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リブラリウスと趣味の記録

観劇とかパフォーマンスとかの鑑賞記録を淡々と。本務の仕事とか研究にご興味ある方は本家ブログまで( http://librarius.hatenablog.com/ )

【観劇ログ】ジョーカーハウス「運命の子供」

ども。イマイです。

観劇の予定を決めるときには,色々な要素が絡んできます。

仕事柄,割とスケジュールは先に決まっているため,観劇の予定は先々まで見通して,キチッと決めていることが多いです。

今週観に行くジョーカーハウスさんは2バージョンあるから,両方観に行くつもりでした。とりあえず職場の会議が終わって直行できる土曜日の夜,それから日曜日の夜を入れれば両方観られるかなと思っておりました。

2バージョンとも観たいのは理由がありまして,昨年11月のポストでも登場していますが,私が注目しているジョーカーハウスの「おもろい枠」もとい主要メンバーである水沢まな美さんの出番はどうやら,MILKバージョンの方がメインの模様。

【観劇ログ】DIRECT LINE PROJECT 第一回プレミアム公演 「DEAD 1 SCHOOL」 - リブラリウスと趣味の記録

その一方で,前回公演で,ロミオを演じた貴志展弘さん改め貴志灯さんのメインはTOYバージョン。カッコ良かったのです。

【観劇ログ】ジョーカーハウス「ロミオとジュリエット」刀剣バージョン - リブラリウスと趣味の記録

これは,両方とも観に行くべきでしょと思っていたのですが,昨日,日曜日の方に他の予定がバッティング。あれれ,両方は無理かなと思って意気消沈しておりました。

その後,色々なことがミラクルに働きまして*1,何とか池袋へやってくることができました。というわけで,本日はジョーカーハウスさんの「運命の子供」を観にやってきました。

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ジョーカーハウスさんといえば,池袋はシアターKASSAI。初日の初回公演14時の回を観てきました。

(トップページからご覧の方は「続きを読む」ボタンがありますので,そちらを押して続きをご覧下さい。)

 では,本日が何と初日かつ初回の公演ですので,ネタバレ防止の改行を連打しておきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の作品は,2015年に近鉄アート館で伊藤えん魔プロデュースで上演された作品です。(といっても私は観に行くことができなかったので,これが初見であります)

伊藤えん魔プロデュース『運命の子供』公式WEB

シアターKASSAIの中に入ると,場内に流れているのはBGMではなく,ネバーネバーランドの案内音声。3歳児になった方の退所手続きを告げる音声と,3歳になったけれど退所できない子供の延長手続きを知らせる音声が流れています。

しばらくすると,出演者によるパンフレットの販売が始まりました。前回も見かけた光景ですが,こういう心配りが何だか嬉しいです。受付でパンフレットを先に買っていたので私は眺めるだけでしたが*2。(コラ

さてさて,そうこうしている間に開演時間となりまして,定刻通り開演と相成りました。公式Webよりストーリーの最初だけ引用すると下記の通りとなっています。

「ソダツマエニ セイチョウシナケレバナラナイ」

乳児、幼児の世界。
そこでは目前に迫りくる「肉体の成長」を前に
彼ら特有のコミュニケーション力で
大人の知らぬ独自社会が形成されていた。
そこは完全なるクローズドワールドだった。
「人間未満」の彼らは成長について
想い悩み恐れ、また希望を持っていた。
やがて立ち上がり、言語を覚えてゆくと共に
幼児だった時の記憶はすべて失われるのだ。

 開演直後に「バブー」と発していた幼児はやがて私たちが理解できる「言葉」を語り出します。しかし,これはあくまでも私たちが理解できるように翻訳して伝わっているだけで,実際は「バブー」とかの幼児語が交わされているという状況です。

3歳児を過ぎると,人間の言葉を覚えるとともに,それまでの記憶も言葉も忘れてしまう乳児。その幼児達は実はコミュニケーションをお互い取っていて,成長するか成長しないかで激論を交わしていて,それだけでなく派閥も存在しているという保育施設ネバーネバーランドの中が物語の舞台となっています。

3歳というタイムリミットが来れば,全ての記憶が失われてしまうし,それぞれの幼児ごとでコミュニケーションの形態が違うために,研究することもままならない独自の世界。それでも中の幼児はそれぞれの立場で,色々な感情を抱き,意見を持っているのです。ちょっとした閉鎖空間かつ,僅かで限られた時間の中でやり取りされるメッセージ,非日常的な空間としてぴったりな設定です。

主人公メロディが,そんな幼児達の世界に仲間入りをし打ち解け,そして「成長を否定する」反体制勢力とのやり取りを通す中で,自分たちの宿命,そしてネバーネバーランドの秘密へと疑問を持ちます。その謎を知る「運命の子供」ADL48に会うために育児棟から旅立つ冒険物語が目の前では展開されていきます。

ここからは,ぜひ実際の公演を観て頂きたい所ですが,ネタバレ防止の改行も連打し終わっていますので,ネタバレ上等で感想をガンガン書いていきます。

ADL48のシーンは,私は2回感涙しました。30年もの間,幼児とコミュニケーションが取れなかったとか,友達にならないかとか。私はこういう決して取り返せない時を埋めようとする(でもそれは埋めることはできても戻ることはできない)シーンは弱いのです。ADL48のキャラクター自体が,色々な悲劇を一手に引き受けているからか,その存在だけで,私はグッときてしまいました。

それから,数々の複線(例えばビスコの母親が最後に子供を抱きしめるなど)が回収される中で,「メロディ」の母親は誰なのか,そしてメロディがどうなったのか解決されていないのも,最初は「?」と思ったのですが,振り返ってみるとそこが良いのだなと思います。あり得ないこととは思いますし,おそらく伊藤えん魔さんから,「甘いな」とツッコまれるかと思うのですが,

  • 「メロディはあの後,ちゃんと母親に再会できた説」
  • 「メロディは実は大人だった説」
  • 「メロディの母親は死別していて実は会いに来れない説」
  • 「あの世界全部がメロディという大人の空想世界説」
  • 「メロディは実は人間ではなくロボット説」
  • 「実はメロディは死んでいて,あとは仮想のデータとして他の人間に見えているように仕向けられていた説」

という6つのパターンを考える余地があるわけです。事実,15分くらいこの箇所を書くのに思索を巡らせたくらいですし。ともかく土曜日の夜に気をつけながら,この辺は観劇してどの説を採ろうか悩みたいと思います。

さて,ジョーカーハウスさんと言えば,このフレーズがおなじみです。「日本中に隠れていた金の卵達をかき混ぜかき集めオーディション。選ばれた精鋭メンバーで創るエンターテイメント

このフレーズに違わず,今回も大変魅力的な役者さんが舞台で躍動していました。

3回目で顔が分かる役者さんが増えてきたから贔屓目に観てしまっているのかも知れませんが,若手俳優のユニットと言うより,スター揃いの劇団さんの公演を観ているような,一人一人の素晴らしい面を全部見せて頂いているような一体感を感じました。シアターKASSAIで間近で観ているこの空間をそのまま切り取って保管して眺めたいくらい,キラキラ輝いている世界がそこにはありました。キャストさんの新しい魅力が見られて、かつ作品としても満足できて嬉しいというそんな幸せな経験でした。

せっかくなのでパンフレットを見ながら,素晴らしい舞台を見せて頂いた御礼として,それぞれのキャラクターと役者さんについて触れたいと思います*3。なるべく偉そうにならないように気をつけて書いているつもりですが,上から目線だと感じたり,不快に思う箇所があるかもしれません。あくまで演劇の素人の戯れ言ですが,先にお詫び申しあげておきます。

メロディ役の田守悠花さん。もちろんこの舞台のヒロイン。不思議の国のアリスでもヒロインとして拝見しているのですが,メロディ自体が幼児たちの至らなさをカバーする役目になっているためか,大きく包み込む母親のような印象がありました。だからこそ,終盤の機械的に話す「リカを離せ」というセリフとの落差が生まれるのだと思います。

ペコ役の福井清香さん。ペコはシーン転換の説明役ということもあってか,メインキャラの中でも定型的なセリフの方が多いのですが,一つ一つのセリフがハッとさせられるような記憶に残る役者さんです。そういえば,「不思議の国のアリス」のチェシャ猫では,母親を亡くしているので,今回はちゃんと会えて良かったですね…(何

リカ役の吉田亜未さん。リカ自体はADL48の時はお留守番で,終盤は博士に引きずり回されているせいか,セリフ自体は多くないのですが,立ち居振る舞いも含めて,凄く可愛らしい方です。お姫様というフレーズがピッタリな感じです。

カール役の七味まゆ味さん。流石の安定感。終盤の三輪車ではなく「さんりんちゃ」と成長するきっかけを見せたシーンは,全く違和感がなくて,そうか成長することで本当に全てを忘れてしまうんだ…と哀しい感じで心に迫ってきました。たぶん土曜日に同じシーンを見たら泣くのは確実。

ドギー役の中山貴裕さん。初めて拝見する方なのですが,ハスキーボイスを含め,カッコイイ方でした。凄みをきかせるところと笑いを取るところの両方のどちらも,幼児がちゃんと一つの人格を持っていることにリアリティを持たせる人間くささがあって,私は好きです。もう一度同じ役で土曜日に会えるのが楽しみです。

ビスコ役の小澤瑞季さん。側転も含めパワフルな健康優良児の幼児を熱演されています。三木ハウスの嫌がりっぷりも含めて,この舞台の中で一番色々な表情とか感情を表現されているのではと思うくらい,色々な表情や仕草が印象に残っています。パンフレットを見たら,新体操出身とのことで,なるほど身のこなしの軽さも納得です。

三木ハウス役の中西正樹さん。前作の馬の嘶きが強烈に残っていて,初登場した瞬間,そのことが思い出されるレベルでした。でも今回は前作に比べて,気持ち悪いだけのキャラではなく,ちゃんと立場なりに真っ直ぐさとかがあって,それはそれで切ないオチもついていて,美味しい役なのだなと思いました。もちろん,今回も飛び道具の嘶きは健在です。

ADL48役の梅田拓弥さん。前作ではロレンス神父という一癖も二癖もある人物を熱演されていましたが,今回は病弱の天才かつ物語の核心人物。パイプを外してからのフラフラッぷりとか,台詞回しの一つ一つがもう涙を誘うことばかりで,役者さんってここまで作品ごとに色が変わるんだ,凄え…と思いました。

マミーポコ役の潮美月さん。マミーポコの斜に構えたキャラが,凜々しさや雰囲気とフィットしていて,凄くカッコよかったです。頼りがいのある感じから,ジョーカーハウスさんの常連かと思いきや,どうやら今回初出演(でよいんですよね?)の模様でビックリ。ぜひDVDでの再見だけでなく,次回も拝見したい方です。

ムーニー役の山本大輝さん。何かの底が抜けているような感じを,実際に存在しているかのように提示してくださる魅力的な方ですが,今回も成長したくなくてミルクの量を制限したりする,間違った努力と報われない感じが前面に出ていました。

宝富役の小久保恵梨奈さん。「不思議の国のアリス」でのおどける役とは打って変わって,今回は落ち着いた母親役。こういうお母さんいらっしゃるよなーと思う位,落ち着いていて,自然な感じでした。

江崎役の西野紗也加さん。パンフレットの写真から,影のある感じを受けていましたが,本編中も施設に預けたビスコとの距離感が掴めなくなったり,一見ハッピーに見えるサービスに疑問を呈するなど,ネバーネバーランドの闇をちくりと刺していく大切な役どころ。たぶん子供と離れた以外に何かがあったに違いない雰囲気が舞台上には漂っていました。

ネピア役の橋本真衣乃さんと,エルモア役の今井美沙さん。二人同時に出てくるUFO(未確認歩行*4物体)で,セリフが同時だったりするのですが,息の合った感じは,さすがジョーカーハウスさんのお馴染みと言うところ。いまいち謎が多かったのですが(この二人も親が出てこない),そんなことがどうでも良くなる位の異星人な感じがとても良かったです。

ドクターくもん役の大石祥生さん。もはや別格の感じがある風格ですが,今回は途中までの博士らしいインテリ感あふれる台詞回しと,実は凡人であることに絶望していた事が分かった後の台詞回しの落差が凄く,こんな武器もお持ちなのかと思わず唸ってしまった次第です。舞台の上では傲慢な感じですが,開演前のパンフ売りではとても爽やかな方で,役者さんって凄いと(以下略

西松役の水沢まな美さん。シリアスからコメディまでの(特にアゴネタは鉄板となりつつあります)幅の広さは大石さん同様,もはや別格の感じすらあります。声優さんを志されていたこともあったとのことで,台詞回しの明瞭さが非常に心地よい方です。特に今回は舞台のストーリーを進めるセリフが多かったこともあって,前述するこの舞台の一体感,安定感の要素を確かに構成していたと思います。

ジョージ役の宮武健一さん。本当に僅かのシーンですが,この舞台の中でほとんど唯一,掛け値なしの悪役,クズっぷりが心地よいくらい。あそこまで悪役だと遠慮無く,心の中で罵倒できます。ただその割には,金目当てで訪れた三木ハウスの戯れ言につきあっているので,何かしらの魅力を彼女(?)には感じていたのかなあと邪推しました。

警備員役の沢真さんと,古川芳久さん。僅か一シーンで,おそらくモブ役として出てくるシーンの方が多いはずですが,ネバーネバーランドの微妙に緩いセキュリティとか警備体制を表現する上では,欠かせない存在です。そもそもいくら昼間だからって3歳以下の子供が中庭のプール(命に関わる深さ50cm!)まで普通に出られるっておかしいと思いますが,あんな警備員しかいなかったらもうお察しのレベルです。おそらく福祉系で聞く同様の話に違わず,安月給なのでしょうね(ぇ

 

以上,当日券で飛び込んで悔いないどころか、立ち会えて良かったと思える作品です。まだ日曜日まで公演は続きますので,もしご興味ご関心があればぜひに。

というわけで,気がついたら全部で6000文字を超える長文かつ駄文となってしまいましたが,それだけ面白かったということを行間から読み取っていただければ幸いです。長文失礼いたしました*5

stage.corich.jp

*1:ご迷惑をおかけした方面の方には感謝感謝です。

*2:あ,でももらい損ねていたオマケをちゃんと頂けたので,大変嬉しかったです。

*3:書き始めてから,たくさんの役者さんが出演していたことに気づきましたが,途中で切るのも何だか哀しいので最後まで書ききることにしました。

*4:歩行ならFじゃなくてHじゃないかというツッコミは野暮です。

*5:土曜日もこんな感じでキャストさんへのコメントができればと思いますが,同じようにやれなかったら力尽きたと思って下さい…。