRUMP以来の森下亮さんの本領発揮の壊れっぷりも拝見できて大満足でした。あと,ハル子役の渡邉とかげさんの奥様っぷりが可愛らしくて美しくて強く印象に残りました。でも,どこかスッポリ抜け落ちている感じはやはりこの物語に出てくる全ての役に共通した要素なのかなとも思いました。

東京公演はこの後,5月22日(日)まで。そして大阪公演は6月2日(木)から6月5日まで梅田のHEP HALLで行われます。あんまり考えこまずに,奇妙な世界に浸かってくる楽しみがあると思います。ぜひ機会があればご覧になってみてください。ではっ。

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*1:今改めて調べたらもう2年以上前だと気がついて,思わず声が出そうでした。ヒェェ

*2:手は出せませんでしたがオリジナルTシャツもかなりの売りのようです

*3:座面の方においてあるのも良いのですが,こういう感じに収納されているのも大好きです