リブラリウスと趣味の記録

観劇とかパフォーマンスとかの鑑賞記録を淡々と。本務の仕事とか研究にご興味ある方は本家ブログまで( http://librarius.hatenablog.com/ )

【観劇ログ】劇団C2 Project vol. 17「BREAK」

どうも。イマイです。

最近の観劇傾向が関西出身の劇団さんが多いこともあり,東京に住んでいるくせに東京の劇団さんの公演は,ほとんど何も知らないという状況です。ただ年間,毎日1つ観ても全て見切れないほどの劇団さんがひしめく東京地区。ただ出会っていないだけで,とても魅力的な劇団さんは数多くあるはずです。今日は,また一つ魅力的な劇団さんを新しく知ることが叶いました。

きっかけは,このブログでも数度登場している,教え子さんである片田友香梨さんのご紹介であります。彼女が出演するとのことですので,予定を軽やかに確保*1しつつ,訪れた次第です。

場所は今年既に3度訪れた池袋シアターグリーン。今日は一番右側で大きい施設となっているBIG TREE THEATERです。確か,こちらの劇場に来たのはTAKE IT EASY!さんの千年女優以来ですから,もう4年ぶりぐらいで,時の流れに驚いています。

劇場の入り口では,このような形でフライヤーが出迎えてくれます。

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では,トップページからご覧の方でこの先を読みたいという方は「続きを読む」ボタンをどうぞ。

受け付け開始の13時。チケットと引き替えてロビーまで入ると物販のコーナーが。初めての劇団さんですが,DVDが充実していて,10周年記念のBOXセットまで出ていました。何とこれから公演なのに,出演者である松山コウさんが物販を担当されていました。こういう心遣いにグッときながら,パンフレットとブロマイドを購入して,開場を待ちます。

開演前に座席の所へ赤い光がやってきました。何と開演前にスポットが舞台のあちこち,場所を切り替えながら照らされています。初めて見るパターンで,雰囲気が盛り上がってきます。

開演前15分になると,役者さんが2名現れ,開場前の注意点を説明してくれます。通例ですと,素に近い形で事務的に説明することが多い箇所かと思いますが,この劇団C2さんは公演の役に近い形で説明をなさってくれます。個人的には気分を盛り上げたい箇所でもあるので,大変嬉しかったです。

なお,本公演は開演前の舞台セットと前説シーンの撮影OK,SNS等への投稿もOKとのことなので,写真を撮りました。パチリ。

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この写真では少ししか映っていませんが,舞台は互い違いの段が左右に設けてあります。このお二人が開演前の注意とパンフレット販売をなさっていました。ロビーで買ってしまったので,この場で買えなかったのがちょっと残念でした。結果としては同じことではありますが。

さて,明日千穐楽ですが,念のためネタバレ防止のおまじないを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞台のあらすじは公式ページに記載されておりますので,そちらから引用します。

これはココとは違うイマを歩んだ世界の物語。
ゲンジツの先にあるシンジツに立ち向かった者たちの記録。

1862年……その国は一夜にして一人の女の手に陥ちる。
女の名は魅鬼(ミキ)。
疲弊した国に突如として現れた救世の民。
人智の及ばぬ秘術を用いて忽ちの内に諸問題を解決した彼女は、当然のように時の将軍の寵愛を受け、国の明日を担うであろう希望の存在と目されていた。
だが、彼女にはそれを是とする気など毛頭なかった。
世の理すらも操る人外の力を用いて瞬く間に城を占拠。幹部をはじめとする兵の大半も懐柔。
圧倒的ともすぎる反逆劇は何の問題もなく完遂するかに思えた。

しかしたった一つの出逢いが綻びを生じさせる。

あらゆる攻撃を無効のものとする【絶対防御】の能力。
魅鬼によってその魔性の力を与えられし青年、鎌田真吾朗。
彼が戦場で出逢ったのは浮世離れした雰囲気を纏った記憶を持たぬ一人の少女。

そう……それは世界の真実が施した運命と言う名の罠。
決して出逢ってはいけなかった……しかし出逢わずにはいられなかった出逢い。


その出逢いは惑う人々にとっての道標となり、遂には知ることのなかった現実を暴き出す。
大きな反逆の裏で進むもう一つの周到な謀略の影。
真吾朗のたった一人の兄、総てを斬り裂く【絶対斬裂】の能力者、和之進が隠し続ける過去。
魅鬼が国を奪ってまで成さんとする絶対に失敗の許されない計画。
そして……少女に秘められた力の持つ本当の意味。

予想だにしなかった事実を前に怒り、悲しみ、苦しむ真吾朗。
しかしその想いの果てにやがて一つの答えを導き出す。
実の兄に、魅鬼に、そして現実の先に待ち受けるくそったれな真実に、全てに刃を向けんと。
そう……ただ己の目に見える正しさだけを信じて全てを破壊する為に。

http://www.c2-project.com/info/ より引用)

一見すると古風な時代劇と思う感じです。もちろん,最初のシーンから時代背景を反映したようなシーンが挟まります*2。古い時代を扱うと,シーンが間延びするようなことがあるのではとの不安に襲われることがあります*3が,この公演はそんなことはなく,最初からスピーディーかつ,印象的なシーンが畳みかけられていきます。役者さん達それぞれが持つ身のこなしの良さと相まってテンポ良くそしてカッコ良く進んでいくシーン。冒頭のダンスシーンだけで,もう私の顔は綻んでいました。これは面白いぞと。

この舞台を語る上では外せないのは「殺陣」です。とにかく切って切って切りまくる。刃こぼれとか起きないのかとか野暮なツッコミがどこかから飛んでくるかも知れませんが,別にファンタジーなのでおととい来やがれの勢いで全く気になりません。そして,この殺陣がラストシーンに近くになるにつれ,心に迫ってきます。和之進と真吾朗の殺陣は,涙なしには観られませんでした。殺陣がこんなに綺麗でそして悲しく見えたのは生まれて初めてのことでした。また,終盤に出てくる広海のセリフもどうしようもない諦めと,それに抵抗したい感情がぶつかり合っていて,ここも涙をボロボロ流しながら観ていました。

物語を見ながら,私はあるものを思い出していました。昔取り組んだFFVIとか各種のRPGです。敵だと思っていた存在が,実は敵ではなく,悪人だと思っていた存在にも実は一つの「理」があります。そして主人公が特殊能力を奪われ,そしてまた取り返していき,最終ボスに挑んでいく構図はRPGのまさに理想的な展開でした。だからこそ,次に起こるシーンが楽しみで,もし手元にAボタンがあったら連打していたことは間違いありません。

世界が複数存在する前提も,SFにもってこいの題材ですが,それも私にとっては大好きな展開です。ドラえもん式のタイムトラベル*4長谷川裕一さんの「クロノアイズ」に出てくるようなタイムトラベル*5の2つの違いとかを,昔,親類に教えてもらって,空想するのが好きでした。平沢進師匠の「ナーシサス次元から来た男」を巡る話も何度も読み返しました。何を書いているか分からなくなってきましたが,ともかく世界は分岐していきどれも成立する世界というのが私はとても好きなのです。

だからこそ,物語の中盤で分岐が前提となり,そして舞台のセットが木の幹から分岐していく枝であることが分かった瞬間,この世界にすっかりと引き込まれている自分がいたのです。ストーリーでここまで書き連ねるのは久しぶりですが,それだけ引き込まれていたと考えていただければ幸いです。

照明や音響もこの物語のスピード感や印象を強くする要素の一つでした。ロックのスピード感あるBGMもRPGを想起させる要素になっていたのかも知れません。照明もラストシーンを始めとして,写真に撮っておきたいレベルの美しさでした。

さて,まだまだ舞台上で一女が行おうとしたように,書き示さなければいけないことがたくさんあります。

舞台は,高さを違えた段が組み合わさっているのですが,この舞台を役者さんがひたすら駆け巡る,そして飛び回る。まるでこちら側まで飛んでくるのではないかと勢いで,動き回るのです。テンポ良くそしてカッコ良く進んでいくと冒頭で書きましたが,まさにこの勢いの良さこそ,小気味良く勢いが出ている要因だったのではと思います。

それから,それぞれのキャラも凄く魅力的でした。24人の役者さんが演じた役はどれもくせ者で,人間味があって,それでいて魅力的でした。今パンフレットを見返して,この役がどんな役だったっけ?と思う役が皆無で,こういうキャラクターだったと思い返せることが何よりの証拠だと思います。

24人もいるので,ちょっと全員書けるかどうか躊躇したのですが,こちらも勢いが付いてきたので,全ての役の紹介を試みてみたいと思います。(本当は役者さんのコメントまで踏み込みたいのですが,1回限りの観劇なので,そこまで踏み込めていない所があるかと思いますが,どうぞご容赦下さい。)

  • 鎌田真吾朗(久保瑛則さん)…直情的であるけれども,一度決めたことは真っ直ぐ守り通す武士。特殊能力を奪われて,そして辛い過去を背負いながら,悲壮感ではなくむしろ潔さや爽やかさえ感じられました。立ち居振る舞いから殺陣まで大車輪の活躍で汗が流れないシーンはなかったと思うのですが,まさに主人公という感じでした。
  • 荒城広海(田巻愛夢さん)…幼いながらも,自分の置かれた境遇に覚悟を決めている少女。おしとやかな少女を演じつつ,ウイルスプログラムが発動したときには,それまでは打って変わって大見得を切らなければならない振り幅の激しい難しい役だと思いますが,だからこそ終盤でのセリフ一つ一つが泣けてくる大切な役です。あの服装からは想像できないくらいの身のこなしの軽さで,ラスボスへの形態変化では,思わず詠歎しそうな勢いでした。
  • 鎌田和之進*6(松山コウさん)…物販のお兄さん物語の間,ずっと影を抱えつつ,でも最初から最後まで家族を守り通そうとした武士。素っ気なさをそのまま人にしたような存在ながら,真吾朗を最後まで守ろうとして,そして自分が身代わりになるあたりはズルいとしか言いようのないカッコ良さがあります。立ち居振る舞い全てがカッコ良くて,何かもうズルイ。特にラストシーンの照明と立ち方のバランスはそのまま公演ブロマイドで買い求めたいレベルでした。
  • 魅鬼(丸山加代子さん)…冒頭から人外の存在を醸し出すラスボス感満載の呪術師。でもラストに近づくにつれ,多くの仲間に慕われる,心を持っている人間である事がよく分かります。舞台後方から,明らかに悪役なように見える振る舞いを存分に見せているからこそ,終盤の失われた世界に対する贖罪の気持ちが際立ってきます。スラッと背の高く,存在感もそして迫力もたっぷりな方でした*7
  • 一女(佐武未希子さん)…魅鬼の妹,ではなく姉。失われた世界のデータを記録し続ける存在。魅鬼の横に従う影の薄いキャラかなーと思っていたら,最後の最後で,真吾朗のエンディングでの行動を左右する一番重要な鍵を握っていることが分かって,こちらも驚嘆しました。パンフレットにも設定上,感情を表に出さないキャラとありますが,ラストシーンでの種明かしのシーンを含めて終盤で突然印象に残る方でした。おそらく全体を通じた感情表現のコントラストが出ていたからではないかと思います。
  • 松井左京(吉岡圭介さん)…「月光の太刀」を持つ魅鬼の側近。真吾朗たちの前に倒せない壁として立ちはだかり,何事にも動じない冷酷な男に見えながらも,同じく側近のみちが傷ついた時には,誰よりも心配し駆け寄ったあたりで,この舞台には誰も悪人はいないということを確信することができました。この方も背が高くスラッとしていて,殺陣の振る舞いが生える印象的な方でした。
  • 小筒みち(井家久美子さん)…「日輪の太刀」を持つ魅鬼の側近。同じく真吾朗たちの前に立ちはだかる存在なのですが,割と序盤からその血の通った人間臭さが出ていて,最初から何か魅力的な人間味がある役でした。特に,演じられた井家さんの台詞回しやちょっとしたおどけたさまがとても好きで,それでいて勢いのあるアクションも魅力的で,この舞台の中で,小筒みちは1,2を争う好きな役です。
  • 五十嵐勘太(井下康平さん)…督川幕府御庭番衆,「絶対零度」の能力者。殺陣の勢いを始めとして,普通に最強キャラじゃね?と思わせておきながら,思い返してみると椿ひさに頭突きをしていたことばかり思い返される憎めない存在。もし真吾朗が魅鬼側に付いている世界があったとしたら,勘太のような存在になっていたのかも知れません。頭突きが非常に印象的ですが(←しつこい)勢いのある殺陣を多く魅せて下さった方です。 
  • 椿ひさ(深月要さん)…督川幕府御庭番衆,「絶対灼熱」の能力者。状況判断能力には優れて,筋肉バカ勘太のツッコミ役。悪人集団を冷酷な人間ばかりで固めると途端に魅力が無くなるのですが,椿ひさの口調の軽さがが舞台序盤の清涼剤でした。それとは対照的に殺陣の身軽さと,実はおおらかな所(途中で西尾のウソをスルーしてます)も相まって,実はこの舞台の中で1番好きな役かも知れません。殺陣の中では勘太に首筋に刀を突きつけられたシーンが美しかったです。
  • 督川流泉(松下勇さん)…元督川幕府の後継候補。能力値から言えば,カリスマと知性でほぼ満点レベルの実力を持ちながら,自ら出家する「悟りすぎた」知 将。物語の中盤で,異なる世界へ思いを馳せる中で,争いや戦のない世界まで見通したのかもしれません。物語の中では,一見頼りなさそうですが,たった一人 で魅鬼の所にたどり着いたところから考えると,武術の腕は相当な物ではないでしょうか。パンフレットから受ける聡明さの印象がそのまま舞台上でも現れてい て,カリスマってこんな感じだよなーと羨ましく思っていました。
  • 那須本きぬ(大西李沙さん)…前説で100部パンフ販売のノルマを突きつけられた方流泉の乳母で世話役。道化役でありながらも,物語を各所で絶望側へ破綻させないための大切な連絡役。老婆ながらも身軽な身のこなしで,情熱さえあれば年の差なんて関係ないことを教えてくれたキャラです(なんだそりゃ)。影のあるキャラが多い中で,ほとんど唯一影の存在が感じられず,安心感を感じられる存在でした。立ち居振る舞いから悪意めいた物が全くないのもそのように感じた要素だと思います。
  • 飯倉譲鏡(齋藤香織さん)…宮家より督川幕府に嫁いだ西緒の世話係で,尼層。序盤に流泉の説得にあたり,物語を進めるキャラ。中盤に太田克道に裏 切られてからは,西緒の再会までは割と出番が少なくなりますが,中の人的には,実はその間に途中の忍者などで八面六臂の活躍が行われて実は結構忙しい役 (のはず)。
  • 太田克道(セキュリティ木村さん)…元督川幕府目付役。中盤から終盤にかけての仲間と見せかけた中ボス&悪人。ただし,その悪人っぷりも手にしてはならない力を手にしてしまったためで,物語の中では描かれていませんが,もしかすると暴走したウイルスプログラムに犯されていたのかもしれません。くせ者の雰囲気は登場したときから匂わせている感じで,RPGなら仲間に入れてはマズイことが分かっているのに参加させなければいけないNPCのようで,まあ何というか,序盤のハラハラっぷりを一手に担って頂いておりました。しかしまあ,あの絶命直前の狂気っぷりは演劇ならではだなと思います。
  • 椎奈高太郎(千住晃太さん)…克道の部下。あさ・ゆうの上司でネーミングセンスゼロ。序盤から殺陣のシーンで登場することの多い役の一つです。隠れ里を焼かれた事が判明するあたりからの悲壮感ややるせなさは中盤の物語で感情を揺さぶるシーンの一つでした。線の細い感じがその悲壮感と重なって,背景に背負う影の大きさを感じていました。
  • 皆川あさ,富樫ゆう(松澤香菜さん,前田優さん)…克道の組織していた暗殺部隊のくのいち。この2人はセットで出てくるシーンがほとんどですが,やはり見せ所は克道との対決シーン。先に高太郎が殺され,それでも立ち向かっていくときに3人でなければと告げたシーンは,この物語の行間の中に隠れていた3人の信頼を示していて,物語自体の奥行きを感じました。このお二人も舞台を存分に飛び回っていた印象があります。
  • 石本弘太郎(柳瀬翼さん)…現督川幕府大老で,自称幕府随一の切れ者。たぶん普通の物語だと,中盤あたりで主人公にあっさりやられる中ボスクラスのキャラ ですが,ふじえの溺愛っぷりから始まる脱線ぷりのおかげでラストシーンまで生き残れるなど生存能力はピカイチ。たぶん舞台の上手から下手まで一番かけずり 回っているはずの忙しい役ですが,自業自得だよねと思わせるレベルの小心者っぷりが,全てから醸し出されているのが原因な気がします。でも憎めない。
  • 石本ふじえ(前野くるみさん)…石本弘太郎の一人娘。たぶん,江渡が焼け野原になっても最後まで生き残っているどころか,無かったことになりそうなくらいの自由すぎる性格。章柾とともにバカップルを形成しつつも,実は城に抜け道を作らせてしまうくらいのやり手。おバカそうに演じるのは実は大変に難しいことだそうですが,自由すぎてこちらが演劇であることを忘れてカチンと来たので役者さんって凄いなと(本日2回目)。
  • 藤森章柾(神崎洸太さん)…名家である藤森家の次男で石本ふじえの許嫁かつ救いようのない何とやら。ふじえの自由っぷりにはカチンと来るレベルでしたが,こちらは怒りがわくレベルの何とやらでありまして,ダメ男の象徴のような存在。でも悪事には全く興味が無いのか,それとも周りが先回りして防いでいるのかともかく幸せな環境なのようなので,ともかくお幸せに(何)。でも,あそこまで腹が立つ存在を演じきるのはかえって難しい気がします。
  • 田塚治五郎(板橋直久さん)…江渡*8佐幕派を取り仕切る重鎮。かなり役職や位は高いはずなのに,物語上は割とやり込め られて,コメディ的な役割が多い印象(とはいえ,きぬに追い回される設定があるから仕方ない。)。重鎮というと腰が重い印象がありますがかなりこの舞台で は軽やかです。でも,なかなか動かない重鎮だとこの物語のスピード感がなくなってしまうと思うので,軽やかなのは大きな利点だと思いました。
  • 佐野あつ(照山祥子さん)…弘太郎の側近。序盤は弘太郎の単なるブレーンかと思いきや,中盤に来て,実は一番切れ者だったのは,あつだったと判明するあの 裏切り。弘太郎や博嗣があれだけダメでも,謀反が起こっていないのはたぶんこの人のおかげ。裏切ったキャラなのにもかかわらず,それほど怒りがわいてこな いのは,たぶん,あのダメ男を操縦している内にいい加減にしろとキレたんじゃないかと思う限り。裏切りのシーンはほんの僅かですが,そんなことが頭をよぎ りました。
  • 督川博嗣(原田樹さん)…現・督川幕府将軍。黙っていればカッコイイタイプで,話し出すと途端にダメ加減が前面に出てくるダメ男*9。魅鬼を引き入れたのも,克道をのさばらせたのも,あつを裏切らせたのもたぶん全てこの人のせい。無知は罪(何)。でも,エンディングで禅譲しなくて済んだのは,口では文句を言いながらも(そこまで手を出せる実力が無いだけかも知れませんが),ちゃんと流泉に治政を任せている所かなと思います。ただ,西緒に三行半を突きつけられないで済んでいるのはどうしてかよく分かりません。演じている方はとてもカッコイイです。
  • 鎌田不由巳(野本由布子さん)…和之進の妹で,真吾朗の姉。物語の序盤で,真吾朗の過去編では重要すぎるキャラ。物語では明らかになっていませんが,序盤で傷の治癒に携わったあたりから,ウイルスプログラムの宿主は何かしら素質を持っているのではと思いました。ウイルスプログラムでの豹変は恐怖を感じるレベルで,ラストのシーンで和之進の心に「私を切って」と語りかける所は,一番の見所です。
  • ダンスアンサンブル(Yuukaさん,横山このみさん)…このシーンと特定することができないのですが,群像のあのシーンあたりとか,ラスボスの形態変化のシーンのあたりとかで,お見受けしているはずです。私はダンスのキレとかそういうものがちゃんと分からないダメ人間ですが,それでもこの舞台での踊りの美しさは魅力の一つとして挙げられる位,印象的な場面が多くありました。
  • 西緒(片田友香梨さん)…将軍,督川博嗣の正妻。物語中盤の身を守るための嘘を始めとして,聡明な妻で,だからこそダメな将軍でも何とかなっていたのだなと実感させられました。片田さんの魅力は,知的な感じと台詞回しの正確さ,そして背中のあたりに現れる姿勢の良さだと思うのですが,今回はその魅力が存分に現れる役だったように思います。

さて,このことも記録しておきたいと思います。終演後,カーテンコールが終わった後,松山コウさん達がもう一度舞台に上がり,公演時間が延びてしまったことをお詫びしていました。確かに時計では16時終演予定が15分以上伸びていたようですが,そんなことは全くアナウンスしない劇団さんもある中で,お客さんのことを考えて,心配りをして下さる劇団さんはそれだけで応援したくなります。

最後になりましたが,こんな素晴らしい舞台を紹介してくれただけでなく,そんな魅力たっぷりの舞台で活躍までしている片田友香梨さんには最大限の感謝です。お世辞抜きで,今までに拝見したどの公演よりも素晴らしかったですし,どんどん力をつけているのだなと言うことが伝わってきます。どんどん活躍して,私が見られない世界まで見通してくれることを強く強く願います。いやー楽しくて幸せな一日でした。

というわけで,あらすじを全引用したとは言え,本ブログでは最長レベルのポストになってしまいました。一体誰が読むかという長さになってしまいましたが,公演の面白さや関わった方への感謝の気持ちが少しでも伝われば幸いです。

1回しか見に行けないのが本当に残念ですが, 2016/6/15(水)~19(日), 2016/9/14(水)~19(日)には,それぞれ本公演をBIG TREE THEATERで行う予定とのことです。ぜひ次回公演も拝見したいと思います。千穐楽の残り一回公演。どうぞご盛況でありますよう祈っております。

www.c2-project.com

*1:したと思っていたら,会議がバッティングしておりまして,当日の会議開始時間をずらしてもらいました。関係各位にはご迷惑をおかけしました…。

*2:督川家(とくがわ)とか同じ音の言葉が出てきます

*3:前置きが長くなってしまうとか

*4:時間軸は1つ,親殺しのパラドクスが存在する世界

*5:時間軸は複数で,何か事件が起きれば分岐していく

*6:A4の2つ折りパンフでは乃でしたが,物販パンフで之だったのでこちらを使います。

*7:いまTwitter画像で普段の時の写真を拝見して驚嘆しています…。役者さんって凄い。

*8:江戸ではないですよ

*9:そういえばこの物語,ある意味ダメ男の集まりのような舞台ですね…