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リブラリウスと趣味の記録

観劇とかパフォーマンスとかの鑑賞記録を淡々と。本務の仕事とか研究にご興味ある方は本家ブログまで( http://librarius.hatenablog.com/ )

【観劇ログ】劇団しようよ「こんな気持ちになるなんて」

ども。イマイです。

勤務先から直近の劇場,せんがわ劇場に来ております。

今のお仕事場はもう3年目に突入していて,しかも勤務先から徒歩10分程度と直近にも関わらず, 勤務先のイベント以外では初めて伺った次第。120程度の客席ですが,舞台と客席が近いよい劇場です。さて,せんがわ劇場では,7月11日(土),7月12日(日)の2日間,第6回せんがわ劇場コンクールが開かれております。

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 今日はこの6団体の出場団体の中から,京都から参加されている,劇団しようよさんの「こんな気持ちになるなんて」を観に参りました。

私の観劇傾向は,関西小劇場が中心なのは,とっくにお気づきかと思いますが,実はまだこの劇団しようよさんは今日が初見です。

そうすると,何がきっかけということを説明する必要がありそうです。事の発端は,先月の壱劇屋さんの公演「Windows5000」でした。 私が観た公演は6月20日(土)の昼夜公演だったのですが,その昼の公演のアフターステージイベントとして,役者さんによる物販宣伝がございました。

当然ながら,壱劇屋さんの物販についてあれこれ説明が行われるのですが,その最後に客演されていた, 大原渉平さんが参加,ある「物販」の宣伝をされていました。それが,ウォーターメロンクラウドファンディングプロジェクトという物販でした。

ウォーターメロンクラウドファンディング - 劇団しようよ

これは,次回公演がコンテスト企画に参加する公演だが,その公演が入場料無料のため,舞台で使うスイカが買えないので,この場で舞台で使うスイカを買ってくださいという企画でした。もちろん,何の見返りもなしに資金を集めるのではなく, 金額に応じて,次回公演のご招待などと引き替えられる,まさにクラウドファンディングな企画でした。

まあ,その場のノリで買ってみようかと思ってお財布のひもを緩めようとして,チラシを拝見したら, 会場が「せんがわ劇場」と書かれているではありませんか。これは結果を見届けなければという変な使命感がわきまして, 観に伺ったという次第です。

さて,前置きが長くなりました。開場は15分前の16:05でした。 無料公演なので,入り口では名前を告げてチケットを無料で頂戴します。S列の5というチケットで,だいぶ後ろの方かなと思っていましたが, ふたを開けてみればびっくり,1列目のセンターでした。色々その前に仕事でモヤモヤしていて,楽しめるか心配だったのですが,もう これだけでワクワクしてしまって,そんな心配は全て吹き飛んでしまいました。

1回だけの公演なので,少し中身にも立ち入りたいと思います。メモを取って観たわけではないので,ディティールは異なるかもしれませんが, それもご愛敬と言うことでご容赦ください。

 

 

(以下ネタバレあり)

 

 

開演前,スクリーンに文字が映し出されています。そして舞台袖から男性が登場し,無言で「いまどんな気持ちですか?」「暑いですか?」などの 画用紙に書かれたメッセージを提示していきます。中にはこの作品を作るのは大変だったとか,笑いを誘うものがあったのですが, だんだんメッセージが真面目な方面に変わっていきまして,男性のおじいさんにあたる方が亡くなったことが分かります。 この時,舞台はすっかりシーンとなって,静寂が訪れます。

そして台本を携えた方が6人登場し,1人の女性が台本を片手に何かの気持ちを訴えかけます。ところが,そこでホイッスルが吹かれ,演技はストップ。 壮絶なダメ出しが始まり,女性は涙ぐみます*1。なぜ演技がダメなのか,あぁそこには本来感情表現を行うべきだった対象であるスイカがないという話になり, 舞台上に,あのウォーターメロンファンディングプロジェクトで購入されたと思われるスイカが登場します。

スイカを前に女優さんは演技を続けるのですが好転することはなく,そこで休憩10分に入る—かと思いきや,1人の男性が自分に演技プランがあるという ことで,演技を披露していきます。幾分かオーバーリアクションな感じに見えますが,台本は手から離れているし,女性ができなかったスイカ割りされる前の スイカの気持ちが大胆に表現されていきます。そして,表現し終わった後,女性以外の全員から大絶賛されるも,女性が「ならばあなたが代わりに演じれば良いじゃない」 と言いだして,舞台上は大揉めに揉めます。

そうして下手側で騒いでいる6人をよそに,上手側からスイカ割り特有の目隠しをした男性が角材を持って登場します。左ー,右ー,後ろー,誰が指示しているか 分からないまま,男性はスイカまで到達,角材が振り下ろされ,スイカは見事に割れてしまいます。その瞬間,演技プランを披露した男性が急に苦しみ出します。 「痛いー」役に入り込みすぎて,割れたスイカの気持ちがそのまま自分の気持ちとして表現されていき,その場にいた役者全員に感染していきます。

このように始まった舞台は,その後食べられたスイカの胃の内部での行動,出荷される前の畑,八百屋に並べられている時,と場面を変えながら, それぞれのパーツ(甘み,食感)が自らの感情を吐露していくことで進行していきます。ところが,その集団からぽつんと取り残されたパーツが一つ。 割れたスイカを挟んで下手側では盛り上がる5つのパーツとは対比的に,なぜ取り残されてしまったのか,他のパーツに呼びかけますが,応答はみられません。

場面場面の間には冒頭の男性が登場し,祖父が亡くなったときのことを交えながら,納得して死んでいくことが良いのか,納得して死んだら天国へ行くのかなど, 哲学的な問いが繰り返されます。さて,そのこの物語の結末は…,と将来また観るときのために,ストーリーのネタバレはこの辺までにしておきます。

わずか40分の劇だったのですが,色々なイメージが混じり合いつつ,でもわかりやすく展開されていました。真ん中で割れたスイカがもう1人の役者として, かなり良い味を出していました。終盤割れたスイカにスポットライトが当たっているのですが,哲学的な問いと真ん中で割れているスイカを照らし合わせながら, 「こんな気持ちになるなんて」と私自身が考えてしまっていました。わかりやすさと深さが同居する興味深い空間でした。

今度スイカ食べるときは,スイカの気持ちを考えながら食べてみたいと思います(小並)。

それはさておき,ぜひ次の舞台も拝見したいと思いました。これだけの舞台が1時間越えになったときに,どんな世界が展開されるのか,創造するだけでも楽しみです。秋には三鷹で公演があるとのことなので,ぜひ予定を合わせて伺いたいと思います。

www.gkd-444.com

色々なミラクルがあって出会えた舞台なのですが,こういう出会いを与えてくださった,壱劇屋さん,せんがわ劇場の皆様に深く感謝申し上げます。刺激的で楽しい一日でした。

*1:「想像上で」何か厳しい方面にスイッチが入っているだろう劇団さんの稽古ってこんな感じだろうな と思われるシーンが展開されます。